→日建グループへ





 PDF版はこちらです→ pdf

(図17) 
 こういう高層住宅群です。
(図18)
 これは武蔵小杉の住宅群です。ここを開発する開発者はそれぞれバラバラに開発しているんです。足元に行かれたらわかるんですが、この建物の足元はバラバラにつくられていますから、隣のビルに行くにも大変なんです。たまたま向こうの川岸にゴルフ練習場がありました。私は1週間に大体1回そこで練習しているんですが、あそこには住みたくない、というのがこの高層ビルなんです。高層ビルに住んでおられる方には申しわけないんですが、40階に住んでいるとどういう暮らしになるんだろうと思います。こういうものをどんどん開発して、売れるのであれば利益になるんだろうなと思います。
(図19)
 これはつくっているところです。
(図20)
 郊外型の商業です。
(図21)
 この郊外型の商業施設は当然自動車で行きます。もし自動車がなかったらどういうふうになるのかなと思います。このような郊外型の商業は、中に商売するテナントが入ってくれると、開発する側にえらい利益が出るんですね。まちの中の建物と違って、坪30万~40万円ぐらいでできています。坪当たり家賃3万円ぐらい取るわけですから、1年間で開発費と家賃が見合う商売なんです。だから、許可さえされればどこにでもできる。こういうものはここで物を売るだけですから、夜は人が誰もいない。僕らからしてみると、えらく不自然なものだなと思います。
(図22)
 私たちも反省をしないといけないと思いますが、戦後はずっと、効率と利回り一辺倒だったんですね。非常に拝金主義的でしたが、今回の震災で1つの区切りがついたのではないかと僕は思うんですね。まちのために何かをやろうとした時に、利回りがないとできない。大手の企業でも利回りがないものには投資をできないということになっていることがすごく多いと思います。
(図23)
 社会がマニュアル化して、画一化している。だから、変な人はどんどん排除されるんですね。とんでもない思いつき、アイデア、創造、そういうものを提案しても、マニュアル化されてないものについてはすぐ拒否もされるし、変な人は排除もされる。ところが、風変わりな人、とんでもないおもしろいことをいう人は価値がある場合も多いと思うんです。
(図24)
 これがマニュアル化されたものというとコンビニです。何もセブンイレブンが悪いわけではないんですが、例えばこういうコンビニは、どのコンビニに入っても、目をつぶっていても、どこに何があるかというのがわかるお店なんです。お店というのは元来、行くと何かワクワク感があって、中に入って感動したり発見したりするお店のほうがずっと楽しいと思うんですが、効率化してマニュアル化したほうが企業としては利益を生む。そうなってくると、こういう店がすごく多くなるんですね。
 この前、うちの家内や子どもたちが「放射能が怖いから逃げよう」というので、神戸まで行きました。神戸に2~3日、金土日と遊んでいると、1軒ずつがパパママストアで、東京なんかと比較すると、マニュアル化した店が極めて少ないんですね。そこには一生懸命働いている人がいます。一生懸命働いている人を見ると楽しいものだなと、コンビニと比べて思いました。
(図25)
 これは東京のど真ん中の広尾の商店街です。自分で働くよりも、他人にお店を貸して坪当たり家賃3万円取ったほうが収入が多い、利回りがいい、効率がいいということを皆が考え出すと、全部コンビニになるだろうと思うんですね。
(図26)


  これは、まちとしては最悪ですね。西麻布から広尾まで行く間、1.2キロぐらいの距離にコンビニが4軒あります。つなげるとこういう状態になるんです。効率と利回りをどんどん追求していくとこういうふうになるけれども、こういうまちで暮らして、生きていてよかったなと思うのかなということを私は考えます。
(図27)
 成長というのを考えると、限界がない。何でも限界がない。例えば、空気はいつまででもきれいにあるし、水は、いくら無駄に使っても限界なくある。いろいろな食材がどんどん生産されて限界なくある。僕は20年ぐらい前から不思議に思っています。何故ひん曲がっている野菜を売らないのかなと思うんです。だけど、規格にないからそれは売らないんだということで捨てる。高知の小さな漁港に行っても、小魚はどんどん捨てられていくんですね。規格にないものをどんどん捨てていく。そういう乱暴なことをいつまでも続けていけるのかなということをすごく感じておりました。
(図28)
 20年ぐらい前から子どもや女性、高齢者はすごく無視をされてきているのではないかなと思っています。
(図29) 
 うちの社員を見ていましても、余り考えないんですね。考えないので、自分で知恵や工夫をしないんですね。今日も、朝、100人ぐらいのリストの中から30人を選び出してファックスしろというと、30人分をパソコンに打つんです。そうしたらすごく時間がかかる。100人のリストをカッターナイフで切って30人分貼れば5分もかからないでできるんです。そういうことがパッと知恵と工夫でできないんです。パソコンの前に座っていることが、「仕事をしている」と思っている子がすごく多いんです。
 「会社の車をちょっと洗っておけ」というと、車に乗って出かけるんです。「どこへ行くんだ」と聞いたら、「ガソリンスタンド」というんです。「おまえが洗うんだろう」というようなことがしょっちゅう起こる。
 新幹線に乗る時も、台風が来ていて、「大丈夫か、台風が来ているんだけど」というと、「切符買ってありますから大丈夫です」というんです。「そんな話してないだろう」ということがたくさん起こります。
 うちの社員には「赤信号でもいいから1人で渡れ。車にぶつけられたら運が悪いと思え」と言っています。青信号であれば絶対安全と思っている人がすごく多いんですね。
 そういうことで、働き方も日常の暮らしも、自分自身の判断でやっていかないとだめなんだろうと、今回の震災も教えてくれていると思うんです。

 3       10 11 12 13 14 15
copyright 2011 NIKKEN SEKKEI LTD All Rights Reserved