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1.持続可能社会が論じられる背景

2. 持続可能社会の2つの方向(先端技術型モデル/自然共生型モデル)

3.先端技術型の限界と自然共生型への転換

4.自然共生型モデルの必要条件

5. その実現シナリオ

6.実現のための課題

7.新たな社会への変革(技術/産業、社会/経済、価値観/倫理観)



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(図9)
結局、何が人類の持続可能性を危うくしているのか、私なりに要約してみました。
1つは、先ほどから申し上げているように、温暖化の異常気象であります。特に今年は、観測史上初めての高温だったというのが、今朝の新聞に出ていた。もう1先ほど申し上げた生態系がこのままではもたないだろう。特に、温度が2度上がると生態系は完全に崩壊するというのが、温暖化の危機説ではあります。だから、少なくとも2度は上げないようにしようということが国際的には常識になっているわけです。
一方、こういう自然科学的な問題とは別に、社会経済的な課題としてはグローバル経済の危機も結構早いのではないか。それから、グローバル経済に走った。世界はどこでもそうです。日本もそのために地方経済を崩壊させていることがはっきりしていると思います。
私は、地方へ行ってから、どんどん地方へ地方へと流れ流れて、今はえらい田舎の島の端っこで、もう一遍その地域を再生しようというお手伝いを始めてみた。そうしたら、日本の矛盾がいっぱいですね。地方が助かる道はこのままではないだろう。余程知恵と力がないと、地方社会は元気になるどころか、崩壊をとめることすら難しいところだらけです。
日本には3000近い限界集落なるものがあって、10年もつところはそんなにないだろうと言われている。これは現場をご覧になったら、よくおわかりかと思います。それをどうするのかを霞が関で誰か考えてくださっているのかということです。
グローバル経済が発展して東京が豊かになることと、地方の経済や文化や伝統が崩壊することは裏腹の関係、セットで動いているということだと思いますが、こういうことがどこまでもつのか。
ポイント・オブ・ノーリターンという計算をしている人がいます。10年、数十年オーダーで計算されています。ピークオイルというのは、オイルが10年でなくなりますとかいう話ではなくて、どんどん手に入らなくなるということで、長もちすることはあると思います。
水資源はパスしますが、これも地域規模では相当ややこしいです。世界水資源の枯渇は、世界的には深刻ですが、日本は逆に水資源の量そのものは若干増えるだろうということです。ただし、パターンが変わるので、使い方が非常に難しくなるということだと思います。
そういうことを全部トータルして、何故こんなことが一気に起こってきたか。偶然とは思えない。一言で言えば、やはり安い石油を、遺産を見つけて、それをどんどん使いまくって、人口は増えるわ、豊かさは増すわということの反動だ。全部これが反動で起こった。
(図10)
ここにポイント・オブ・ノーリターンというデータをとってきました。地域環境は20年から30年。ピークオイルは、何年とは言えないけれども、1980年を越えてからどんどん深刻になっている。実は、社会・経済的破局はもっと早くて、ポイント・オブ・ノーリターンはあと5年。これを言ったのが1年以上前ですから、いまやもう4年を切っているだろうと思います。
こんなことが言われていたのですが、本当はどうなっているのだろう。そんなの全然なっていないよということはないと思います。確かに、その方向に向かっているk気がいたしますので、これはちょっとウォッチしておいていただいたらと思います。
(図11)
ここで、閑話休題。私が申し上げようとすることは、既に相当以前、10年よりもっと以前だと思います。出典がよくわからずに申し上げていますが、ストックホルム環境研究所というところが、こういうまとめをしたのだそうです。これは又聞きの又聞きで、人の資料を黙って取ってきたので、ここ以外で使っていただくのはまずいかもしれませんが、今日ご出席の皆様にご紹介します。
結局、伝統的思想、終末的思想、エコ変革的思想の3つの大きな派に分かれる。これ自身はそんなにとんでもないことではありません。
伝統的思想にある市場に任せて政策を上手にやれば解決するという考え方は、もちろん今でも日本には特に多いだろうと思います。これはやったらいい。
しかし、反対の極では終末的思想というのも前からある。マルサスの人口論から始まって、どう考えても、将来、地球の人類の生存が崩壊的な状況になることは避けられないという主張も一方ではあるわけです。
さはさりながら、いろいろな知恵と努力をすれば何とか切り抜けられるよというのが、エコ変革的思想。その中でもシューマッハが言っているようにSmall is beautifulというのが一時はやりましたが、そういう社会に変わることも1つの道だ。タイタニック号をおりて、早目に小舟に乗り移って、つまり、氷山に衝突する前にどこか静かな入り江に行こうという派ですね。
栄変革思想派の中の持続可能な開発派は、リオサミットの5年後に集まった人たちがまとめた考え方です。人類の強調と団結、それから新しい価値観と生活の術を開発することで新しい社会、よりよき海に行けるのではないか。ですから、何とかやりましょうという立場は、この3番目の立場です。ですから、私なんかも「おまえはどれだ」と言われたら、シューマッハ派にかなり近いですけれども、これを言うとまた「ユートピアグループか」というような批判的表現もされる。なかなか難しいですね。
新しい社会をどう描くかというのが、今日の一つのテーマです。したがって、市場に任せれば大丈夫だとか、政策と科学技術で何とかなるという立場を私はとってきていないし、今も違うので、その辺をどう受けとめていただけるか。それでは多分だめだろうという強い思いがあります。絶対だめとは言いませんが、それには限界があり過ぎる。
(図12)
これは英語に訳されてしまっていますが、小泉さんが総理の時に、日本が7つのエリアでglobal warming(地球温暖化)に対応することを国際的に表明したものです。
上から、燃料電池(Fuel cell)、recovery technology(省エネタイプのCO2回収技術)。それから、車の大変エネルギー効率の高いモデルをつくる。Long-terrm。CO2の地中ないしは海中投棄、石炭ガス化。森林を上手に使おう、植林しよう、水素技術。そういうことがずらっと7つ並んでいます。
小泉さんのこの宣言以来、これがどうなったのか一遍検証してみる必要があると思います。これは小泉さんが勝手に思いついて言われたわけではなくて、日本の経済産業省を初めとした、技術にかかわる役所が本気になって考えた提案だと思います。国の役所が英知を集めてした提案ですが、あれから何年たちましたか。どうなっているのだろう。相当巨額の予算が投じられたはずなので、それのコストパフォーマンスは一体どうなったのだろうという検証は一度も聞いたことがありません。役所というのは、検証はしないのがどうもルールになっているようです。これは地方でもそうですから、霞が関だけに文句を言うわけではないのですが、これは一遍やってみないといけない。これから日本が持続可能社会をつくる時に、技術オンリーで行くのかということに対する政策決定はやはりあったほうがいいのです。

 

 

 






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