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1.持続可能社会が論じられる背景

2. 持続可能社会の2つの方向(先端技術型モデル/自然共生型モデル)

3.先端技術型の限界と自然共生型への転換

4.自然共生型モデルの必要条件

5. その実現シナリオ

6.実現のための課題

7.新たな社会への変革(技術/産業、社会/経済、価値観/倫理観)



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 効率がどうこうということになると、先ほどの自立・分散型でやっていけば、それぞれいろいろなことができるのではないか。先進技術を天然物質というものに適用する研究を、せっかく日本は木の文化の国ですから、もう一回やり直す。そこに先端技術が生きてくる。日本の技術を活用する道があり得ないとつまらないなという願望で日ごろ見ています。その辺、先生はどうお考えなのか。マテリアルから見た天然物質について教えていただきたい。
内藤先生 100%同感でございます。今日は時間がなくて、その辺が触れられなかったのですが、食品からあらゆるものが石油でつくられている。食い物だって、あのエネルギーはほとんどが石油エネルギーでつくられています。ですから、私は石油を食って暮らしたほうがよっぽど効率がいいと思うのです。あれを穀物に変え、さらに牛に変え、それを食ってわずかなカロリーをとって仕事しているというのは、本当に非効率ではあります。
では、どんな技術をこれから残し、どういうものを淘汰していったらいいかが深刻に問われる時代が目の前に来ていると思います。その中で、私もなかなかセレクトはできないのですが、幾つかの原則は、石油に過度に依存しない、天然の素材で循環再利用できるものに主として変えていくということです。しかし、それを100%はできない。わずかだけれども、石油を使うことで物すごく効率のいいことがいっぱいあります。
例えば、私の知り合いがいろいろなことを試してみたけれども、下水の排水を家庭でやってみると、塩化ビニルというのですか、ああいう化学物質のパイプを使う以外にどうもなさそうだと言ったりしていました。コンクリートでもだめだし、ましてや木では……。江戸時代の水道パイプが、掘り出したらいまだに出てくるみたいですが、それにしても限界がある。
それからもう1つはバイオミミックも最近はやっていますけれども、自然に倣った技術がこれからは物すごくあり得る。新幹線のパンタグラフは自然界からの模倣だと言っていますが、そういうことがどんどん多くなる。それから、自然素材で新しいものもあると思います。
最先端のカーボンファイバーなんかは、エコから言っても捨てられないのではないですか。あれだけ軽くて強靭なものは、エコの素材としては極めて大事ではないかという気がしていますが、この辺は本当に技術者と十分議論していかないといけない。
冗談を言っていますが、エコの乗り物をつくろうと思ったら、例えばカーボンファイバーでつくったら、琵琶湖の端から端まで人力で飛べるのです。ご存じないですか。飛んで、端まで行って、引き返してこないといけないくらいよく飛ぶんです。だから、これからはエネルギーを使わずに琵琶湖を渡ろう。今、琵琶湖を向こうまではぐるっと車で行くんです。見えているのに、ぐるっと何十キロも回って向こうへ行く。「こんなばかな石油商品はない。船で渡ろう」と言っていたんです。カーボンファイバーできちっとハイテクの帆をつくったら、すごく効率的に行ける。もっと効率的には、人力飛行機をつくって向こうへ行こうかと言って笑われていますけれども、そういうことを可能にできるのがカーボンファイバーです。逆に言えば、そういう貴重なものをつくるためにも石油をどうでもいいことには使わないでおきましょうということです。
谷 よろしいですか。そろそろ時間にもなりましたので。
先生、今日は大変ありがとうございました。それでは皆様、先生にもう一度大きな拍手をお願いいたします。(拍手)
以上をもちまして本日のフォーラムを終了させていただきます。ありがとうございました。(了)



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