小川:個人的に注目しているのは、『グラングリーン大阪』の象徴でもある“緑”ですね。バイオフィリア(生命や自然に対する愛着を表す概念)の視点でまちづくりをコンサルティングすることで、空間の魅力を引き上げつつ、CO
2吸収にも貢献ができる。日本全国に10万ヶ所以上ある都市公園でこうした工夫を取り入れられれば、大きなのびしろがあると思います。
河野:これまではCO2を減らす視点の取り組みが多かったけれど、都市分野とも連携し公園などの大きな単位で、そのようなCO2の吸収源を増やし、プラスマイナスゼロに近づけていく取り組みは、まさに「カーボンニュートラル」の考え方にもなりますね。
大久保:それから、既存建物や既成市街地では、様々な制約がある中で大胆な対策を行うことが限られる可能性があります。その点では、今後のインフラ老朽化や公共施設の再編などに合わせて、都市やエリアの再構築が必要となるケースが増えていくものと考えられ、そのような際には脱炭素化に向けて実施すべき事項を大胆に組み合わせていくことが必須になると考えています。日建グループが主として取り組む設計・開発段階のみならず、運用段階での取り組みも見据えたパッケージ型の提案を、さらに意識していきたいです。
江守:インフラなどは一度作ると何十年単位で固定化されてしまうから、刷新のタイミングに合わせた提案は本当に大事ですね。建築業界がそこをマストだと考えていていただけるのは、とても助かります。
河野:子どもたちへの環境教育も重要なアクションのひとつです。先ほど事例として挙げた瑞浪北中学校では、教室単位で消費エネルギー量が見える「エコモニター」を設置しています。窓の開け方や照明のオンオフを工夫すると、使うエネルギーが目に見えて減るわけです。このように、建物そのものを教材に使った環境教育は、建物をつくる設計の仕事と親和性が高いと思いますね。