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デザインというのは、デザイナーが意図したようには使われない。ユーザーは全く違う使い方をする。空間や場所をチョイスしている。どこでもいいわけではない。そのことが本当によくわかるんです。私は、馬を水辺に連れていくのと同じで、学生を公園現場に行かせ、利用の実態を観察すること、これがデザイナーの教育の入り口だと思います。と同時に、それを今度は計量的におさえればちゃんとした研究論文も書けると思う。研究と教育とトレーニングはワンセットです。24時間の利用者調査をやってみると、いろいろなことがわかってくるわけです。のぞきがいるのは、のぞかれる人がいるからです。公園利用者は、他の公園利用者にとっては、景観資源にもなっている。テニスをプレーする人、それを眺める人。共に公園利用なんですね。
ついでに紹介しておきます。三笠山です。一番暗い。照度も低くて寂しい場所です。だからここはヘビー級のカップルの場所です。次にここがミドルクラスです。噴水広場などはライト級で明るくて比較的大勢いる。ライト級とはまだ初心者の新鮮なカップル。そういうふうに見事にゾーニングされます。

(図19)

公園とは何か。一般的な機能論で考えてはいけない場所です。どういう目的で来たか。公園利用の目的を整理してみます。直接的な目的としては、「休憩」、「散歩」、「待ち合わせ」とあります。しかし明快でない目的、つまり目的なしの、「時間つぶし」、「近いから」、「なんとなく」というのが多いし、むしろ私が言いたいのは、本来、公園空間の本質はこういうものです。普通多くのプロは、何のために何をデザインするかを追求する。建築家は工場、学校、オフィスの機能と形態を掲げるでしょう。機能を満たすためにデザインする。だから、これにはこういう施設がいい、こういう空間がいい、こういう雰囲気にしようと考える。でもしかし、我々人間には明快な目的や機能を持たないでぼんやりしたい時が必ずあるんです。この「時間つぶし」や「なんとなく」という空間をどういうふうに提供できるか。これは大事な公園の役割です。機能的な空間として当然建造物は設計される。だけど、ぼんやりしたい、しかもおカネもないけどぼんやりしたい、いい時間をどうやって過ごさせるか。それはパブリックパークの役割なんです。
都心の公園が都市開発の中でどういう役割を果たせるのか。それはそういう意味の役割分担なのです。その両方がなければならない。共生関係ですね。
(図20)
次に、公園環境の評価調査もやりました。回りの「ビルが悪い」という意見が多い。他は省略。
(図21)
次、公園利用者についての意見。悪い評価。「浮浪者がいて困る」、「ごみをちらかす」などたくさんあります。いい評価では、「マナーが良い」、「楽しくしている」、「のんびりしている」、「多様な利用ができる」、「アベックが多くて来やすい」。それから利用状態、「アベックが多い」。アベックが多いというと、昔は風紀が乱れるとすぐに新聞が書きました。今は書きません。私は昨日ラジオでも言ったんですが、少子化の時代、アベック、カップルが楽しく、いい時間を過ごせて、結婚したくなるような場所をいかに提供するかは大事な公共事業ではないかと思っています。
(図22)
夜の公園利用についての意見です。「賛成」、「反対」、「どちらでもない」。これからは、夜の利用を本気で考えなければいけないと思います。夜の公園をどれだけ楽しめるようにするかという配慮。照明だけではありませんで、安全安心な利用施設のデザインとメンテナンスが大事だと思います。
(図23)
 次に公園イメージ調査をやり、因子分析をしてみました。「使用感」、「利用感」、「占有感」と書きました。座り心地や素材、デザイン。目の前にあるものの感じ、清潔感や清涼感。囲繞感、プライベートな空間をちゃんと手にしているかということがこの中で出てきます。

 


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