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私たちは、都市デザインと建築環境に関するエンジニアリングの融合のもと
「持続可能な社会の構築」を目指して活動しています。

新たな研究分野など

利用者の着衣量を考慮した快適性と省エネルギーを両立する空調制御手法開発への挑戦

日建設計総合研究所(NSRI)では、社会課題解決のために自主的・戦略的に研究を行うことが出来る仕組み『自主研究』に取り組んでいます。その自主研究の中からピックアップしてご紹介する第15弾です。興味がある、協働したい、という方からのご連絡をお待ちしております。

AIスマート空調の新たな挑戦

現代社会において、脱炭素社会の実現は重要な課題となっています。その中で、商業施設や百貨店などで一部導入されている「AIスマート空調(※注1)」は、IoTやAI技術を活用することで空調運転の適正化を目指す空調システムとして着目されています。建物利用者の快適性を損なうことなく空調運転を適正化するには、人流や温熱環境に加えて、着衣量の特性に応じた空調負荷の時空間分布などの実態を把握することも重要な要素と考え、“AIスマート空調の新たな挑戦”として検討を行いました。

※注1:「AIスマート空調」では、IoTやAI等のデジタル技術を最大限活用し、人流や温熱環境の計測と予測を行い、最適な空調運転を実現することによって、空調におけるCO2排出量(電気使用量)の大幅削減が目指されています。

快適性を損なわない空調制御

室内の温熱環境を評価する代表的な指標に「PMV(Predicted Mean Vote)」があります。PMVは、温度・湿度・気流・放射温度・代謝量・着衣量の6要素を基に、人が感じる暑さ・寒さの度合いを示すもので、PMVが0に近いほど快適な状態を示します。6要素の中で、温度・湿度・気流・放射温度という物理的な要素はセンシング機器による計測で定量化が可能ですが、人間側の要素である代謝量や着衣量の定量化は困難です。本研究では、施設利用者の着衣量を推定する手法を開発することで、利用者の快適性を損なわずに空調の省エネルギー化を実現する空調制御を目指しています。
図1 快適性指標PMVの要素
図1 快適性指標PMVの要素

着衣量自動判定プログラムの開発

NSRIと株式会社シーエーシー(※注2)が協働して着衣量自動判定プログラムを開発しました。NSRIは、着衣量判定に必要な学習データの整理、空調制御に必要となる着衣量の判定基準の設定およびプログラムの判定精度向上に向けた検討を行いました。今回開発したモデルは、施設の防犯カメラ等から画像を取得し、着衣量自動判定プログラムに読み込ませ、AIにより着衣量(clo値)を判定させるものとなっており、主に以下に示す3つのステップで開発を進めました。

※注2:株式会社シーエーシー(CAC)は、1966年創業の独立系システム・インテグレータです。デジタルテクノロジーを用いて、顧客や社会の将来に良い影響を与える、価値あるサービスと製品を提供し、デジタルイノベーションに貢献します。

1.着衣量の判定基準の整理

着衣量の判定基準として、男性・女性別の着衣量(clo値)と着衣の組み合わせとの対応の整理を行いました(図2)。
図2 clo値判定基準の整理イメージ
図2 clo値判定基準の整理イメージ

2.着衣量自動判定プログラムの作成

1の着衣量判定基準をもとに、計測環境と類似した場面の画像を学習データとして用意し、AIによる自動判定プログラムを開発しました。

3.着衣量自動判定プログラムを用いた計測結果の検証

調査画像に対して、着衣量自動判定プログラムに読み込ませて出力したclo値と目視で判定したclo値を照合することで、プログラムの精度検証を行いました。この作業を複数回繰り返すことで、プログラムの精度向上を図りました。

実施設における着衣量計測結果

都内某所の施設において着衣量自動判定プログラムを用いた着衣量計測を実施しました。この施設では、春夏秋冬で施設利用者の着衣量の変化が大きいことが確認できました(図3)。着衣量の変化が大きいということは、利用者の着衣量を加味した室温に設定温度を緩和することで、省エネルギーが図れる可能性が大きいことを示唆しています。夏期の計測例では、許容温度(PMV+0.5)と比較して実際の室内温度(エリア1~3)は低いことが確認され、設定温度の緩和により、省エネルギーを図れることがわかりました(図4)。
図3 年間の着衣量の推定結果
図3 年間の着衣量の推定結果
図4 夏期代表日の施設内の室温
図4 夏期代表日の施設内の室温

着衣量自動判定プログラムの効果と未来

着衣量自動判定プログラムの導入により、AIスマート空調システムの導入効果を高めることが期待できます。今後も、着衣量自動判定プログラムの精度向上や新たな技術開発を進め、省エネルギーと快適性を両立した空調制御手法開発への挑戦を続けていきたいと思います。

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