1.持続可能社会が論じられる背景

2. 持続可能社会の2つの方向(先端技術型モデル/自然共生型モデル)

3.先端技術型の限界と自然共生型への転換

4.自然共生型モデルの必要条件

5. その実現シナリオ

6.実現のための課題

7.新たな社会への変革(技術/産業、社会/経済、価値観/倫理観)



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(図13)
よく嫌がらせみたいな漫画を引用しますが、実は私の周りでもこういうことをやったことがあります。
何億か国の補助をいただいて、有機廃物から油を回収するという高温高圧の装置の開発です。確かに最初は油はできたのですが、問題は別にありました。「これはペイするのか」と聞いたら、「今のところペイはしない」。エネルギー的にはどうかというと、ドラム缶1本のエネルギーを使って回収できたエネルギーは油がコップ1杯ぐらいという話は、技術開発では割とあります。シビアな民間の技術開発ではこんなことはおやりになりませんが、国から補助金が出るなら、やったらいいではないかということがいっぱいある。
私も地方の都道府県でお手伝いをするのですが、「先生、こういうものの検討委員になってくれ」ということでならされると、「いっぱい国からカネがつくのでやりましょう」という話になるわけです。「地方でカネをもらってやっても、難しいと思うよ」と言っても、「いや、国からいただけるんだから、やりましょうよ」ということでやった例があります。
結果的には、3年間の補助金で大きなプラントをつくって動かして、それがモノになったことは全くありません。今やスクラップになって、これをどう壊すか。そのおカネを国は出してくれないようですから、これは地方自治体が抱えて、これからどうするのかということです。「最初から俺が言うとったやろ」と言っても、そんなものは全然あかんのです。私がかかわったのは近畿地方のあるところですが、そんなものはいろいろなところでいっぱいあります。

 

2.持続可能社会の2つの方向(先端技術型モデル/自然共生型モデル)

(図14)






















ここからが、結論めいた話になってきます。
これからどう社会を持っていって、持続可能な社会にしていったらいいのか。これが私どもの提案ですが、2つ方法がある。
国が力を入れてやってこられた活力ある社会。主としてこういうイメージから分かる都市型で個人を大事にする。集中生産、リサイクルみたいなことを頑張ってやる。大規模な先端技術を活用する。燃料電池や、原子力、核融合、二酸化炭素の隔離など、小泉さんが言っていた技術をつぎ込めば、より便利で快適な社会で持続可能になるということで一貫してやってきています。この基本方針は、国はまだ大きくは変えていない。役所によって、総務省なんかは微妙に見方が変わってきています。
環境省は今年の環境白書で、「いや、もう1つのモデルもあり得る」と言っています。日本ではこの2つが並立していると言ってくれています。何故「くれている」かというと、実は、これは我々のグループが滋賀県で提案した別のモデルです。これがだめとは言っていないです。これはこれでおやりになったらいいのだけれども、例えば滋賀県みたいなところでこういうことをやれと言われてもできようがないです。原子力を滋賀県に持ってくるか。今でこそとんでもないですけれども、当時はそれはないことはなかった。でも、そういう技術と資金と人材を考えたら不可能ですから、滋賀だったら、滋賀でできそうな「自立・分散型/コミュニティ重視」、「適量生産・もったいない」という地域のキーワードで、もったいない社会を生み出す。つまり、デマンド側を何とか思い切って変えない限りは、サプライをいろいろな技術でやってみても、なかなかできない。
国がおっしゃるような相当カネのかかる最先端技術ではなくて、もう既に原理はわかっているけれども、まだ実用化されていない。その理由は別に技術の問題ではなくて、社会がそれを受け入れるかどうかの問題。これを何とか地元で受け入れる。
そうなると価値観は、より便利で快適な社会、豊かな社会というよりも、社会・文化的な価値を尊ぶような、今のはやりで言えば幸せ社会、GNH、Happinessの指標を導入しようではないかと当然なっていくわけです。先端技術型社会はGDP、GNPの世界だとすれば、自然共生型社会はGNHの世界と言わざるを得ない。そう言わないと市民には納得してもらえません。不便になって、物が乏しくなるのは、基本的にはやむを得ないことです。
実は、これは洞爺湖サミットの前に提案しています。洞爺湖サミットの資料で、二十何カ国の国のレビューですが、持続可能社会で、各国がどういうことを提案しているかという中に、実は滋賀県だけぽつっと入れてくれています。これは若干個人的なコネクションもあって、この作業の仲間が入れてくれたのです。日本の紹介よりも滋賀県の紹介のほうが若干多いぐらいにしてくれています。


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