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私たちは、都市デザインと建築環境に関するエンジニアリングの融合のもと
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カーボンニュートラル・GX 都市計画・まちづくり

スマートシティの今

担当研究員

サイバー空間とフィジカル空間の融合によって経済発展と社会的課題の解決を図る人間中心の社会、Society5.0の先行実現の場として、全国の都市が構築を目指すスマートシティ。その黎明期から現在に至るまで、国内外の事例を追い続け、ビジョン作成や技術提案に携わってきた白機錫主任研究員に、都市の過去・現在・未来について聞きました。

本多: スマートシティは米国の「Smart Grid※」から派生して2000年代初頭に登場した概念と言われていますが、最近の動向をお聞かせください。
※リアルタイムで電力需要を把握し、ITを駆使して需給双方の電力の流れを最適化する送電網

白: 未だに世界標準の定義はなく、各国や都市ごとにスマートシティが指すものが異なります。日本では「先進的技術や官民のデータを活用し、まちの課題を解決し、新たな価値を創出するため、都市活動や都市インフラの管理及び活用を高度化する(国土交通省)」、「スマートシティは、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、Society5.0の先行的な実現の場(内閣府)」と定義されています。

スマートシティの源流は、電力やガスなどのエネルギー自由化、分散化電源の利用(災害時含む)をはじめとしたエネルギーの動向の変化に大きく依存していますが、近年では、エネルギーの観点に加えて、様々な分野横断型のデータ利活用による社会課題解決の取組みといった観点も重要になってきています。

本多: 世界最大のスマートシティカンファレンスが開催されるバルセロナは、スマートシティ界のトップランナーとしての地位を確かなものにしていますね。

白: はい、先鋭的な取組みに加え、地理的な優位性、鮮やかな広報戦略等で積極的に売り込んだことが成功の要因でしょう。日本においても国土交通省を中心に、海外スマートシティの具体的案件形成の加速化に向けた、「Smart JAMP」を実施しているなど、我が国のスマートシティに係る技術やノウハウの海外展開に向けた動きが増えています。昨今、カーボンニュートラルへの国際的な動向を受け、「スマートシティ×カーボンニュートラル」といった新たな動きが出るなどスマートシティは都市間競争の重要なテーマの一つです。

日本のデジタル化施策はなぜ進まないのか

本多: スマートシティでは、デジタルガバメントも重要な概念の一つかと思います。海外では取組みが進んでいる印象がありますが、日本ではいかがでしょうか?

白: 残念ながら、デジタルガバメントの分野では遅れをとっています。これまで日本のスマートシティを主導してきたのはデベロッパー等の民間プレイヤーで、中央省庁が連携して全国の都市のスマート化を推進する流れが生まれたのはここ2~3年の話です。中央政府が旗振り役となり、都市のスマート化を主導することが一般的な海外事例では、デジタルガバナンスを進めやすい土壌があったと言え、高い熟度に達している事例もあります。

本多: デジタル化によって、これまで煩雑だった行政手続きに係る経費が削減され、税金の効率的な利用により、国民に還元される利益はあると思いますが、日本ではそうしたデジタル化のメリットに関する議論はあまり行われていない印象を受けます。

白: 私論ですが、日本では伝統的に「職人魂」が強いことが関係していると思います。「世に出すものは、100%に近い完成度が必要」という拘りがあり、いわゆるアジャイルな手法とは相性がよくありません。その結果、あらゆるデジタル化施策にスピード感が欠け、負の面だけが繰り返し語られるような状況を作り出しているのかもしれません。

スマートシティにおける目標設定の変化

本多: 当初、スマートシティの目指すものは明確で分かりやすかったと思います。例えば、エネルギーにフォーカスしたかつてのスマートシティは、給電の効率化やシステムエラーの発見など、明確であり、定式化しやすい目標設定でした。一方最近は「スマートシティが実現する社会」として、QOL(Quality of Life)の向上を目指すことが明言されています(スマートシティの実現に向けて【中間とりまとめ】国土交通省都市局https://www.mlit.go.jp/common/001249774.pdf)。人々の価値に関わる問題が目標として設定されており、課題が所与でなく、明確に定式化しづらい目標設定をどのようにすればよいのか、そこから考える必要があります。QOLの向上という答えが一つに定まらない目標に対して、住民や関係者の共通認識をどのように築いていくかは大きな課題かと思います。この点はいかがですか。

白: 従来のサービスの効率化もある一方、今までに経験したことのない新しいサービスも多くあるほか、サービスの恩恵を受ける対象も幅広く、一概に評価を行うことが難しい状況であるのは確かです。しかし、なぜスマートシティに取り組むのか?という根本的な質問に戻ると、やはり「我々の生活のQOLの向上」のためであり、スマートシティに取り組んでいる多くの国・地域において共通的に掲げられている目標の一つが「QOL向上」なのです。

共通認識を持つことにおいては、リビングラボ等の仕組みを活用し住民参加を促すなど、リテラシー向上のための手法がいくつかあるかと思いますが、一番重要なのは、経験させることだと思います。日々の生活で感じる不便さや課題に対して少しずつ取組み、その成果(便利さや効率性)を共有する、アジャイル的な取組みを増やすことが共感に繋がり、共通認識となっていくのだと思います。

これからスマートシティを始めるには

本多: 日建設計総合研究所(NSRI)はどのようにスマートシティに関わっているのでしょうか?

白: 国内外の事例調査から、実際の都市のスマート化に向けたビジョン作成まで、幅広く関わっています。作成したビジョンを基に、クライアントには具体的な技術の実装等を判断していただくことになります。

本多: 川上から川下まで長くクライアントに並走することもあるのですね。これからスマートシティを目指す地域では、どのようなプロセスで支援を進めていますか?

白: 一口にスマートシティといっても、包含する分野は極めて多様です。そのため、まずはその都市が目指す都市像「ビジョン」の作成のお手伝いから始めます。体制構築支援では、チームを率いる「リーダー」の発掘に加え、意向の異なる複数の主体に横串を刺し束ねる組織作りも必要です。

本多: スマートシティ以外でも共通ですが、横串を刺す組織に予算権限がなければ、結局効果的な活動が出来ない例もがありますね。

白: 権限を誰が、どの程度持つかは、体制づくりに欠かせない重要な視点ですね。

NSRIの強みとこれから

本多: スマートシティ構築におけるNSRIの強みは?

白: 日建グループとして、建築・まちづくりの経験の蓄積があり、現実性の高い提案が出来る点を評価いただいています。自治体の支援をする際は、上流から下流まで共に悩みながら伴走出来る点がNSRIの強みだと思います。

本多: スマートシティを取り巻く環境が変化してきているとの話もありましたが、今後NSRIや白さんはどのように変化していきたいと思っていますか?

白: クライアントとNSRIの二人三脚では、都市のスマート化に向けたロードマップを完走するのは難しい時代です。これからは、ベンチャー企業などの様々なプレイヤーと一緒に価値を生み出していく「連携力」を磨いていきたいと思っています。

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