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7.いつの間にか遅れている日本

(図68)
日本はトヨタがちょっと回復してきましたが、それでも26位です。NTTとNTTドコモを分離しろと誰が言い出したんですか。78位と98位ですよ。恐らく日本のNTTが中国で活躍してほしくなかったからだと思います。それを解体して日本の国力を弱めようとした学者もいるんです。もったいなかった。日本の商社が世界で活躍しています。ビジネスモデルとして、日本の商社のようなスタイルの商社は世界にありません。住商や三菱商事は、今でも世界で活躍しています。別に日本のための商社ではなくて、世界のための商社として活躍しています。NTTの技術のレベルは世界のためのレベルに達している部分があったと思います。このあたり、皆さんの判断も含めて、日本のマスコミ、日本のオピニオンリーダーは、時々誰かに差配されていることがあるということは頭の隅に覚えておいてください。こんなのを解体しても余り意味はないでしょう。
株式時価総額で中国が日本を追い越す。当たり前のことが起こりました。原油輸入量、大豆輸入量は日本と同等ですが、これも当然もう超えてしまうでしょう。粗鋼生産量は中国は日本の5倍です。中国は世界最大の鉱石バイヤーです。先ほども言いましたが、中国には100万人以上の都市が118都市もあります。日建設計さんのような設計をされる方や開発をされる方は、中国に行ったら仕事はたくさんあります。
そういう意味では日本は漢文を教える前に中国語の日常会話を教えたほうがいいと思います。漢文というのは昔の日本人が中国人と筆談するために身につけたものです。今中国人とつき合うために漢文をやっている場合ではないでしょう。あれが入試科目です。それは文科省の方がいらっしゃって、漢文学者がいるからなんです。既得権を守っているだけ。そういうことすらできなかったら日本は落ちこぼれていきます。別に漢文がいけないと言っているのではなくて、漢文も漢文学者も古典として残せばいいけれども、入試科目から退いてもらってもいいでしょう。入試科目という意味では日常の中国語を取り入れるべきです。12億の人が今から成長しようとしている、その隣にいて同じ文字を使っている、その同じ文字を使っている日本人が中国人と会話できるように努力しないというのはバカのやることです。そういうことを誰も言い出せないということが、日本の戦争から今まで、部分的に自分で考えられなかったことだと思います。
日本の最大の貿易相手国は中国になっているということは何回もご覧いただいたのでおわかりでしょうが、最大の貿易相手国ということは命を握られているということで、それを素直に認めるべき時代に入っています。
(図69)
中国の成長余力はどこまでありますか。中国は成熟安定期に入っていますが、2010年の日本の1人当たりGNPは4万2820ドル。中国はまだ4000ドルです。同じ中国人で香港は3万1000ドル、韓国は2万1000ドル、台湾は1万8000ドルです。2020年に1万1000ドルを目指していますが、いろいろな問題を乗り越えて恐らくここまで行くでしょう。10年間に3倍の経済規模になるということです。今でも大きいのにたかだか10年間で3倍になる。そういうことを意識していただきたいと思います。

 


8.中国やインドが表舞台に

(図70) 
繰り返しになりますが、戦後から今までの日本の政治経済は圧倒的な米国の影響下で運営されてまいりました。次の20年、30年は、中国やアジア各国、インドやインドネシア等のアジアの人口大国の実需。アジアの人口大国はまだ非常に貧しい生活をしていますが、その人たちがある一定の生活レベルにまで成長したい。その実需が世界経済の牽引役になる、それは確実です。
私も野球も大好きですし、バスケットボールを高校でやっていましたから、アメリカが嫌いではありません。バスケットをする、しないの問題ではありませんが、米国オンリーで追随して外交する時代ではない。別に環太平洋経済連携協定の全面否定ではありませんが、日本人は自分で考えなさい、中国やインドも独自判断で経済外交を進めています。一々アメリカに聞きに行ったり、一々中国のご機嫌をとったりでなくて、自分で考えないといけません。

 


9.シンガポールで未来を考える

(図71)
日本を超えてしまったシンガポール。私は12年前に初めてシンガポールに行ったときに、アジアにこんな国があるのかと思って驚きました。私が受けた教育の中では、日本だけがアジア人として、ヨーロッパ、アメリカの人と伍してまちづくりができたと教え込まれていましたから、こんなきれいな国が日本以外のシンガポールでできたんだと。それが12年の間に1人当たりGDPで日本を超えました。中国人が主体のシンガポールですが、インド人街、マレーシア人街、韓国人街等の多様な民族の集積街もうまく受け入れています。観光客を受け入れるためにカジノや巨大なリゾート施設も開業して集客しています。一方、日本が目指すべきであった欧米の大学もシンガポールに進出して、アジアの情報・医療・娯楽産業都市に変わっています。
冒頭、福岡のアイランドシティでコンサルをしたと言いましたが、福岡のアイランドシティで情報・医療・娯楽産業都市、今のシンガポールのような都市をつくれと言ったんです。でも、全面否定されました。1998年頃でした。今の神戸市も多少、情報・医療・娯楽産業都市を目指していますが、シンガポールに及びもつきません。日本人はできたのに、美濃部さんではありませんが、中途半端に自制が働いて、中途半端にほかから教え込まれた教養が働いてチャンスをどんどん逃してきました。
(図72)
これはインターネットからとった計画の段階でのマリナーズ・ベイ・サンズです。
(図73)
(図74) 
同じくインターネットからとりました。こんなのができてしまいました。日本は地震がありますから、これをつくれとは言いませんけれども、世界の人が見て、「あ、すごいものができたな」というものを、小さいものであれ、大きいものであれ、つくる力は日本にもあると思います。シンガポールではこれができてしまいました。
(図75)
屋上にプールがあって見おろせるんです。シンガポールのマリナーズ・ベイ・サンズに1泊だけ泊まって、あと2泊はほかのホテルに泊まるというツアーが日本の旅行会社でたくさん出ています。これも興味のある方はぜひトライしてみてください。

 


10.新鉄道時代に入った世界

(図76)
最終の本論に近づいてまいりました。資源問題もあり、石油を使い過ぎる飛行機から、できるだけ鉄道を大事にしようという時代に戻りつつあります。世界中で鉄道技術がもてはやされて、鉄道の新しい設備がどんどんできております。

 

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