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1.持続可能社会が論じられる背景

2. 持続可能社会の2つの方向(先端技術型モデル/自然共生型モデル)

3.先端技術型の限界と自然共生型への転換

4.自然共生型モデルの必要条件

5. その実現シナリオ

6.実現のための課題

7.新たな社会への変革(技術/産業、社会/経済、価値観/倫理観)



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(図3)
なぜ持続不可能なんだという量的な問題です。
量的に言えば、細かいデータをいろいろ申し上げるよりも、まず直感的にこれを見ていただくのが一番わかるのでいつも使わせてもらうのですが、人類がずっと営々としてやってきた歴史の中で、突然人口が増えたのは産業革命あたりです。その前に農業革命がありましたが、産業革命で増えた。
突然何故ここでこんなに増えたかというと、1人当たりのエネルギー消費が増えた。エネルギーがなければ生命維持はできませんから、もちろん産業活動も維持できません。そういうことでエネルギー供給が増えた。エネルギーとは何かというと、言うまでもなく石油です。地下資源を人間が見つけたことで、ここまで伸びたわけです。
問題は、これがこの後どう行くかということを誰も真面目に言ってくれない。もちろん、しかるべき人はきちっと国のどこかで考えてはいるのだと思いますが、これがこの後どう行くのだろうということを国民にもちゃんと言っているとは思えない。
(図4)
最近、ピークオイルという議論がしきりに言われますが、ピークアウトしたのが2007年ぐらい。いろいろなデータで多少違うようですが、いずれにしても、2000年過ぎたあたりで石油生産はピークアウトしてくる。下り坂に既に入っている。
データを見ると、石油の値段がじりじりと上がったり下がったりしていますが、基調的には上がっています。今後どうなるか。ハバートという有名な方の予測ですが、まさに対称型に落ちていくだろうという予測がされています。ハバートとは、ご存じだと思いますけれども、アメリカの石油の予測をしてぴたっと当てた人として有名です。それと同じようなことが世界規模で起こるだろうと言われています。
私は1930年代に生まれて、ずっと駆け上がってきた。何でこんなに給料が上がるのだろうと不思議だったわけですね。私が、そんな働きしているとはとても思えない。自分のことは自分でわかりますから。周りを見ても、給料が上がって、所得倍増……。どこにこの理由があるのかと不思議でしようがなかった。まあ、上がるんだから黙っていた報が得で、余計なことは言わんでおこうと黙っておりましたが、考えたら不思議です。
今やっとわかったのは、要するに石油が安くどんどん供給された。それを日本が獲得できた。獲得できなかったところは、気の毒にそのままであったり、落ちた。国によって状況もありますが、日本は上手に獲得した。日本の科学技術が良かったなどいろいろ説はありますが、科学技術であろうが上手に石油を手に入れられない限り、幾らトヨタの車が立派でも生きられません。生きられるのはやはり石油です。
これをずっと食べて豊かになってピークアウトすると、これからは対称的に落ちていくだろうと言わざるを得ないと思います。これは先のことなので、よくわかりません。いろいろな努力があって持ち直したりするでしょうが、大きくは落ちていく。白黒テレビがやっと買えたなと言っていたら、カラーテレビになって、私でも車が買えるというとんでもない時代になった。そんなことがあってもいいのかと家でも売り場でもびっくりしたりしていました。
そのうちこれが1つずつなくなっていく。ちょうどカラーテレビになったころがカラーテレビがなくなるころの石油生産量が同じだとしたら、2030年頃という予測は当たるだろうという気がしております。これをどうやってうまく克服するのか。
(図5)
まさに我々が生きた世紀だけが人類の歴史の中でもとんでもない世紀だったということは、このデータを見せてもらうとよくわかります。これは長続きするわけがない。
化石燃料が枯渇してもとに戻るとしたら、どういうもとに戻るのか。「いや、戻らないよ。原子力があるよ」というのは、余り主張ができなくなりました。だから、やはり自然のエネルギーでという話にならざるを得ない。
そうしたら、どんなことになるのか。テント生活に火打石かどうかよくわかりませんが、ある程度覚悟したほうがいいのではないか。しかも、それは何世紀も先ではなくて、駆け上がったのとほぼ同じ勢いでここへ到達するのかなと個人的には思っています。そういうことに備えて、孫、子のために農地と耕す術だけは伝えてる。カネは残してもしようがないと思っています。

 

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