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1.持続可能社会が論じられる背景

2. 持続可能社会の2つの方向(先端技術型モデル/自然共生型モデル)

3.先端技術型の限界と自然共生型への転換

4.自然共生型モデルの必要条件

5. その実現シナリオ

6.実現のための課題

7.新たな社会への変革(技術/産業、社会/経済、価値観/倫理観)



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けれども、そのカネを若い人に回す。日本の若い人はまともな職につけていない人が何割も出てきている。それを言ったら、「今の若い者は真面目に働く気がないやないか」とか言うのですがそうではない。社会が落ち込んでいるところにぶち当たったから、働きたくても働く場がないというのが大半なのです。だから、前に稼いだ人のカネをこっちに回してやらなければいけない。回してやらないと、この人自身の老後も実は危ない。
先程も雑談していたのですが、ケアハウス、昔の老人ホームに入って、カネがあるから何とかしてくれるなんて思ったら大間違いです。大体、亡くなったら電話がかかってきて、親戚から「適当に始末しておいてください」というのが相当あるのだそうです。老人ホームで「適当に始末」されるのです。始末が終わったころにわっと来て、残った遺産を分け取りしていくというのを目の当たりにしたハウスの人たちは、「かわいそうやな。この人、カネいっぱい持っているのに何で有効に使ってくれなかったんだ。私たちに預けてくれて、社会に使えと言うてくれたら、絶対、生かして、社会を豊かにする。その人の老後もきちっと面倒を見てあげます。約束するから、抱えて死なんと。ハイエナのごとき親戚にふんだくられずに社会に還元してくださいという仕組みをつくりたい」。それを3世代バンクとかいう形で提案しています。
若い人が今困っている。世代の一番不幸なところにぶち当たって、仕事にありつけない人に一番豊かにアブクゼニを稼いだ人のカネを回してやる。実は、私は友人のネットワークにそういうことを発信しました。ところが「賛成だ。俺も1口乗る」と言ってくれる友人がたくさん出てくるかと思ったら、もう総スカンでした。「おまえ、何をアホなこと言うとんや。汗水垂らして稼いだ俺のカネや。こんなもの何に使おうが、おまえに文句言われる筋合いはない」とか、「今どきの若いやつは、真面目にせんからこんなことになっとんのや」とか、時代認識というか背景認識がえらい違うなと思って、2度と言わないようにしています。
(図32)
若い人が困っているのは、個人の努力とかは通り越して、世界全体の大きな背景があってのことですから、そこのところを考えて生かさないと共倒れになると思います。
結局、地方ではそういうことを本当にけなげに言っているわけです。地域の自然を生かした小さな生業をたくさんつくろう。自分に合う生き方を探りながら起業する。それを支えるようなマイクロファイナンスをつくる。別にバングラデシュでマイクロファイナンスが生きるのではなくて、これからはいよいよ日本でマイクロファイナンスが生きると思います。
そういうことをしながら、地方で起業しようという若い人を支えていく。今、一生懸命南淡路の地域で一緒に考えながら、大学を誘致して、若い人たちに期待をかけているのです。4月開校で、その理念を理解して、どれだけの若者が集まってくれるか。本当にかけだと思っております。定員に満たなかったら、私なんかの言っていることは全然時代に合わなかったということになる。

7.新たな社会への変革(技術/産業、社会/経済、価値観/倫理観)

(図33)
 最後に、幾つか具体的にどんなことをするのかを考えてみます。これもなかなか難しい。例えば、身近な環境をよくする技術や対策を考えてみますと、これは私の商売に近いものになります。物質やエネルギー系、土地自然系でいうところの、エンド・オブ・パイプ・テクノロジーと馬鹿にされたものですが、要するに出てきた最後のところで上手に処理・処分したらいいんだという技術です。私は最初に教わって、この専門家を名乗っていたわけです。
その頃は自然のことをもう少し考えようというので、植栽をうまいこと移転すること、代替植栽(ミティゲーション)ということが土地自然系でも起こっています。
それからだんだん時代が経って、もう処理・処分を頑張るのではなくて、もともと製造技術そのものをクリーナーなプロダクションに変えていくようになります。それは、日本は非常に上手にいった。この辺は日本の独壇場だったわけです。
土地自然系は不得手だったけれども、外国輸入のビオトープをつくりましょうとか、再生したらいいのだということにだんだんなってきた。
さらにいけば、単にプロダクションをクリーナーにするだけではなくて、経産省、当時の通産省が各地にエコタウンをつくろうということで、北九州なんかはその第1号で、市を挙げてそういう循環系を形成した。しかし、これは北九州の循環系をつくったわけではありません。日本中の廃棄物を北九州に集めて再生処理しようという構想だったわけです。これが本当に正しかったのかどうかは、非常に問題だと思います。
自然に親しむ親自然工法とか、だんだん成長、発展していったわけです。
バイオリージョナリズムという概念が日本に輸入され、自然と社会の本来に基づく地域形成をもう一遍考えようということになりました。その中で新しい土木工事のあり方を、単に親自然で石や木を使って工事したらいいのかという段階からもっと成長しようということになっています。
ゼロエミッションの議論もあります。
最後にどうなるのか。ここはこれからですが、社会全体として一言で言ったらエコ社会の形成を目指す。これは人間が自然の一部になり下るというか、なり上がるというのかわかりませんが、そういう社会です。自然の一部になるとはどういうことなのかは、大変難しい。それは宿題です。また話に来いということでしたら、改めてお布施をいただいてまいります。
こういう冗談は関西では通じるんですが、東京では通じないんじゃないか。東北で1遍この冗談を言ったら、本気で考えはって、「いや、ちょっと謝金が少なかったのではないか」というので事務方が真剣に悩まれたというのを後で聞いて、「関西流のギャグが全国で通じると先生が思ったのは大間違いや」と大分説教されました。それからは「これはギャグですから」と言って、ギャグの言いわけをいっております。


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