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でもそれはないんですね。「それは認められないでしょう、大学とは」ということになりました。そうしたら、文部科学省は、構造改革特区の承認主体は自治体だといっているということでした。「文部科学省に相談したら、自治体がいいといったらいい」と言っていました。本当にため息が出てしまいました。文部科学省、大丈夫かなと思った瞬間です。一般教養課程をどうするのか明確にしない限り、この構造改革特区を使った大学認証の規制緩和は、港区としては私は認めませんと言ってお帰ししました。
そうしたら、1カ月後ぐらいに、ある都心の自治体からプレスがされました。同じ企画です。同じ会社です。大学として認めるんだということでした。ところが、そのプランは文部科学省から後になって行政指導があり、結局厳しい状態になりました。事業者の気持ちはわかるわけです。何とかしたい、大学になると学割が使えるとかいろいろあります。
港区の中でこの方式で私が背中を押してさしあげたのは、南麻布にあるペンシルベニア州立大学のテンプル大学です。これは南麻布のあるビルを使って一生懸命大学の講義をしておられて、きちっとした課程を持っておられます。「本国ではずっと四つ星を取っている大学なのに日本に来たら専門学校になっちゃうんですよ。どうにかしてください」、こういう話であれば乗れるわけです。
私は、その専門学校の方にお帰りいただいきましたが、港区の敷居は二度とまたいでいないと思います。それは黒服の時と同じでした。それが今日の1つ共有化したいと思っております主張の一番大きなところです。
(図12)
もう1つあります。こだわりということです。街をつくったり、建物をつくったりするときにこだわりがなければよいものはつくれないということです。それは民生部門でも同じです。こだわりというのは、その背景にあるものを深く知らなければ絶対に生まれません。例えば、私が長く身を置いてきた高齢者福祉の現場では、悲惨な介護というのを日常的に目にしていました。こだわりというのは、それを何とかしたいという意味のこだわりです。介護事業者がこの世の中で儲かってどうにかしたいというこだわり、それは手段であって、それもあっていいと思います。ただ、そうではないんですね。こだわりの視線の最後には、幸せな老後と幸せな死を迎えてほしい、そういう思いを持てるか持てないかで、福祉のまちづくりをするときも、高齢者福祉施設をつくるときも、リハビリ施設をつくろうというときも、病院を誘致しようというときも、姿は違ってくるはずです。それはあらゆる分野にいえます。皆様であれば、あらゆるクライアントのオーダーにこたえて、それこそスポーツ施設、保育園、住宅、いろいろあるでしょう。そこの裏にある問題を認識せずに、こだわりなしに解決すると、中途半端な解決になるはずです。
事例をここに少し出しました。これだけあるのではないかなと思っております。
(図13)
スポーツ施設を高順位に書いてあります。私の大好きなスポーツ施設の話を少しさせていただきます。これは日本サッカー協会がつくっているスタジアムの基準です。何でこういう話をするかというと、私なりの都心の文化・スポーツに対するこだわりがあります。土曜日、日曜日に街が空っぽになるぐらい祝祭の祭典であるスポーツイベントがその街のどこかで行われていて、そこに入れない人がその街にあふれていて、それを見るためにパブリックビューイングに人があふれ、店を使い、人々がその服を着て応援するような姿をこだわりの中で想像します。
想像したときに国立競技場でいいんだろうかという疑問がムラムラとわいてくるわけです。東京にホームチームがあるだろうかということです。サッカーがお好きな人は食いついてくる話かと思います。味の素スタジアムというのがあります。駒沢競技場、西が丘という競技場があります。いろいろありますが、どこの競技場にも都心のホームチームはありません。23区には残念ながらない。味の素スタジアムは東京ヴェルディとFC東京のホームスタジアムですが、それ以外のところにはないわけです。800万人が住む23区というマーケットの大きさからすればなくてはおかしい都市に、国立競技場ぐらいしかないという異常な状態をこだわりの中で何とかしたいなと日々、私は仕事をする片手間で思うわけです。
(図14) 
4万人以上のクラスと5000人のクラスと、いろいろあります。その中で都心で持つべきもののねらいを定めるとこんなレベルになるんじゃないでしょうかというのが次の事例です。1万5000人から2万人ぐらいまでの現在日本にある競技場を抜粋してみました。埼玉スタジアムは6万人、横浜も日産スタジアムが7万人、それ以外にこういう小規模なグラウンドを持っています。柏、昨日サントスに負けましたが、ここも持っています。鳥取というのは人口が20万人の県庁所在地の市ですが1万6000人。磐田はもっと少ない17万人の人口規模です。千葉は96万人、仙台は100万人の都市です。そうした都市でそれぞれ2万人を切るぐらいのスタジアムを持っていて、そのことが土地の人たちの誇りやブランド力につながっている。これは1つのまちづくりだと思います。
(図15)
どれぐらいのものが必要なのか。ぜひ覚えて帰っていってください。港区でやりたいというときはぜひ私にご相談いただければと思います。単体の競技だと厳しいと思います。サッカー単独ではなく、ラグビー、アメフトが常時できるフィールドをつくったらどうかと考えますと、長さはラグビーが一番長いということがわかりました。144メートルです。国際サッカー連盟のFIFA仕様は、105メートル×68メートルでいいんだそうです。ですから、ラグビー場があればクリアです。国際大会仕様で64メートルから75メートルという幅があるので、それはラグビーの70メートルとします。スタジアムというのはご存じのように、フィールドがあって、外側に遊びの外周のスペースがあります。これが5メートル。5メートル・5メートルで10メートルを足して、スタンドが20メートル、30メートル、そうやって足すと、長さが174メートル、幅が115メートルぐらいという試算が出ます。掛け算すると2万10平米。2ヘクタールです。2ヘクタールある土地がこういうことをやってみたいと思われたら、ぜひ一緒に仕事をしましょう。よろしくお願いします。今日はこれを言いたくてここに立っているようなものです。
(図16)
 さて、ネーミングライツが嫌いだという話をしました。いかがわしい制度や規則、政令に、私はなかなか乗る気になれません。車のメーカーで日産とトヨタというのがあります。これは今試合をやっているからすぐばれてしまう話かもしれませんが、愛知県の豊田市に豊田スタジアムというのがあります。まさにあのトヨタが、TOYOTAプレゼンツFIFAクラブワールドカップというのをやっている。今日はバルセロナ、中東のチームとやります。そのクラブカップのTOYOTAプレゼンツの試合を日産スタジアムでやる。ネーミングライツをやっていくとこういうことになっていきます。ネーミングライツというのは事ほどさように、整備した側にとっては有効な手段としてもてはやされるのですが、その実、例えば日産スタジアムというのは横浜国際総合競技場という立派な名前があります。味の素スタジアムも、武蔵野の森スタジアムという素晴らしい名前がありました。財団までつくって運営していました。それはどうなったのかなと思うわけです。 CCレモンホール、撤退しちゃいました。渋谷の駅前にある宮下公園、ナイキ宮下の「ナイキ」をとれという住民運動になって、ナイキは結局お金を払い続けながら宮下公園の看板で指定管理をやっています。
ネーミングライツというのは整備する側にとってはお金のメリットはあるんですが、その後の運営を考えて果たしてやっているのかというところは非常に疑問があります。余り飛びついてはいけない制度という体感は、いろいろな事象を見るにつけて、先ほどの構造改革特区と同じで、正しかったのではないかなと思う今日このごろです。


 

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