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そういうことを地震前までずっと考えてきました。いろんなものがたくさん余っているな、余り過ぎだ。余り考えのないものもたくさんある。もったいないこともたくさんある。こういうことに常に不満があり、「それなら、これはこうしたらいいんじゃないかな」ということを提案して45年間仕事をさせてもらっています。
私がずっと話しているよりも、自分たちがどういう考えでそういうことをしてきたかというケースをいろいろお話ししたいと思います。
(図2)
「価値観が激変」しているというのは10年ぐらい前のタイトルです。地震があったから価値観が激変しているというのもありますが、僕は、20年ぐらい前から価値観はいろいろ変わってしまっているんだろうと思っています。僕は時計が好きで20個ぐらい持っています。持っていても、今つけているのは6000円のタイメックスです。時間がわかったら何でも一緒だなと考えが変わってきたり、自動車があっても、ガソリンがないと動かないから一緒だなと思います。そういうことがあって、価値観は世につれ変わるんだと考えています。
(図3)
 そう考えていきますと、当たり前だと思ったことが当たり前でないことがたくさんあります。エレベーターは動くのは当たり前です。うちの社員にもよくいうんです。水道の栓をあければ水が出るのは当たり前と思っている社員がすごく多い。電話代はただと思っている社員もいますし、電気はつけてもお金を払っているのか払ってないのかわからない社員もいます。それがすごく当たり前になっていて、反省をしないといけないなというのを今すごく感じています。
(図4)
 そういうことの根本は、戦後の近代化にあるのではないかなと思うんです。
(図5)
 世の中がグローバル化して、地球が1つになりました。私たちの時代には、苦労をしてヨーロッパやアメリカに視察に行ったりしたものですが、私どもの社員は、来週ニューヨークに行こうか、来週5万円でパリへ行こうかという感じで、旅行はグローバル化していますし、企業もグローバル化しています。日常の暮らしもグローバル化していると思います。IT化もしています。そして、知らぬ間に高齢化社会になっている。
(図6)
 私たちが日常暮らしている東京は、これでもかというほど便利を追求していると思います。余り汗水垂らさなくても暮らしができるというふうに便利を追求してきた。うちの兄も建築家ですし、弟も建築家ですが、見ていますと、夏になったら冷房をつけるし、冬になったら暖房をつければいいと考える建築家もすごく多くあると思います。どんどん便利を追求していった結果、近代化していくものですから、建築家も、知恵も工夫もしないんですね。昔の建物は知恵と工夫がなされていると思います。そういう意味で便利の追求とは一体何だったんだろうと思っています。
(図7)
エスカレーターにしろ、エレベーターにしろ、こういうものがもしなかったら、知恵を出さないといけないと思うんです。テレビや冷蔵庫、パソコンも、電気があって存在している。一回電気が供給されないとだめになるものばかりなんですね。
(図8)

 私は、20年ぐらい前から、物が過剰にあり過ぎる、すべてが過剰なのではないかと思っています。要らないものが山のようにあるんですね。要らないものがまちの景観を悪くしたり、道の横断を困難にしたりしていると思うんです。先ほどお話をしたこの建物の前の歩道橋なんか、それがなくても、下に歩道があれば十分行けるんです。歩道橋がないと景観もすごくよくなるんです。そういうものを東京の中から全部とったらどうか。石原さんなんかも自動販売機を全部やめたらどうかといっておられますけれども、僕なんかも自動販売機で物を買ったことが余りないもんですから、できたらあんなものは要らないなと思います。その商売をしている方がおられたら済みません。うちの社員なんかでも、会社に来れば、水もありますし、飲み物もあります。だけど、自動販売機で何か買ってきます。だから、すごくもったいなものがたくさんあります。そして、まちの景観も悪くして、電気も過剰に浪費をすることになっているんだろうと思います。
(図9)
さまざまな視点からまちを見ていますが、これは1995年ぐらいの数字で、日本の国技は物を買うことかということぐらい日本人は買い物をしています。ルイ・ヴィトンだけで1350億円日本が買うんですね。ティファニーが600億円、シャネルが430億円。1993年ごろには恐ろしいぐらい高級ブランドを消費していたんですね。この震災で、それをもう一遍眺めてみたら、何でこんなごみみたいなものにお金を払ったのかなと思ったりするのではないでしょうか。
(図10)
開発する。そして、成長する。どんどん物を開発すればGDPは上がるんです。
(図11)
これはロスの高速道路です。フリーウエーの交差している状態です。車中心になっています。車がないと隣のまちにも行けないようなまちです。
(図12) 
日本にも車がないと行けないという状態はたくさんあります。これはシーガイアです。
(図13)
これは長野オリンピックのスタジアム。
(図14)
これは博多のグランシティーです。この中にスーパーブランドが山のように入っていました。十何年前だと思います。これを見せられたときは結構ショックでした。ルイ・ヴィトンが悪いわけではないですけれども、ここにもルイ・ヴィトンがある。博多には6店舗ぐらいルイ・ヴィトンがありました。これは異常だろうと思います。こういうものが当たり前のように20年ぐらい前はつくられてきたわけです。
(図15) 
これはアルファ・トマムです。ここに教会を私の兄が設計をしました。教会をつくったからアルファ・トマムのメンバーになれといわれて、1回アルファ・トマムに行きました。30階ぐらいのホテルに泊まって、下までおりるのに物すごく時間がかかるんですね。やっと下のレストランへ行ったら、カレーライスを食べるのに1時間ぐらい並ぶんです。恐ろしいところだなと思って、絶対に会員権は買わないぞと思いました。こういうものが本当に評価された時代もあるんですね。
(図16)
これは保養施設です。高齢者の保養施設で、中へ入って奥に行くと下におりて温泉になっているというものです。



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