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1.持続可能社会が論じられる背景

2. 持続可能社会の2つの方向(先端技術型モデル/自然共生型モデル)

3.先端技術型の限界と自然共生型への転換

4.自然共生型モデルの必要条件

5. その実現シナリオ

6.実現のための課題

7.新たな社会への変革(技術/産業、社会/経済、価値観/倫理観)



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(図6)
 何故こんなことになったか。自然生態系の中で飛び抜けた人間の知恵と石油のおかげと言べきでしょう。地下資源と自然の資源の大体3分の1近くひとり占めしている。ですから、この上に乗っている生態系はほとんど生存できない。これはもう当然の話です。どんどん生き物が消滅していく。第五次消費者では、絶滅危惧が起きてくる。これは自然の理屈であって、別に不思議でも何でもない。
さあ、どうするか。地下資源で支えられている。これがピークアウトして、生物多様性という大きな話が出てくる。実感的には生物が減っているから、多少は保全する、増やす、動物園で飼育するとかいう話も聞きますが、そういうことではないと思います。もっと決定的に、動植物の自然生態系の中で人間は本気になって、許してくださいという感じで生き直すのかどうかというぐらいの覚悟がないとこれはもたないのではないか。「生物多様性」という言葉でかなり難しくオブラートがかかっていますが、そういうことではないだろう。
地下資源は思いっきり縮小する。こちらはもういや応なしです。それなら、人間の生存を支えていくのは何だろうということを、本気で考えるぎりぎりのところに来ているのではないかと思います。
雑談ですが、自然の生態系は考えれば本当によくできております。私は土木屋の端くれですから専門ではないのですが、多少、聞きかじりするだけでも実によく仕組みができている。何千年、何万年かけて地球上に出来上がった生態系の仕掛けは、考えてみたら、持続可能で本当によくできている。
物質とエネルギーというと、エネルギーはおてんとうさんですから、おてんとうさんがある限りは永遠です。しかし、物質の循環は地球上で物質不滅の法則がありますが、決して増えも減りもしない。その中で、これが循環するようにうまい仕組みだと思う。さらに言えば、どれか1種が飛び抜けて増殖してほかを食い尽くすことがないように、実に食う、食われるの関係が巧みに発揮されている。どれかが増え過ぎると、別のどれかが喜んでえさを食べる。増えすぎた種が減って、それを食べていた種がまたコントロールされるという実にうまい仕組みができ上がっているということです。多少、フェーズがずれながら、全体としては非常に安定して数のコントロールができているところに、人間だけはそういうコントロールを外れたところにいる。
中型大型の肉食動物は、朝、えさを食べたら、次は何を食べられるかという保障は何もないのです。次にえさに出会うまでは何日でもすきっ腹を抱えてえさを探し回らなければならない。
昔は人間もそうだったと思うのですが、東京に暮らしていてえさに出会わないということはちょっと難しい。行く先々でグルメに出会ってしまう。次に何を食べようかという、そっちで心配しなければならない。どころが、普通、動物は朝食ったら、次に何が食べられるのだろうという偶然の出会いによって食べることができる。人間も生態系の一部になるのなら、そういうことに近づくのだろうと思います。
「あいつ、このごろ姿が見えんな」、「いや、出会い頭にライオンに食われよったんや」ということが、数のコントロールでは大事なことなのです。それで生態系が維持されている。食う、食われるの関係の中で、人間だけは食われない。食う一方で食われないというのは非常にアンフェアで、それなら数は増える。それをどうコントロールしたらいいのかというのには相当知恵が要る。
(図7)
エコロジカル・フットプリントはご存じかと思いますが、地球の扶養力と訳されています。1985年頃地球のキャパは1を超えて、あとは借金です。誰から借金しているかといったら、どんどん食いつぶして将来世代から借金しているという計算になっております。これは非常に粗っぽい計算しかできません。精度がどうなんだと言われたら、なかなか難しいと思います。今の人間はそれぞれ先進国の暮らしもあり、途上国の暮らしもある。それを全部トータルしたら地球が幾つ要るかを大ざっぱに計算しています。日本の借金が将来世代のツケになっていると言いますが、地球全体としてもツケを回しているようであります。
(図8)
これは、経産省の研究機関におられる方が、省の立場ではなくて、個人的に研究グループでやっている研究です。石油ピーク像のシナリオです。こういうことが起こり得るだろうということです。これを参考に将来のビジネスをどうしたらいいか考えたらいいと思います。
冷凍食品がなくなるのだったら、それにかわる食品の保存や販売を考えたらいい。自販機がなくなった時にどういうビジネスがあるのかということのヒントになる。でも、言っても乗ってくる人がいないので……。


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