
太陽光・風力などの発電量は自然に左右され易く変動型再エネと言われています。わが国では、FIT制度など国の後押しもあり変動型の再エネが普及・拡大していますが、一方で電力システムの運用は難しくなるといった課題もあります。電気を「つくる/つかう」といった需給のバランスだけでなく、周波数・電圧・慣性力といった「電力品質」をどう維持するかも重要になるからです。こうした課題に対して、送電網の整備・強化、系統用蓄電池、需要側における調整力の確保(デマンドレスポンス等)など複数のアプローチが検討されています。その中で、水素(再エネ電力を使って製造されるCO2フリー水素を含む)は、これらの課題を解決する選択肢の一つになり得る手段として注目されています。このコラムでは、水素を巡る背景を整理したうえで、CO2フリー水素のサプライチェーンを俯瞰し、成立条件やボトルネック、検討上の論点を概観します。
水素が期待される背景
電力自由化を踏まえたカーボンニュートラル化(再エネの普及拡大)による「電力インフラ」の課題
そのような状況下で、再エネ比率が高まると、2025年にスペイン・ポルトガルで発生した大規模停電のようなリスクも高まります。これまで、火力発電所が担ってきた調相機能(周波数・電圧・慣性力などの電力品質を維持する)を持つ電源を瞬動予備力として一定割合で保持しておくことは重要になります。世界の国々における総電源容量に対する電源別の割合を図に示しますが、火力や水力といった瞬動予備力の電源が、一定割合確保されていることが分かります。

(各国の統計情報等から日建設計総合研究所にて独自に整理・作成)
- 余剰再エネを受け止める機能(需要側)
- 発電燃料として系統を支える機能(供給側)
といった2つの機能を担うことができ、他の調整手段との比較(コスト、インフラ制約など)を踏まえつつ、次に示す国産のエネルギーとしても期待されています。
CO2フリー水素はどう作るのか
—— 製造方法と“CO2フリー”の意味
- 水の電気分解
- 石炭燃焼等の副産物として取り出す(副生水素)
- 化石燃料(天然ガス等)の改質
などが挙げられます。脱炭素の観点から主流になりつつあるのが、再エネ電力を用いた電気分解による水素(CO2フリー水素)です。ここでのポイントは、単に「電気分解だからクリーン」ではなく、どの電源で電気分解を行うか、そしてその環境価値をどう担保するか(認証・トレーサビリティ)が重要な点です。
CO2フリー水素サプライチェーン
—— 全体像(どこで価値が生まれるか)
- 電源(再エネ・余剰電力)
水電解に必要な電源として、安価になりつつある再エネ電力全般に加え、需給バランスから生じる余剰再エネ電力など、コスト低減に資する電源が増えています。 - 製造(水電解装置)
設備費、稼働率、電力価格がコストに直結します。電解装置の導入だけでなく、どのような運用(稼働のさせ方)を設計するかが競争力を左右します。 - 貯蔵・輸送(液化、アンモニア、パイプライン等)
需要規模や距離に応じて最適解が変わります。小規模なら車両搬送、大規模ならパイプラインやアンモニア等のキャリア活用が検討対象になります。 - 利用先(需要:どこが最初に立ち上がるか)
需要規模の大きい順に見ると、
・火力発電所の燃料転換(混焼・専焼)
・産業用途(副生水素からの転換など)
・交通用途(特にHDV向け、水素ステーション等)
・民生用途(熱供給プラント、建物、燃料電池等)
など多岐にわたります。さらに、将来技術として、火力の調相機能の燃料に水素を活用することや、メタネーションによるカーボンリサイクル等の実証も進んでおり、サプライチェーンは“燃料供給”にとどまらず、系統・産業構造の変化と強く結びついていきます。




