Komatsu Koki
ある明け方、大きな揺れに目を覚ましました。慌ててつけたテレビで大きな地震が起きたことを知ります。目は冴え、安穏と布団に包まることは出来そうにありません。そんなときふと、本棚に読みかけの本があったことを思い出しました。
【ジュディス・バトラー「アセンブリ:行為遂行性・複数性・政治」】
多かれ少なかれ私たちは弱者である、というのが本書におけるバトラーの指摘の一つです。豊かな都市は普段それを私に意識させませんが、しかし、まさに私たちの住む都市が私たちの生活を脅かし、私たちをして弱者であると感ぜしむ瞬間がないでしょうか。それは早朝の地震かもしれませんし、スラムクリアランスやジェントリフィケーション、もしくはもっと別の出来事かもしれません。
その朝、私は大変怖い思いをしました。一人の生活者として、ある日都市に生きることの危うさを知り、恐れを感じることに責を受けはしないでしょう。しかし都市に携わる者として、まちが人々を恐れさせ、傷つけ、ともすれば生活を破壊してしまうかもしれない、その責任から逃れようとすることは許されません。だから私たちは良い都市をつくらなければならないのだと、明にそう悟りました。
"If I am to lead a good life, it will be a life lived with others."
「アセンブリ」を締めくくるこの一文に、深い共感を覚えます。良い都市というものがあるとすれば、それは誰かと共に生きられた都市ではないかと思います。カラチのスコッター地区で、パリ郊外の住宅団地で、中越地方の山村で、世界のどこでも、人々の繋がり織り成す生活は強かです。どうすれば人々が共に生きられるまちをつくれるか、日々その問を問い、研究し、実践を繰り返しています。