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2.2025年には中国のGDPが世界一に


(図6)
2030年に向けてのGDP予測です。今年の1月1日の日本経済新聞にも載っておりましたが、2025年頃、今から13年後に、中国のGDPが世界一になると予想されています。同様に2025年頃にインドの人口が世界一になる。そして、2030年には世界のGDP総額110兆ドルが予想されています。1位は23.9%の中国、2位が17%のアメリカ、3位が10.2%のEU、4位が5.8%の日本、5位が4%のインドと予測されています。
今から10年から18年の間には世界は激変します。中国と日本で30%、インドが4%ですから、33~35%、世界の3分の1をアジアが占める。それにアメリカを加えると世界の半分です。アメリカとヨーロッパを足しても4分の1という時代になります。こういうことは我々が学生の時代には想像のはるか外でした。あり得ない。今からたかだか10年から18年、すぐそこに世界の中心がアジアに来る時代がやってきています。
(図7)
今、世界経済はアジア頼みです。ヨーロッパやアメリカの動向もいろいろ出ますが、2008年のリーマンショック以降の世界景気減速から、アジアやオセアニア地域はいち早く回復基調になって、現在も成長中であります。主要11の国と地域、中国、台湾、韓国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、インド、オーストラリアの実質GDPは、世界金融危機以前の水準をはるかに抜いております。
(図8)
一番大事なことは、アジアの中で、今もこれからも経済が拡大していくことです。アジアでつくったものをヨーロッパに売る、アジアでつくったものをアメリカに売るという部分もありますが、それほど多くない。アジアの経済は、各国が行う貿易のうち、アジアの国同士で行われる域内貿易比率が56%を超えています。過半はアジアの中でつくって、アジアの中で売って、アジアの中で消費する。中国を中心とする域内生産ネットワークが形成されています。これにインドが追いかけていますから、インドが中国のような経済のレベルに近づいてまいりますと、人口の多さも含めて、中国とインドと周辺のオーストラリアも含めたアジア各国、この中で、以前欧米が謳歌していた豊かな社会をつくる可能性が十分ある社会に変わりつつある。今後もFTAの進展などで、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、インドへとネットワークが拡張しますから、世界経済の中心、特に成長の中心はアジアが担うということです。
(図9)
これは、対米輸出依存度の低下と中国輸出比率の増加です。日本のみならず、アジア太平洋主要国から中国への輸出比率は上昇基調です。韓国やオーストラリアや台湾では4分の1を上回っています。要するに、中国を中心として周辺のアジア諸国の経済が回り始めている。日本やタイの中国への輸出比率も2010年では米国への輸出比率を上回っています。中国を中心とする域内の生産ネットワークの進化と中国への輸出割合の増加は今後も続くと思われます。
(図10)
これは2010年の、日・中・韓の貿易関係数値をみると、日本から中国への輸出は、2010年で1763億ドル、約14兆円か15兆円。中国からの輸入も1534億ドル。両方とも圧倒的に一番です。日本・韓国。日本から韓国への輸出は多いですが、韓国からの輸入はちょっと少ない。韓国・中国。韓国から中国への輸出は日本に追いつくぐらいのレベルになっています。中国から韓国への輸出はそれほどではないという状態です。
(図11)
頭の中に、日本の輸出相手国は欧米が多いにではということが残っている方が多いと思います。日本の相手国は、2011年では、中国が一番で、円でいうと、12、90兆円、約2割。米国が2番で10、02兆円、15%。それ以外、韓国、台湾、香港、タイ、シンガポール。8番目にドイツがあって、9番目がマレーシア、10番目がオランダ。日本の輸出の56%はアジアです。ヨーロッパへは11%しか行っていない。中東の輸出は3%。要するに過半はアジア。あこがれは圧倒的に欧米、特に欧かもしれませんが、欧州は輸出の相手国としても非常にマイナーになっているということです。
(図12)
輸入も中国が一番です。14、64兆円で20%を超えています。2番目がアメリカ、3番目がオーストラリア。石油を輸入していますから、サウジアラビア、アラブ首長国連邦が続きます。6番目が韓国、7番目がインドネシア、8番目がマレーシア、9番目がタイ。10番目に、車が結構入っていますからドイツ。日本は輸入の相手国も輸出の相手国も圧倒的にアジアです。アジア+オーストラリアで5割です。石油が2割。ヨーロッパは輸入の相手国としても10%を下回っている。日本人の心の中と実際の生活を支えている部分とは非常にずれている。見ての通りだと思います。
(図13)
日本の戦後の経済発展を支えてきたのは中間層の消費だと言われています。いよいよアジアで中間層がどんどん増えている。世帯当たりの年間可処分所得が5001ドルから3万5000ドル、円に換算して40万円から270万円の世帯。こういう世帯は食料品以外に耐久消費財を買います。電気製品やカメラ、自動車、住宅、さまざまな支出が可能になって、旅行に行ったり、レストランで食べたり、教育にお金を使ったり、携帯電話を使ったり、さらにサービス消費も増加する。こういう経済を担う層がアジアの中間層です。2000年には2億人ぐらいしかいなかったんですが、2010年には9.4億人、そして8年後の2020年には20億人になる。日本の製品の大部分は超高級ではなくて中高級商品ですから、この層に一番売れるんです。一番売れる層がアジアに急拡大する。
(図14)
2020年、世界最大の個人市場がアジアに誕生します。2020年というのは8年後です。ほんのちょっと先です。2008年の段階で中国やインドの個人消費市場はそれぞれ1.53兆ドル。0.66兆ドルにすぎない。日本は2.73兆ドル、米国は9.86兆ドル。米国が消費で2008年の段階では圧倒的に大きいのですが、8年後(2020年)には中国は日本を追い抜いて5.5兆ドル。日本は3.61兆ドル。日・中・印に、NIES3(韓国、シンガポール、台湾)とASEANの市場規模が16.14兆ドル。アメリカよりも大きくなる。米国市場規模が15.78兆ドルで、EUでは12.67兆ドル。EUというのはヨーロッパの過半をカバーしますが、アジアはEUの1.数倍になる。こういう時代を想像しなければならなくなってくる。
アジア抜きにして世界経済は語れないし、アジア抜きにして発展はないという時代は、入り口からもうかなり入ってしまっています。中国一国が多少経済停滞しても、周辺の国はどんどん成長しますから、アジアがヨーロッパ、アメリカの個人レベルの半分ぐらいに達するまでは成長し続けると思います。どう考えても成長しないわけがない。
私も、ヨーロッパやアメリカに行って、欧米人が何故こんなに贅沢な暮らしをしているのか、その原因がわからなかった時代もありましたが、そのかなりの部分は世界から搾取して、富を集めて築いていた部分があるんです。それにアジアが追いついていって、アジアとヨーロッパ、アメリカの経済格差が縮まっていくのは必然です。必然の入り口に今差しかかって、なお日々必然に向かって経済成長が続いているというのがアジアの現状であります。


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