
歴史を活かした都市再生の事例や、質の高いパブリックスペースの視察のため、ロンドンを訪れました。どの場所もとても興味深く刺激的でしたが、その合間に見かけた、小さな日常の風景や、個性的なカルチャーを感じる場所もまた強く印象に残っています。
まちなかの小さな広場や公園、路地といった「名もなき公共空間」で、人がそれぞれに過ごす風景に出会うとき、自分がなぜ都市に心惹かれたのかを思い出します。ベンチに隣あって腰掛けたり、道ですれちがったりするありふれた日常の瞬間。お互いの人生が交わるとまではいかないけれど、どこか遠くで影響し合っているかもしれない。そんなシーンが無数に集まって、このまちは形作られているのだと思いました。


また、まちなかを歩いていると、通りの小さなカフェや書店が、周辺地域の個性ある文化をつくっているのを感じました。クラーケンウェル地区にある書店"magCulture"は、世界中の独立系雑誌が集まるお店。ZINEやリトルプレスのカルチャーを愛する者として、必ず訪れたかった場所のひとつです。このようなまちの書店が、本を介したつながりの場や、人々の居場所としてどのような可能性があるのか、引き続き考えていきたいと思っています。


ダイナミックに都市をリノベーションする力と、ここに取り上げたような、小さな日常の風景や個人的な物語の両方を大切にすることが、これからのまちづくりに求められているのではないかと実感したロンドンへの旅でした。