
私たちが暮らす都市の社会課題はますます多様化・複雑化しています。日建設計総合研究所(NSRI)では、このような社会課題解決に向けて、優れたソリューションの提案やイノベーションへの取組み、及び未開拓分野への挑戦や継続的で粘り強い貢献など、業務を通じた様々な研究員の取組みや業績を「NSRI賞」として表彰しています。
今回はこの中から優秀賞に選ばれた"Walkability Index"の研究開発と社会実装についてご紹介します。
Walkability Indexとは
Walkability Index(ウォーカビリティ・インデックス)は、“ある地点から徒歩で到達できる範囲に「都市のアメニティ」がどれだけ集積しているかを、100点満点で評価する指標“として、NSRIが2018年頃から研究開発を進めてきたものです。ここでいう、都市のアメニティとは、図に示すような、近くにあったら嬉しい生活利便施設、商業・レジャー施設、教育・学び施設を指しており、Walkability Indexは、言い換えれば、「徒歩圏内の施設集積度≒暮らしやすさ」を端的に示す指標と言えます。
日本初の指標ということもあり、2020年の正式リリース以降、幸いにも国・地方自治体、民間企業、大学・研究者の方など多くの皆さまに活用いただくことで、NSRI内の研究開発にとどまらず、社会実装まで実現することができました。
日本初の指標ということもあり、2020年の正式リリース以降、幸いにも国・地方自治体、民間企業、大学・研究者の方など多くの皆さまに活用いただくことで、NSRI内の研究開発にとどまらず、社会実装まで実現することができました。
評価方法の特徴
近年、都市計画・まちづくりの分野では、「ウォーカブル」や「ウォーカブルなまちなかづくり(居心地が良く歩きたくなるまちなかづくり)」が重要なテーマの1つとなっていますが、Walkability Indexは、都市のビッグデータを分析・活用することで、そういった「歩いて暮らせるまち」、「歩いて楽しいまち」を客観的・定量的なアプローチから評価しているところに特徴があります。
Walkability Indexの開発は、株式会社ゼンリン提供の各種データ及び都市に関するオープンデータを用い、国立大学法人一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科(清水 千弘 教授)に監修いただいています。
Walkability Indexの評価方法の特徴として、次の3つが挙げられます。
Walkability Indexの開発は、株式会社ゼンリン提供の各種データ及び都市に関するオープンデータを用い、国立大学法人一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科(清水 千弘 教授)に監修いただいています。
Walkability Indexの評価方法の特徴として、次の3つが挙げられます。
- 徒歩で到達できる都市のアメニティを集計
- 任意の地点ごとにピンポイントにスコア化
- 「住宅」と「オフィス」で異なる評価が可能

1.徒歩で到達できる都市のアメニティを集計
Walkability Indexは、詳細な歩行者経路データから徒歩圏を設定し、その中のアメニティを特定・使用しているため、例えば「〇〇駅から半径500m圏」などの直線距離を用いた場合よりも、「徒歩圏」をより正確に把握できます。特に、鉄道駅や河川、学校のグラウンドなどがあり、実際に通れる道(駅の自由通路、橋、歩道橋など)が限られる場合には、「歩いて到達できるか」という点で大きな差が生じてきます。

2.任意の地点ごとにピンポイントにスコア化
Walkability Indexは、全国の都市地域を対象に、50m四方のエリア(一街区相当)ごとにスコアを算出しているため、同じ駅の周辺でも場所による差を表現できます。

3.「住宅」と「オフィス」で異なる評価が可能
住宅向けとオフィス向けでそれぞれ利用するユーザーの属性に応じて、算出対象のアメニティを変えているため、バラエティーに富んだ評価が可能です。
新たに2つの評価指標の提供開始
これまで主に施設集積度に着目した評価指標を提供してきましたが、より暮らしやすさの観点から「歩いて暮らせるまち」「居心地が良く歩きたくなるまち」を定量的・客観的に捉えることができるよう、Walkability Indexシリーズとして、新たに2つの評価指標の提供を開始しました。
1つは、徒歩圏内の高低差をスコア化した「高低差スコア」です。標高データとNSRI独自整備の徒歩圏データから算出しており、身近な生活圏の移動時の起伏の大きさがスコア化されているため、各エリアの徒歩や自転車での移動しやすさ、車いすやベビーカーの利用しやすさなどの検討に活用が可能です。
もう1つは、徒歩圏内のみどりの量(緑被率)をスコア化した「みどりスコア」です。WalkabilityIndexでは公園を対象アメニティとしていましたが、みどりスコアでは、衛星画像から算出された緑被率データ※とNSRI独自整備の徒歩圏データを用いて、公園に限らず、エリア内の街路樹、庭園、草地、農地等も含めたみどりの量を表現する指標となっています。
これまでになかった視点から都市やまちづくりを評価し、世界的な潮流でもあるウォーカブルなまちなかづくりをより加速させていくため、引き続きWalkability Indexの開発・普及を進めていきます。
※)緑被率データの開発:清野 友規,藤原 邦彦,鶴見 隆太,Google EarthEngineを用いた町丁目別緑被率オープンデータ(全国版)の作成と評価,日本建築学会技術報告集,2022,28巻,68号,p.521-526,https://doi.org/10.3130/aijt.28.521
1つは、徒歩圏内の高低差をスコア化した「高低差スコア」です。標高データとNSRI独自整備の徒歩圏データから算出しており、身近な生活圏の移動時の起伏の大きさがスコア化されているため、各エリアの徒歩や自転車での移動しやすさ、車いすやベビーカーの利用しやすさなどの検討に活用が可能です。
もう1つは、徒歩圏内のみどりの量(緑被率)をスコア化した「みどりスコア」です。WalkabilityIndexでは公園を対象アメニティとしていましたが、みどりスコアでは、衛星画像から算出された緑被率データ※とNSRI独自整備の徒歩圏データを用いて、公園に限らず、エリア内の街路樹、庭園、草地、農地等も含めたみどりの量を表現する指標となっています。
これまでになかった視点から都市やまちづくりを評価し、世界的な潮流でもあるウォーカブルなまちなかづくりをより加速させていくため、引き続きWalkability Indexの開発・普及を進めていきます。
※)緑被率データの開発:清野 友規,藤原 邦彦,鶴見 隆太,Google EarthEngineを用いた町丁目別緑被率オープンデータ(全国版)の作成と評価,日本建築学会技術報告集,2022,28巻,68号,p.521-526,https://doi.org/10.3130/aijt.28.521

