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1.持続可能社会が論じられる背景

2. 持続可能社会の2つの方向(先端技術型モデル/自然共生型モデル)

3.先端技術型の限界と自然共生型への転換

4.自然共生型モデルの必要条件

5. その実現シナリオ

6.実現のための課題

7.新たな社会への変革(技術/産業、社会/経済、価値観/倫理観)



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(図15)
先端技術型社会と自然共生型社会の2つがある。どちらを選ぶかは、これからいろいろな議論で選び分けていったらいいだろう。
結論的に言えば、今日は東京ですのでちょっと言い方を変えて、先端技術型社会は、これはこれであり得る。本心では私はないと思っているのですが、東京でこれがないと言ったら、それでは東京はどうするのだと皆さんお困りになる。これはあり得るだろうから、頑張ってどうぞおやりください。
しかし、人口で言えば大半ではないのですが、面積的には大半の日本ではこういうことはできません。ですから、自然共生型社会でやっていきますので、お互いに邪魔をせずに助け合って、これの組み合わせで日本の将来の社会像を描くことをいたしませんかというのが、提案です。
頭のいい人は、「これをうまいこと組み合わせたらどうや」とか言ってくれるのですが、これはなかなか難しい。価値観そのものを変えようということですから。先端技術型社会は技術だから部分的にはもちろんつまみ食いして、巨大企業が開発された技術を自然共生型社会に持ってくるのは十分あり得ることです。現に我々の計算の中にも、ほとんどそれに頼っている部分があることは事実です。自然共生型社会だけで今の社会を維持することは、いかに滋賀県といえども、いかに高知の田舎といえども、それは難しいです。不可能ですから、やはりテクノロジーに頼らざるを得ないことは事実です。けれども、それでどんどん行ったらいいということではないという、この2つをどう使い分けるかというのが、これから述べる部分のシナリオと考えたらいいと思うのです。
国のほうでは、ようやく今年の白書にこのことを書いてくれたということであります。2つがあり得るということです。

 

3.先端技術型の限界と自然共生型への転換

(図16)
ところで、東日本大震災で起こったことは、ご存じのとおりですが、これをどう考えるか。
普通に考えたら、どちらの社会で行くかということになったら、やはり自然共生型社会にならざるを得ないのではないかということを多くの人が感じられた。ちょっと前から、これを東北の復興の参考に提案してみないかという声が大分かかるようになってまいりました。私も何度か呼んでいただいて、現地で皆さんとシンポジウムをやったりしたことがあります。
それは何故かというと、自然共生型社会の自立・分散型というのは、災害以来の日本の大きな方向性だと思います。お互いにグローバルに依存し合いながら、しかも国内でいろいろなものがどんどん流通することを前提にした社会をつくっておくと、一朝事があったら、非常に不安定になる。経済効率という意味では、自然共生型社会は必ずしも最適ではないことは確かです。極めて不自由なことを自前でやろうというのです。経済の比較優位ということを必ずしも考えないわけですから、不利なものも抱え込んで、しかし、自立し、分散していることを価値の上位に置けば、効率は若干犠牲にならざるを得ないという理屈はそのとおりです。しかし、非常に安定性はある。
効率と安定性は、一般には矛盾する概念ですから、非常に効率がいいことは不安定であるというのは、政治を少しかじったら最初に言われることです。ですから、その辺をどう見るかですね。安定性を重視するのか、効率を最大化するのかというあたりで言えば、若干、不効率だけれども自然共生型社会をつくっていこうではないかという提案もあながちおかしくはない。

(図17)(東北大学・須藤隆一教授による)
災害が起こったときに1つわかった事実。インフラの問題では、大規模な流域下水道がこういう形になったら、修復するのに何年もかかる。これは3年ではいかないだろうと現地の専門家から聞いております。数年はかかるだろうと。それでも行かないかもしれない。

 

 

 

(図18)(東北大学・須藤隆一教授による)
実はこういうものをずっと調査していると、決定的なダメージを受けていなくて、ちょっと修復したらほとんど使える。それから、新規につくるのでも、2日もあったら、一応できてしまう。

 



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