カーボンニュートラルに関する用語解説

❖ 省エネルギーとカーボンニュートラル

我が国は、1970年代のオイルショックを契機に、エネルギーの使用合理化等に関する法律(以下、省エネ法)が制定されました。以降、その時々の状況に応じて改正しながら、経済成長と同時に世界最高水準のエネルギー消費効率を追求し、現在に至っています。

省エネ法は、省資源を重視する意図から主要な化石燃料を代表する“原油換算のエネルギー消費量 “を用いて、産業・業務・家庭・運輸の4つの部門で設定されている削減目標を達成すべく、各種の削減の取組み「省エネルギー」が進められています。この原油換算のエネルギー消費量は、電気や各種燃料(ガス、油など)の消費量に換算係数を乗じて合算した値になっています。

一方、最近耳にする機会が増えてきた「カーボンニュートラル」は、“二酸化炭素※(CO2)排出量”を実質ゼロ(排出と吸収とでプラスマイナスゼロにした状態)にすることを意味しています。 

以上から、「省エネルギー」「カーボンニュートラル」という2つの言葉は、”量を減らす”という方向は同じですが、以下の違いもありますので、適切な言葉の使い分けをしたいところです。
  

  •  両者では扱っている単位が異なる(kLとCO2
  •  省エネルギーはマイナスの要素のみ、カーボンニュートラルはプラス・マイナスの要素が含まれている
※二酸化炭素に関連した言葉には、カーボンニュートラルの他に、低炭素(排出量を低く抑える)、脱炭素(排出量をゼロにする)などもあります。



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カーボンニュートラル化技術には、排出を抑制する省エネルギー化技術に加えて、二酸化炭素を吸収する技術も含まれています。
 

❖ ZEBとカーボンニュートラル

「ZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)」は、建物で消費する一次エネルギー消費量(電気やガスなどのエネルギーを換算して合計)を指標として、その削減割合に応じて、下図に示す4つの判断基準「『ZEB』、Nearly ZEB、ZEB Ready、ZEB Oriented」によって評価されます。

ZEBの評価対象となる一次エネルギー消費量は、”空気調和設備”、”空気調和設備以外の機械換気設備”、”照明設備”、”給湯設備”、”昇降機”となっており、”その他の一次エネルギー消費量”は除かれています。

「カーボンニュートラル」は、“二酸化炭素(CO2)排出量”を実質ゼロ(排出と吸収とでプラスマイナスゼロにした状態)にすることを意味していますので、前述の「省エネルギー」と同様に扱っている単位が異なる点、また”その他”の消費を含む点も知っておく必要があります。











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「ZEB」は敷地内の創エネルギーを対象にします。一方、「カーボンニュートラル」は敷地外のエネルギー供給源の選択(CO2排出の低いエネルギー等)、環境価値(非化石証書等)の活用など排出削減による取組み、オフセットクレジットなど吸収量に関する取り組みを適切に組み合わせることで、実現することも可能になります。
 

❖ 脱炭素先行地域とは?

2021年6月9日に国・地方脱炭素実現会議から『地域脱炭素ロードマップ』が示されました。このなかで、2030年度目標及び2050年カーボンニュートラルに向けた対策・施策の全体像が示されており、”脱炭素先行地域をつくる”、”脱炭素の基盤となる重点対策の全国実施(各地の創意工夫を横展開)”といった2つの取組みを進めて、地域脱炭素の取組みを加速することになっています。

「脱炭素先行地域」は、前者の取組みに該当しますが、地方自治体や地元企業・金融機関が中心となり、全国で少なくとも100カ所の地域で、2025年度までに先行的な取り組み実施の道筋をつけ、2030年度までに実行することになっています。地理特性や気候風土等に応じた類型も例示されています。









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住居を中心とする「住生活エリア」、大都市・地方都市の市街地や大学キャンパス等の特定サイトを含む「ビジネス・商業エリア」、農山村、漁村、離島、観光エリア等を含む「自然エリア」、複数の施設の管理一元化などを含む「施設群」と4つの区分があり、類型単体や組み合わせなど、地域特性に応じて、対象施設の設定が可能になっています。