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そういう意味で、イントロの部分で皆さんの頭の中を少しシャッフルしてもらって、悲観論を言う前に、もう少しアジアを見てください。アジアの国の今からの成長余力をそれぞれの国に行って感じてください。そうしたら、戦後日本が今までたどってきた道をそれぞれの国が今からたどろうとしている。その中に日本が関与していけば、悲観論を言うよりは、もっと生産的なことを考えつくのではないでしょうかという話です。
(図15)
皆さんの中には中国を私以上によくご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、そういう方にはお許しいただいて、ここからは、最近中国に何回か行ってまいりましたので、今の中国の現状を大都市を中心にご覧いただきたいと思います。
世界最大の個人消費市場の中心となりつつある中国の現状です。世界の建築家あるいは世界のディベロッパーが中国に乗り込んでいますので、いつの間にか世界を意識した都市づくりがどんどん進んでおります。


3.新幹線網が五大経済圏を連結する

(図16)
事故が起こって、中国の余りにも急ぎ過ぎた発展は問題だなという部分がありましたが、中国の国内は新幹線網で日帰り可能圏になる時代がどんどん近づいています。多少のブレーキがかかっていますので、2020年にすべて完成するかどうかわかりませんが、ほとんどのものは完成すると思いますし、将来的には中国からヨーロッパに向けて今の新幹線を延ばそうということが正式に方向づけられました。そういう意味で、中国国内は、インドとも、いずれヨーロッパともつながる世界の中心になろうとしております。


4.中国の五大都市圏(長江・珠江・京津・西部・環渤海)の現況

(図17)
隣接の大国中国の経済圏は5つに分類することができます。その5つの大きな経済圏を新幹線網が連結するという計画を今推進しています。既に北京と上海は新幹線で結ばれています。5つの経済圏とは、揚子江河口周辺の上海を中心とする長江デルタの経済圏。揚子江の入り口です。そして、一番南の広州・深圳を中心として、隣に香港がある珠江デルタ経済圏。3つ目が北京と天津の京津経済圏。4つ目が内陸部の西部経済圏。5つ目が渤海湾を囲む青島・大連・瀋陽の環渤海経済圏です。このほかにも武漢や長沙など小さな経済エリアがありますが、圧倒的に大きいのがこの5つの経済圏です。この5つの経済圏を時速300キロメートル以上で走る新幹線で連結して日帰り圏にするという計画が進展中でどんどん完成しております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(図18)
「エコノミスト」の記事なので、ちょっと見にくいかもしれませんが、ここが北京です。ここが天津。ここが上海です。(図19)
一番経済力が大きいのは上海、杭州、寧波、南京の経済圏です。2つ目に大きいのが珠江経済圏。広州、深圳、珠海、仏山、そして経済圏の外ですけれども、香港、その隣にマカオがあります。香港とマカオも今高速道路でつながろうとしていますし、マカオと中国は高速道路でつながっています。中国が非常に賢いのは、香港を一応別の経済圏にしていることです。香港の資本が中国と欧米の資本との仲立ちになって、香港モデルを中国に適応してそれぞれの都市圏が経済成長している。西部経済圏というのは重慶、西安、成都を中心とする大きな経済圏です。環渤海というのは大連、青島、瀋陽のあたり。100万都市以上の都市がいくつか含まれています。東京以外の日本の大都市をしのぐような都会になっております。
東京圏だけは1都3県を合わせれば3200万人おりますが、上海の寧波や南京は結構距離が離れていて、人口的には上海、南京、杭州、寧波を合わせると東京の人口圏を超えるぐらいの距離ですが、30キロ圏ぐらいの範囲内に3200万人の人口を抱えているエリアは世界中にも余りありません。そういう意味で東京は圧倒的に強いですが、それ以外の大都市圏、例えば大阪は2000万人を切って千何百万人しかおりませんので、大阪を超えるような経済圏が中国にはたくさんある。それ以外の名古屋や北九州を超える経済圏はごまんとあるというと大げさですが、中国には100万都市が約120ありますから、ちょうど日本の10倍ぐらい人口もいますし、経済圏の大きさもあり得るということです。
 それが新幹線で有機的に結びつき始めたということが中国の強みになりつつあります。

(図20)
 中国の五大経済圏は、日本と同様に、ビッグイベントを契機として大変身を遂げてまいりました。今も遂げつつあります。2008年に北京オリンピック、2010年に上海万博、2011年に珠江、広州でアジア大会。こういう巨大イベントをやりながらまちづくりを進化させてまいりました。これは日本とある意味で似ています。
そして、西部経済圏では、歴史的な遺跡の復元や博物館・大学、国内イベントや経済特区、新幹線の駅周辺整備が行われています。やることが日本人のスケール感と1桁違う。平方キロメートル単位で開発を進めます。ここに真っ直ぐ道路をつくるよと言ったら、立ち退かせることは可能ですから、ほとんどの中国の新幹線は真っ直ぐ通っています。路線を決めれば立ち退きが進むということです。それのいい面と悪い面があって、悪い面はしきりに日本でも言われていますが、やることが早すぎる。開発という意味ではメリットがあります。新幹線の事故の後、修正が行われておりますが、開発の早さと最新技術を取り入れる能力という意味では、新幹線も、日本のまね、ヨーロッパの良い所取りだと言われていますし、事実良い所取りですが、それを取り入れて、コンスタントに運営しながら日本以上のスピードで走っているわけですから、ただ単にサルまねという域は超えつつあると認識していいかと思います。


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