No.99 シリーズ "NSRIは何をしている会社?" 第10回

2016年02月25日

VIEW NSRIの組織体制と取り組み

NSRIは、以下の7つのグループ制でサービスを行っています。

  • ZEB(低炭素建築) グループ
  • スマートシティ グループ
  • モビリティデザイン グループ
  • エネルギーマネジメント グループ
  • 都市政策 グループ
  • 都市開発 グループ
  • 海外・戦略 グループ

VIEWでは、88号から各グループの取り組み・サービスについてシリーズで紹介しています。
第10回は、海外・戦略グループの取り組み・サービスの紹介Vol.2です。

海外・戦略グループのご紹介 Vol.2 

海外・戦略グループでは、公共交通指向型都市開発(Transit Oriented Development:TOD)やスマートシティ等の様々な都市開発ノウハウや環境共生技術に関する知見と経験を活かして「日本のまちづくりの海外輸出」を支援する業務に取り組んでいます。

前回は、「都市計画・都市開発のマスタープランや都市開発戦略プランの作成支援」についてご紹介いたしましたが、今回は「都市開発プロジェクトの案件組成のコーディネート支援」と「研究開発(特に案件組成の提案活動のためのツール開発等)」についてご紹介します。

なぜ今、「都市開発プロジェクトの案件組成」なのか?

案件組成とは、海外において“我が国の企業等が一貫してその具体化のプロセスに関わる”都市開発プロジェクトを「自らが創り出す」ことを意味します。

私たちのようなコンサルタント会社は、当該国の政府や自治体、あるいは民間企業等が企画する都市開発プロジェクトに関する仕事を個別に受注するケースは多々ありますが、必ずしも私たちがマスタープラン等、事業の初期段階で関わった仕事にその後、日本のディベロッパー、メーカー、建設会社等が関わるというものが多いわけではありません。

決して「ALL JAPAN」であることにこだわっているわけではありませんが、「質の良いインフラ」や「日本のクオリティ」ということを国際建設市場で展開していくためには、我が国の企業が有する技術やノウハウが一定程度、プロジェクトに一貫して提供され得る事業スキームの構築が必要不可欠と思われます。

一方、欧米をはじめ、シンガポールや韓国、最近では中国についても、都市開発プロジェクトを「創り出す」場面から、国(政府)を挙げて官民一体となって取り組んでいる例が数多くあります。そのため、特に新興国を中心とした国際建設市場においては、プロジェクトが表面化した段階では、我が国の企業がなかなか参入の機会が得られなかったり、プロジェクトの初動期において日本のクオリティがスペックインできていないため、単純な価格競争の中では事業機会そのものを失ったりという状況になっているのが実情です。

都市開発プロジェクトの流れと日本の関わり方

都市開発プロジェクトの流れと日本の関わり方

我が国についても水ビジネス等、特定の事業分野においては、地方公共団体が初動期から事業参画し、企画・建設・維持管理をパッケージで提案する取り組みや、我が国の企業が参画する都市開発プロジェクトに投融資する枠組みも徐々に拡張しつつありますが、都市開発事業の分野における官民一体でのパッケージ的な提案や取り組みはまだまだ本格化していません。
 

実績紹介:都市開発プロジェクトの案件組成のコーディネート支援

こうしたことから、「都市開発の海外輸出」を国家戦略として官民一体で案件組成段階から取り組むことで、国際建設市場における日本の競争力を高めると同時に、企画から維持管理までの一連のプロセスの中で日本のクオリティを具体化することで、我が国の企業のビジネス機会を創出・拡大しようとしています。
では、「都市開発プロジェクトの案件組成のコーディネート支援」について、代表的事例を通じてご紹介します。

1. 環境共生型都市開発事業(海外エコシティ)の推進

2011年10月に新興国等を中心に急速に高まる環境共生型都市開発(エコシティ)へのニーズに対して、我が国が有する関連技術とノウハウを一元的に提供するため、「海外エコシティプロジェクト協議会(J-CODE)」が設立され、一昨年の7月に一般社団法人化されました。

この協議会は、会員である都市・環境等の関連企業で、“ジャパンチーム”を構成し、都市開発事業の構想・企画といった川上段階から官民一体となって、海外において下記に示す日本の得意ワザとも言うべき10のキーワードに基づいたエコシティ事業の推進に貢献することを目指した企業コンソーシアムです。

弊社は、この協議会に設置された中国、ベトナム、ミャンマーの3つのワーキンググループ(WG)に参加し、そのうちベトナムWGとミャンマーWGでは幹事企業の一員となって当該国でのエコシティ実現にむけ、案件形成と事業推進活動に協力しています。

また、この協議会活動と並行して国土交通省・都市局発注の環境共生型都市開発の海外展開に関する関連調査の受託者の一員として、日本が展開するエコシティの基本構想の作成、エコシティの企画・建設・維持管理のガイドラインとなる10のキーワードを具体化するためのエコシティ基準の作成等について検討を行い、案件組成段階での提案・アピール活動に資する業務を行っています。
 

海外エコシティの10のキーワード(J-CODE websiteより作成)

海外エコシティの10のキーワード(J-CODE websiteより作成)

エコシティ基準の主要項目(ベトナム国への提案の例)

エコシティ基準の主要項目(ベトナム国への提案の例)

2. 日露フラッグシップ事業の推進

日露間協力の一環としてロシアの抱える交通渋滞、環境汚染等の都市環境問題の改善に貢献すると同時に、我が国の民間企業等のロシアにおける都市開発への事業参画促進に向け、投資を含む事業環境整備を推進することを目的に「日露都市環境問題作業部会(国土交通省、ロシア連邦建設・住宅公営事業省)」が設置され、2014年4月にその第一回総括会合が開催されました。

また、この作業部会の日本側に推進母体としてロシアの都市環境に関心を有する幅広い関係者の参加を募って2014年10月には「日露都市環境協議会」が設立され、現在134の民間企業や団体が参画しています。

昨年6月に開催された第三回総括会合では、日露両政府が事業促進を支援する「日露フラッグシップ事業」に、日建グループが関わる都市開発事業である「ジャパン・タウン開発事業」、「クラスノヤルスク市スマートシティ形成事業」、「ボタニチェスキー・サッド駅周辺一体開発事業」の3件が特定されました。

弊社は、協議会の企画会議メンバーの一員であると同時に、国土交通省・総合政策局から都市開発分野における日露間協力推進に関する関連調査の受託者として、日建設計とともに都市開発分野の日露フラッグシップ事業3件について、更なる事業促進に向けて日露両政府及び企業間のファシリテート業務の支援を行っています。

また、ファシリテート支援業務と並行して、クラスノヤルスク市のスマートシティ形成事業については、クラスノヤルスク市、シベリア連邦大学、モノリットホールディング社(地元の民間ディベロッパー)と共同して都市全体のスマートシティ化のためのガイドライン作成のプレスタディを弊社のスマートシティグループが中心になって検討しています。

この検討作業の中でも日本が得意とする省エネ・省資源のみならず、安全性の向上や経済の活性化等に関するソリューション提案により、我が国の企業のビジネス機会の創出を目指しています。

都市開発分野の日露フラッグシップ事業調印式(日建設計websiteより作成)

都市開発分野の日露フラッグシップ事業調印式(日建設計websiteより作成)

クラスノヤルスク市におけるスマートシティガイドラインの構成(案)

クラスノヤルスク市におけるスマートシティガイドラインの構成(案)

実績紹介:研究開発(特に案件組成の提案活動のためのツール開発等)

「都市開発の海外輸出」の案件組成を支援する取り組みの際、当該国政府や民間企業に対して日本のまちづくりの強みや特徴を明瞭かつ端的に紹介することが非常に重要になり、そのための説明ツールを作成すべく、通常業務と並行して社外の有識者等にもご指導頂き、共同研究を実施しています。

特に日建グループがここ数年海外業務に関して日本の強み、日建グループの強みとしてアピールしている「TOD」や「SMART」の技術やノウハウを適用することが、当該国の課題解決、付加価値創造のために有効かどうか、すなわち、彼らにとっての「why JAPAN?(なぜ、日本のソリューションを適用することが有効か?)」という観点から、強く訴求できるツール整備を目指して取り組んでいます。

1. ASEAN TOD研究

TOD(公共交通指向型開発:Transit Oriented Development)は、現在、世界中で展開されている都市のスマート化に向けての再構築のベースとなる手法です。

とりわけ、人口の規模が大きく、密度も高いアジアの新興諸国の大都市圏において都市を適切にマネジメントしていくためには交通環境改善のみならず、多核型都市構造への再編等、土地利用も含めてTODの手法を適用することが有効と思われ、このような観点から、実績豊富な我が国大都市圏のTOD手法は注目を集めています。

弊社は、こうした新興国での我が国のTODノウハウの適応性と有効性を、より強く訴求するため、我が国の大学、当該国の研究者等との共同研究により、①欧米におけるTODと日本のTODとの相違、②新興国におけるTODの実情把握、を通じて我が国のTODの強みを明らかにしつつ、国や地域の実情に即した制度的枠組みや計画を提案するためコンテンツ整備を始めつつあります。 

ASEAN TOD研究・現地ヒアリング

ASEAN TOD研究・現地ヒアリング

2回にわたって、海外・戦略グループの紹介をさせて頂きましたが、最後にご紹介しました通り、通常業務のみならず、外部との共同研究等を通じてより幅広い視野と戦略を持って、日本のまちづくりの海外輸出に少しでも貢献したく活動しておりますので、是非お声掛け頂き、協働の機会が頂ければと思います。