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再エネ拡大時代の電力インフラ品質維持とCO2フリー水素への期待

太陽光・風力などの発電量は自然に左右され易く変動型再エネと言われています。わが国では、FIT制度など国の後押しもあり変動型の再エネが普及・拡大していますが、一方で電力システムの運用は難しくなるといった課題もあります。電気を「つくる/つかう」といった需給のバランスだけでなく、周波数・電圧・慣性力といった「電力品質」をどう維持するかも重要になるからです。こうした課題に対して、送電網の整備・強化、系統用蓄電池、需要側における調整力の確保(デマンドレスポンス等)など複数のアプローチが検討されています。その中で、水素(再エネ電力を使って製造されるCO2フリー水素を含む)は、これらの課題を解決する選択肢の一つになり得る手段として注目されています。このコラムでは、水素を巡る背景を整理したうえで、CO2フリー水素のサプライチェーンを俯瞰し、成立条件やボトルネック、検討上の論点を概観します。

水素が期待される背景

脱炭素の中心は再エネ拡大と電化ですが、それだけでは温室効果ガス削減が難しい領域が残ります。例えば、鉄鋼・化学・石油精製などの高温熱利用、電池で代替しにくい長距離輸送、季節をまたぐエネルギー調整・貯蔵といった分野です。水素は、こうした領域において、発電や熱製造の燃料として、また化石燃料製造の原料としても使える柔軟性を持ちます。さらに「水と電気があれば産地を問わない」エネルギー源になり得る点は、エネルギー資源の乏しいわが国において、安全保障や産業政策の観点からも重要な論点となっています。

電力自由化を踏まえたカーボンニュートラル化(再エネの普及拡大)による「電力インフラ」の課題

我が国は、2016年の電力全面自由化により、十分な供給力を維持する発送電一貫体制から、発送電を分離して合理的な電源投資へと大きく舵を切っています。また、カーボンニュートラル化に伴って、二酸化炭素を排出しない電気のニーズが高まり、発電会社が保有する二酸化炭素を排出する電源(石炭・石油火力発電所など)は、稼働停止や廃止を余儀なくされています。

そのような状況下で、再エネ比率が高まると、2025年にスペイン・ポルトガルで発生した大規模停電のようなリスクも高まります。これまで、火力発電所が担ってきた調相機能(周波数・電圧・慣性力などの電力品質を維持する)を持つ電源を瞬動予備力として一定割合で保持しておくことは重要になります。世界の国々における総電源容量に対する電源別の割合を図に示しますが、火力や水力といった瞬動予備力の電源が、一定割合確保されていることが分かります。

図:各国の発電設備の総容量に対する電源別の構成割合(各国の統計情報等から日建設計総合研究所にて独自に整理・作成)
図:各国の発電設備の総容量に対する電源別の構成割合
(各国の統計情報等から日建設計総合研究所にて独自に整理・作成)
欧州のように隣国間で電力融通ができない我が国のような島国では、再エネ比率の上昇を見据えつつ、電力システムの安定運用をどのように確保するかは、極めて重要な課題です。水素は、これらの課題に対して、

  • 余剰再エネを受け止める機能(需要側)
  • 発電燃料として系統を支える機能(供給側)

といった2つの機能を担うことができ、他の調整手段との比較(コスト、インフラ制約など)を踏まえつつ、次に示す国産のエネルギーとしても期待されています。

CO2フリー水素はどう作るのか
—— 製造方法と“CO2フリー”の意味

天然水素の調査など新たな資源獲得に関する取り組みもありますが、現在、水素は水やメタンなどから分離して取り出す方法が主流です。その代表的な製造方法として、

  1. 水の電気分解
  2. 石炭燃焼等の副産物として取り出す(副生水素)
  3. 化石燃料(天然ガス等)の改質

などが挙げられます。脱炭素の観点から主流になりつつあるのが、再エネ電力を用いた電気分解による水素(CO2フリー水素)です。ここでのポイントは、単に「電気分解だからクリーン」ではなく、どの電源で電気分解を行うか、そしてその環境価値をどう担保するか(認証・トレーサビリティ)が重要な点です。

CO2フリー水素サプライチェーン
—— 全体像(どこで価値が生まれるか)

CO2フリー水素のサプライチェーンは、概ね以下の要素で構成されます。

  1. 電源(再エネ・余剰電力)
    水電解に必要な電源として、安価になりつつある再エネ電力全般に加え、需給バランスから生じる余剰再エネ電力など、コスト低減に資する電源が増えています。
  2. 製造(水電解装置)
    設備費、稼働率、電力価格がコストに直結します。電解装置の導入だけでなく、どのような運用(稼働のさせ方)を設計するかが競争力を左右します。
  3. 貯蔵・輸送(液化、アンモニア、パイプライン等)
    需要規模や距離に応じて最適解が変わります。小規模なら車両搬送、大規模ならパイプラインやアンモニア等のキャリア活用が検討対象になります。
  4. 利用先(需要:どこが最初に立ち上がるか)
    需要規模の大きい順に見ると、

    ・火力発電所の燃料転換(混焼・専焼)
    ・産業用途(副生水素からの転換など)
    ・交通用途(特にHDV向け、水素ステーション等)
    ・民生用途(熱供給プラント、建物、燃料電池等)

    など多岐にわたります。さらに、将来技術として、火力の調相機能の燃料に水素を活用することや、メタネーションによるカーボンリサイクル等の実証も進んでおり、サプライチェーンは“燃料供給”にとどまらず、系統・産業構造の変化と強く結びついていきます。
図:CO2フリー水素に関するサプライチェーンの概観
図:CO2フリー水素に関するサプライチェーンの概観(作成:日建設計総合研究所)
CO2フリー水素の普及は、電解装置の性能や再エネ導入量だけで決まるものではありません。電力システムの安定化、余剰再エネの取り扱い、輸送・貯蔵インフラ投資、需要側の設備更新、そしてコスト差の負担設計など、制度・市場・インフラを含む論点整理が求められます。水素を万能な解として捉えるのではなく、適用可能性が高い領域や成立条件を見極めながら、サプライチェーン全体を設計課題として捉えることが、今後の検討の出発点になります。

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