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罹災者数が津波地域で45万人ぐらいです。22万戸全壊、半壊で、そのうち2万戸ぐらいが内陸部だとすると20万戸が全壊です。20万戸は、住宅だけでなくて、商店も倉庫もあります。住んでいる人でいうと、壊れたところで25~26万人、だいたい30万人ぐらい。壊れないところも入れて45~46万人。これは金沢の人口規模と大体同じです。金沢の町が一気に北陸の日本海の大津波でやられたというような人口規模です。面積で言いますと、概算ですが、三陸、仙台、福島の被災した宅地と農地と一部里山を入れると横浜市と同じくらいです。面積的にいうと横浜市1市が被害を受けて、人口的には金沢が全部やられたという災害です。
振り返ると、先程言ったように、阪神・淡路が10万戸ですから、建物で倍です。阪神・淡路は1カ所に集中しましたから、非常に効率よくリカバーできた。三陸から福島のところはバラバラで猛烈に効率が悪い。
もう1つデータを言いますと、今から6年前に、首都圏直下大地震の被害想定という講演をやりました。被害想定は4通り行いました。風速3メートルと15メートル、地震が発生する時間が阪神・淡路と同じ朝の5時、出勤時の8時、関東大震災と同じ12時、夜の夕飯時の6時。冬の夕方6時の風速15メートルの想定が世の中に広まっています。ところが、15メートルという風は暴風直前の風です。地震の後、火災が起きて、これがずっと1日じゅう吹きまくるかというと、想定ではあり得ない数字です。15メートルのデータを何でとったかというと、関東大震災の時に、日本海の方に低気圧が発生して、渦巻き状の風が南側から吹いてきた。その風が15メートルだった。そういう強風で回向院のような竜巻ができたんです。あそこで3万人ぐらい死にました。15メートルというのは勝手に想定したのではなくて、関東大震災の時の昼のほとんど台風に近い状況です。時間はもっと最悪です。夕方6時、みんなが食事の時ですから、消防の連中の話によると、一番火気を使っているときです。そういうときに地震が起きたという予測です。
その最悪の想定でいきますと大変なことになります。東京23区でいいますと、建物は11万戸が倒れます。これは昔、NHKで僕がやった非常に要領よくまとめた物すごくいいデータですが、11万戸。液状化で約8000戸、がけ崩れで4000戸。東京で建物が壊れ、液状化で壊れ、がけ崩れで壊れ、全部足すと12万戸。ところが、火災で41万戸が燃えてしまう。
風速3メートルの明け方にしますと、建物の揺れは風速に関係ないですから、どんな風速でも倒れるのは同じ建物です。液状化もそうです。全部地盤。がけもそうです。ところが、火災は2万6000戸なんです。41万戸が風速15メートル。風速3メートルの朝の5時、まだみんなが寝ているとき2万6000戸。3メートルというのはおかしくない数字です。普通の風です。今の状態が1~2メートルですから、自然の状況です。41万戸の火災の一番当たり前の話は6%か7%ぐらいです。41万戸の7%で2万8000戸、6%で2万4000戸です。
東京で地震が来たら、火災で41万戸、揺れ、液状化の12万戸を足しますと53万戸。世の中でこういう話がずっと、はやっているんです。NHKでもメディアでも学校の先生でも。だけど、実際にあり得る状況は、建物が燃えるのはせいぜい3万戸ぐらいではないかということです。これが今から6年前か7年前の調査結果です。
問題は、それから6年か7年経つと、木造住宅は全部の木造住宅の1.5%ぐらいずつ建て替わっている。建て替わると新耐震ですから、壁が多くなって壊れないし、この頃の木造住宅は燃えないんです。そうすると、風速3メートルの場合、東京で2万6000戸というのも、確実に不燃化していますから、2万戸になるかもしれないし、1万戸を切るかもしれない。災害想定というのは実はこれだけ幅が広いんです。
40万戸の建物が燃えて、こういうところで紅蓮の炎でという話に果たしてなるかどうかというのは、僕も3月11日前まではそういうことを考えていました。3月11日は想定外。41万戸燃えるというのは想定内なんです。マグニチュード7.3です。でもマグニチュード7.3ではなくて、9で風速15メートルにしたらどうなるか、そういうことも考えろということが世の中の大きな流れで、想定外というのはそういうことです。 
問題は、防災を専門にしている学校の教師や専門家は、大体が危ない方向に持っていきます。それは、もし危なくない方向で話をして、危なくなったらどうするか。ちょうど原発の話と同じです。世の中では、風速15メートルで夕方の6時で、そしてカラカラに乾いていて、相変わらず木造の建物は新耐震基準でいくのではなくて古い建物が残っていると想定したらということが一般的な話になってきていました。しかし、僕がそれを初めは想定外だと言っていたことを、想定外と言わないでもいいかなと思うのは、実はマグニチュードです。一等初めやっていたのは6.9と7.3で比較していました。ところが、マグニチュード9が起きるぞという話です。地震学者は東京北部でも7.3じゃなくて、8以上にそろそろ考え直していったほうがいいのではないかと言っています。  ただ、防災というのは非常にわからない点があります。一番の問題は、東日本大震災は1000年に1回と地質学者はいいました。ですが、片方で地質学者は、今はそういうことをいっても信用しないですが、東海・東南海・南海の連鎖型の地震は、発生確率は、東海で30年以内の確率が85%ぐらい。東南海が70%、南海が60%。地理学の先生は、20年ぐらいの間に、東海・東南海・南海の地震が連鎖して起きるのではないかというお話をされています。これも1度起きたら1000年確率になるかもしれません。それは起きた後の話で、起きるまでの時間は20年ぐらいの間ではないかと言っています。問題はどうなるかというと、東北は1000年に1回が起きてしまった。その対策をどうするかといった時、率直にいうと、1000年に1度の対策ではなくて、エンジニアというのは50年に1度ぐらいに起きる、巨大ではない大地震に対してハードの対策をして、それ以上の可能性のところはソフトで対応する、そういうことが大体1つの流れです。

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