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1.持続可能社会が論じられる背景

2. 持続可能社会の2つの方向(先端技術型モデル/自然共生型モデル)

3.先端技術型の限界と自然共生型への転換

4.自然共生型モデルの必要条件

5. その実現シナリオ

6.実現のための課題

7.新たな社会への変革(技術/産業、社会/経済、価値観/倫理観)



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1つの希望は、都会部の若い人が、今農業をやりたいと言い出しています。大学のオープンキャンパスをやったら、京都大学の農学部に殺到するんです。そういう事実は確かにあるので、農学に一種のブームが来ているなというのは、大学人はひとしく言います。
ただ、おっしゃるように、それが淡路島の端っこまで来るか。これがかけなんです。しかし、農学を本当にやろうと思ったら、そういうところに来ないと私はだめだと思う。東大や京大みたいなところに「農学」という名前はありますが、これは、農学栄えて農業滅ぶということをみずから標榜されている大学ですから、日本の農業が栄えることが我々農学が進歩することと必ずしも関係がない。関心はない。
阿部和義(経済ジャーナリスト) 大学の名前は、何という名前ですか。
内藤 学部の名前は地域創成農学部で、大学は吉備国際大学といいます。岡山の田舎で、岡山理科大なんかは割と知られていますけれども、あれなんかも全部仲間です。
阿部和義(経済ジャーナリスト) 要するに、吉備国際大学の農学部ですね。
内藤 大学ではなくて学部が来て、それで様子を見て、大学にするかしないか、やめるかを考えようということです。
阿部和義(経済ジャーナリスト) 定員は何人ぐらいですか。
内藤 60人です。
おもしろいのは、学生ではなくて、「成人を受け入れてくれ」、「社会人入学はあかんのか」という問い合わせが結構たくさん来ているんです。ところが、文部省の規定でその定員は10名までとなっているので、そこを狙ったほうがよかったかなと。
私は、最初は農業塾でいいではないかと考えていました。日本でも有数の農業地帯で、実はタマネギの3毛作で大もうけという地帯です。それで大もうけしているのに、若い子がいつかないというのが、また不思議な世界です。おっしゃっている疑問は、私も同じことなのですが、日本の農村を救おう。うちの村は俺が頑張って救ってやろうという3000に近い限界集落の出身者が30人でも来てくれればというのは、本当に願望です。私は、全国を回って、土下座してでも1人でも確保してまいりたいぐらいの気持ちでいます。
これは別に大学のためでがありません。これができなくて日本がどうなるのですかと、私はその時本気で文部省に問いかけた。現地視察に文部省と一緒に来てくれた専門家は、「地域創成農学部というのは、聞いただけでも本当にわくわくしますね」と言ってくれたのです。だから、心ある人は買ってくれているのだけれども、今の受験生の親世代がちょうどバブルの世代に乗りおくれた世代で、「先はうまいことしよったのに、我々はちょっと乗りおくれたからうまいこといかんかった。少なくとも、うちの息子、娘にはもっといい大学へやって、もっといい企業、日建設計あたりに無理やりにでも入れてもらわなあかん」という親の世代です。これは、ちょっとタイミングとしては悪かったかなと。
けれども、年寄りの教授連中と話していたら、「いや、おもろい。こんな大学をつくりたかった。はせ参じたい」と言ってくれました。「あんたにはせ参じてもらわんでも、息子か孫か入れてくれ」と今頼んでいるのです。年寄りだけえらい意気込んで、多分ここでもお年寄りの方にはおもしろいと思っていただけて、「俺も定年間近やから、何か行ったろか」みたいな方が何人かいらっしゃるんじゃないかと思うのです。どうぞ、それでも大歓迎ですから、教えに来ていただくとか、横で冷やかしに来てください。土地と家と材料はふんだんにあります。おいしい魚と野菜もあります。
私、何のためにここへ出てきたのか、よくわかりませんけれども、そういうことでございます。もし関心がありましたら、是非コンタクトをください。土下座してでもお願いに上がります。
阿部和義(経済ジャーナリスト) 滋賀県の嘉田知事ですが、環境問題で知事になって2期目ですよね。先生が嘉田さんを引っ張ってきて知事にしたのか、もともと嘉田さんが先生を呼んだんですか。
内藤 どっちでもないですね。あの人が立候補するという話をメキシコのホテルで2人でなぜか稲庭うどんを食いながら聞いたという仲です。残念ながら、夜明けのコーヒーは一緒に飲みませんでした。夜食のうどんを一緒に食って、初めて打ち明けてもらったというぐらい、割と近いです。
私は前の知事に頼まれて一生懸命こういうプランを立てた張本人ですから、本当はあの人に勝ってもらいたかったのですが、嘉田さんが勝ってしまって、実は困ったなと思った。せっかくここまで来たのにと思ったら、嘉田さんが訪ねてきて、「そのままやってください。応援します」。本当に応援してくれた。それは、ご本人の理念とぴったり一致しているのですよね。だから私は、その辺の学問的なバックアップは全面的に頼みますよと、折りあるごとに言われています。
知事としてできにくいことを、私は研究機関の長としてどんどん発信するわけです。たたかれる役も引き受けるわけです。おさまったかなと思うころに、知事がそれを政策に取り入れるという、割とうまく循環していると思います。こういう機関は自治体にもなかなかないのです。そういう意味では、うちもホットラインがありますから、いざというときは、「これは危ないね」とすぐに言える仲ではあります。もともと研究者仲間ですから。
石黒広洲(中央大学研究機構) 石黒と申します。今日は、いい話をありがとうございました。
個人で参加しているのですが、地域研究を道楽的にやっています。いろいろな地域でいろいろなこと、ものづくりをやってみたり、山小屋を建てたり、植樹をしたり、田んぼをやったりという活動の中で、先生が言われたような地方の衰退は目に余るものがある。私が行っているところも限界集落で、向こう3軒両隣誰もいない。子どもは、東京から移住してきた人が2人いる。空き家ばかりが目につくので、地域をどうするかが非常に大事だというのを改めて考えさせられるのです。
私は東京の西多摩郡というところに住んでいまして、今言われた地方の悲哀は、実は近所もみんなそうです。東京の中でも西多摩はそういう地域です。入り口のほうはまだましですが、限界集落があちこちにあるという状況なので、東京でもそういう問題はあるというのを、一応補足させていただきます。
もう1つ、今日お話のあった先端技術と自然共生技術ですけれども、今日は物質(マテリアル)については余りお話がございませんでした。石油の資源性、物質としての材料、ここを見ると、床から天井から、椅子から、ほとんどが石油製品だという状況で、石油がなくなったらどうするのかということを考えると、私は自然共生型の中で、資源というか物質の面で天然物質を徹底的に使うことについては先端技術が必要ではないかと考えています。現に山椒の実から化粧品とかつくっているのです。杉の葉からアロマや化粧品なんかをつくったりとか、いろいろな事例が少しずつ出ています。

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