デジタル・テクノロジーと都市の変容
技術革新などにより、私たちを取り巻く環境は日々変化しています。
デジタルイノベーションにより未来都市は変わるのか、研究に基づく提言を発信していきます。
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web3が、参加型まちづくりの新しい方法論を拓くかもしれません。
2022年11月、経団連からweb3推進戦略が提言され 1)、また2023年3月には、デジタル庁からweb3に関する調査レポートが公開されました 2)。当レポートは、学識者や経営者等からなるWeb3.0研究会によってとりまとめられ、web3に対する政界や学界、経済界の嘱目を象徴したと言えるでしょう。一方、2022年下期には、それまで好調だったNFT 3)市場が冷え込みを見せる等、これまでweb3を支えてきた仕組みは行き詰まりを見せつつあります。web3が生み出す次の価値は何か、模索が続いています。
そもそもweb3とは何でしょうか? 経済産業省によると、web3とは「ブロックチェーン上でユーザー自らデータの管理・活用を行い、新しい価値を創出する動き」 4)のこと。オンラインでのやり取りに、トークンと呼ばれる金融資産が組み込まれることもweb3の大きな特徴の一つです。2021年頃から、暗号通貨愛好家や大手IT企業、ベンチャーキャピタルなどから関心を集め始め、それから経過することおよそ2年、一般的には投機のイメージが先行しがちですが、ゼロサムを抜け出した様々なユースケースが生みだされています。
まちづくりの観点から、特定のまちや場と結びついたweb3事例をご紹介すると、NFT所有者をデジタル村民として位置付け、地域の関係人口を創出する「Nishikigoi NFT」 5)、入居者がトークンを用いた投票行為で運営に関わるシェアハウス「Roopt神楽坂DAO」 6)、地域の店舗等と連携し、現地でチェックインしたユーザーにNFTを配布するNFTゲーム「Game of the Lotus」 7)、地域内での共助やスキルマッチングを促進する「Furusato DAO」 8)等があげられます。これらの例に共通してみられるのが、DAO 9)によってリアルなまちや場に関わる、特定の目的を持ったコミュニティを運営し、それと並行して、NFTやトークンを、コミュニティ運営の円滑化やまちとコミュニティのタッチポイントづくりのために活用する方法です。
察しの良い方は、「なるほど、web3は参加型まちづくりに、DAOやNFTといった新しいツールを提案するかもしれない」とお気付きかもしれません。しかし、それは単なるツール以上のもの、参加型まちづくりの新しい方法論(DeCoDe:Decentralized Community Development;分散型まちづくりの略)を提示し得るのではないか、と筆者は考えています。なぜならweb3は、不特定多数の市民を組織化し(ブロックチェーンによる紐帯)、その権利と利益を明確化し、まちづくりへの関わり方を多様化、または深度化し(透明性の高い議論と投票行為・NFTの所有行為、投票結果のスマートコントラクトによる実行)、今日の参加型まちづくりのプロセスが抱える多くの課題:例えば参加者の主体性、固定化、意見の反映等を過去のものにする、単に道具立てでは達成し得ないであろうイノベーションの可能性を秘めているからです。
web3は、同時に多くの課題や制約を孕んでいます。DeCoDeを方法論として確立するには、研究と実践の積み重ねが必要であることは言うに及ばず、web3関連市場の整備や制度環境の充実を待つことも必要となるでしょう。しかしその先には、米国の社会学者のシェリー・アーンスタインが例えた「参加の梯子」 10)を上り、名目としての住民参加を抜け出すことが出来る未来があるかもしれません。
2022年11月、経団連からweb3推進戦略が提言され 1)、また2023年3月には、デジタル庁からweb3に関する調査レポートが公開されました 2)。当レポートは、学識者や経営者等からなるWeb3.0研究会によってとりまとめられ、web3に対する政界や学界、経済界の嘱目を象徴したと言えるでしょう。一方、2022年下期には、それまで好調だったNFT 3)市場が冷え込みを見せる等、これまでweb3を支えてきた仕組みは行き詰まりを見せつつあります。web3が生み出す次の価値は何か、模索が続いています。
そもそもweb3とは何でしょうか? 経済産業省によると、web3とは「ブロックチェーン上でユーザー自らデータの管理・活用を行い、新しい価値を創出する動き」 4)のこと。オンラインでのやり取りに、トークンと呼ばれる金融資産が組み込まれることもweb3の大きな特徴の一つです。2021年頃から、暗号通貨愛好家や大手IT企業、ベンチャーキャピタルなどから関心を集め始め、それから経過することおよそ2年、一般的には投機のイメージが先行しがちですが、ゼロサムを抜け出した様々なユースケースが生みだされています。
まちづくりの観点から、特定のまちや場と結びついたweb3事例をご紹介すると、NFT所有者をデジタル村民として位置付け、地域の関係人口を創出する「Nishikigoi NFT」 5)、入居者がトークンを用いた投票行為で運営に関わるシェアハウス「Roopt神楽坂DAO」 6)、地域の店舗等と連携し、現地でチェックインしたユーザーにNFTを配布するNFTゲーム「Game of the Lotus」 7)、地域内での共助やスキルマッチングを促進する「Furusato DAO」 8)等があげられます。これらの例に共通してみられるのが、DAO 9)によってリアルなまちや場に関わる、特定の目的を持ったコミュニティを運営し、それと並行して、NFTやトークンを、コミュニティ運営の円滑化やまちとコミュニティのタッチポイントづくりのために活用する方法です。
察しの良い方は、「なるほど、web3は参加型まちづくりに、DAOやNFTといった新しいツールを提案するかもしれない」とお気付きかもしれません。しかし、それは単なるツール以上のもの、参加型まちづくりの新しい方法論(DeCoDe:Decentralized Community Development;分散型まちづくりの略)を提示し得るのではないか、と筆者は考えています。なぜならweb3は、不特定多数の市民を組織化し(ブロックチェーンによる紐帯)、その権利と利益を明確化し、まちづくりへの関わり方を多様化、または深度化し(透明性の高い議論と投票行為・NFTの所有行為、投票結果のスマートコントラクトによる実行)、今日の参加型まちづくりのプロセスが抱える多くの課題:例えば参加者の主体性、固定化、意見の反映等を過去のものにする、単に道具立てでは達成し得ないであろうイノベーションの可能性を秘めているからです。
web3は、同時に多くの課題や制約を孕んでいます。DeCoDeを方法論として確立するには、研究と実践の積み重ねが必要であることは言うに及ばず、web3関連市場の整備や制度環境の充実を待つことも必要となるでしょう。しかしその先には、米国の社会学者のシェリー・アーンスタインが例えた「参加の梯子」 10)を上り、名目としての住民参加を抜け出すことが出来る未来があるかもしれません。
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1)経団連(https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/096_honbun.html)
2)デジタル庁(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a31d04f1-d74a-45cf-8a4d-5f76e0f1b6eb/a53d5e03/20221227_meeting_web3_report_00.pdf)
3)インターネット上でやりとりできる財産的価値(暗号資産、トークン)のうち、Non-Fungible(非代替的)であることを特徴とするもの。個々のNFTは識別可能であり、それ固有の価値を持つ。
4)経済産業省(https://www.meti.go.jp/press/2022/07/20220715003/20220715003.html)
5)Nishikigoi NFT(https://nishikigoi.on.fleek.co/)
6)Roopt(https://roopt.jp/sharehouse/about_kagurazaka/)
7)Game of the Lotus(https://gotl.io/)
8)紫波町(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/495a2882-d9e4-4f25-b75f-acc6a5f38312/644f8005/20221025_meeting_web3_outline_01.pdf)
9)Decentralized Autonomous Organization(分散型自律組織)の略で、所有者や管理者を前提とせず、不特定多数の参加者により事業やプロジェクトを推進する組織。
10)cf. Arnstein.
1)経団連(https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/096_honbun.html)
2)デジタル庁(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a31d04f1-d74a-45cf-8a4d-5f76e0f1b6eb/a53d5e03/20221227_meeting_web3_report_00.pdf)
3)インターネット上でやりとりできる財産的価値(暗号資産、トークン)のうち、Non-Fungible(非代替的)であることを特徴とするもの。個々のNFTは識別可能であり、それ固有の価値を持つ。
4)経済産業省(https://www.meti.go.jp/press/2022/07/20220715003/20220715003.html)
5)Nishikigoi NFT(https://nishikigoi.on.fleek.co/)
6)Roopt(https://roopt.jp/sharehouse/about_kagurazaka/)
7)Game of the Lotus(https://gotl.io/)
8)紫波町(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/495a2882-d9e4-4f25-b75f-acc6a5f38312/644f8005/20221025_meeting_web3_outline_01.pdf)
9)Decentralized Autonomous Organization(分散型自律組織)の略で、所有者や管理者を前提とせず、不特定多数の参加者により事業やプロジェクトを推進する組織。
10)cf. Arnstein.