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(図12)
今いった具体的な話をいよいよシステマティックに考えますと、東京というのは5つの側でできています。
1つは都心です。ここは地震に対して一番安全な場所です。超高層の質のいい建物が建っていますから、上は揺れるけど、下は揺れません。
2番目は、都心の周辺、ここに高級住宅街がずっとあります。中央区は余り高級ではないんですが、高級住宅街。これが都心周辺エリア。
3番目、下町低地。ここは地震の時の問題は別で、燃えませんが建物は壊れます。もしかすると、水をかぶります。地震で一番リアリティーがあるのは、カミソリ堤防が崩れれば、内水面の堤防の運河の水が落ちてくるんです。内水面の水が流れてきて、下がってきますから、門仲なんかは危ない。下町は国際化、都心高度防災とは別の配慮が必要です。
4番目は、山の手の市街地エリア。渋谷が一番危ない、燃えるところです。これは後で出てきます。ここはどうするかというと、不燃化をコツコツするしかない。年間大体1.5%ぐらいで住宅が建てかわっています。20年たつと30%ぐらい。30年の間に70%。建てかえをやっていて20年で30%。不燃領域率とは空地と道路とコンクリートの建物が市街地面積の中の何%かということです。不燃領域率が66%(3分の2)になると燃えないという昔決めた理屈があります。ですから、不燃領域率をなるべく70%ぐらいに上げる。これは自前の建てかえをお願いする。杉並区は一番危ないんです。燃えるに任せている。杉並区は最近の話によりますと、小学校の児童を避難させるのにも、道路の間にある古い危ない住宅がある。それに対して1戸200万円か300万円の金を出して建てかえてくださいとお願いするということを相当量始めるようです。4~5日前にそういうことを区の人が言っていました。杉並区でやるということは多分中野区でもやるでしょう。そういった意味では、ここの自主建てかえをやってもらいたい。これが4番目。
その外側は、世田谷、杉並。
こういうふうに5つに分けられます。そこの中で、都心防災を考えるのは1と2のエリアをどうするかということになります。
(図13)
これは平常時の原則。燃えない、倒れない、避難がきちっとできる、救援補給がさっと入る、備蓄も十分ある、エネルギーはずっと大丈夫。一番問題なのは通信の確保。非常に簡単に携帯で通信が確保できるという状況にキャパシティをふやしてくれれば、一時帰宅困難者問題というのはずっと楽になるんです。東京にとって一番必要なのは、今、Eメールで、お届け電話で「おれはここにいるよ」というのを言っておいて、後でそれを奥さんが調べて「あ、亭主がいるな」というのがわかるというのがあります。あれではなくて、瞬時にかけられるのが一番いいんです。この通信の確保は5番目になっていますが、東京にとって、特に東京のDCPにとって、これができれば一時帰宅困難者問題は物すごく楽になります。ということは、家に帰らなくていいわけです。「ああ、わかった。安心だ」。奥さんも亭主から電話がかかってきて、「電話がかかってくるなら、1週間ぐらい帰ってこないほうがいい」。(笑)そういうふうになるんです。人の動きが少なくなって楽になる。
(図14)
皆さんも何回もご覧になっている図だと思いますが、一番危険度が高いのは、具体的に言いますと、僕のなじみのところでは、笹塚から代田橋の北側、甲州街道の北側。ここがべらぼうに燃えます。ここは窪地で低地なんです。低地をはい上がっていくと十二社なんです。十二社が燃えます。そのすぐ横に都庁がある。人ごとではありません。いよいよとなった時に、燃えた連中がワーッと逃げ込んで都庁に入ったらどうするんだ。阪神・淡路のときの神戸市役所と同じです。これが一番燃えます。 
それから、有名な阿佐ヶ谷です。阿佐ヶ谷、高円寺。高円寺は昔北側に街路を入れようとしたんですが、地元の商店街のおばちゃんが「こんな道路要らない。そんな道路つくったって、店がつぶれるだけで、いよいよ地震になったときはみんなで守ればいいんだ」と、その道路をつぶしてしまいました。結局、高円寺の南側にできたんです。危険度5の西荻、荻窪、阿佐ヶ谷、高円寺が危ないんです。
それから、新幹線でおなじみの荏原の低地です。まとまって一番燃えます。 
北区の赤羽の後ろ。ここも燃えます。
ここまでは大体台地なんです。低地でも燃えるかというと、燃えそうです。京成電車の四ツ木です。ここは有名な木造密集地帯。北千住の北側も木造密集地帯です。昔はスラム同然だったところですが、建物の質がよくなって今はスラムではないですが密集度は変わらない。この辺は荒川の町屋です。
いいたいことは、この赤も青になり、危険度5が4になり、4が3になりというふうに、燃えるところが、少しずつ建物が建てかわるごとに減っていくというふうになっていますから、地震が来るのが遅ければ遅いほど安心です。
(図15)
 都心のモデルについていえば、燃えそうなのは赤にしてあります。危険度4や5。赤く記した危険度5の地区は、直下地震の時には、これらの地域で広く黒煙が上がってくるというイメージができる。だから、こういうところを意図的に、逆つぶしで再開発していこう。都心に近い赤のところはできるだけ集中的に再開発し、建物の不燃化をするということでなくしていけば、この都心は安心な場所になるということです。
(図16)
これは「倒れないまち」の図です。こちらは木造の住宅ですから、ほとんど倒れません。コンクリートでも割合質のいい建物が建っていますから倒れない。四ツ木というのは燃えやすくて倒れやすいんです。商店街も非常にいい町です。いいんだけれども、やばい。それから、ここに京島があります。これも燃えて倒れる。だけど、京島は残したいんですね。これは吉原。ここのところは荒川区で再開発をやっています。これは南千住。だから、四ツ木、北千住、南千住はまだまだ倒れて燃える町だということで、もう少しと再開発しなければいけない。

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