
2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。地球温暖化対策への社会的要請の高まりを背景に、日建設計総合研究所(NSRI)は、建築分野におけるカーボンニュートラルに向けたコンサルティングを展開しています。それらの多くに携わっている本堂上席研究員、安達研究員に話を聞きました。
柄澤: 建築分野におけるカーボンニュートラルに向けた取組みについて、概要を教えていただけますか。
本堂: カーボンニュートラルの実現に向けて、企業が取り組む保有施設の省CO2化・モニタリング・環境性能評価等をサポートするとともに、TCFD(Task Force on Climate-related FinancialDisclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)やSBT(Science Based Targets:企業が設定する温室効果ガス排出削減目標)などの社会的要請に対応し、保有資産の環境価値と企業価値の向上を図っています。
企業を評価する仕組みとして、GRESB(GlobalReal Estate Sustainability Benchmark:グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク)があり、エネルギー、温室効果ガスに関する評価項目は、TCFDやSBTと共通しています。これらの取組みを支援するなど、建築の価値向上、ひいては企業価値向上に関わるコンサルティングを展開しています。
柄澤: 東京都における都市開発諸制度の活用時をはじめ、都市開発においては、基本設計前のボリュームしか決まっていない都市計画協議の段階で、環境性能の担保が必要となります。開発事業者側のメリットが見えにくい段階で、建築設計の与件が決まる中、設備設計においては何を留意したらよいでしょうか。
本堂: CASBEE(建築環境総合性能評価システム)やLEED(グリーンビルディング認証)など、たくさんの環境認証制度を手掛ける中で、データの蓄積やノウハウも持っています。都市計画協議など、企画段階でも、注意すべき点は大体目星がつきます。どういった仕様にすればこのランクの認証が取れる、という勘所は押さえられるので、そこは経験を活かした助言が可能です。
安達: ボリュームだけでの企画段階で環境性能を求められる際、外観をこだわりたいのか否かで、建築計画のアプローチが変わります。例えば、外皮をガラスカーテンウォールとするならば、相当な費用がかかる前提で取り組む必要があります。一方、窓を小さくすることができるケースは環境負荷を小さくすることができます。
ガラスでも庇や外壁ルーバー等を設置することにより環境性能を高めるなど、これまでのケーススタディや社内で蓄積した実績の知見からアドバイスできることはあります。クライアントの要望に応じた対策や提案が可能です。クライアントと共に、デザインや環境性能を含めて検討するワークショップを実施することもあります。
本堂: カーボンニュートラルの実現に向けて、企業が取り組む保有施設の省CO2化・モニタリング・環境性能評価等をサポートするとともに、TCFD(Task Force on Climate-related FinancialDisclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)やSBT(Science Based Targets:企業が設定する温室効果ガス排出削減目標)などの社会的要請に対応し、保有資産の環境価値と企業価値の向上を図っています。
企業を評価する仕組みとして、GRESB(GlobalReal Estate Sustainability Benchmark:グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク)があり、エネルギー、温室効果ガスに関する評価項目は、TCFDやSBTと共通しています。これらの取組みを支援するなど、建築の価値向上、ひいては企業価値向上に関わるコンサルティングを展開しています。
柄澤: 東京都における都市開発諸制度の活用時をはじめ、都市開発においては、基本設計前のボリュームしか決まっていない都市計画協議の段階で、環境性能の担保が必要となります。開発事業者側のメリットが見えにくい段階で、建築設計の与件が決まる中、設備設計においては何を留意したらよいでしょうか。
本堂: CASBEE(建築環境総合性能評価システム)やLEED(グリーンビルディング認証)など、たくさんの環境認証制度を手掛ける中で、データの蓄積やノウハウも持っています。都市計画協議など、企画段階でも、注意すべき点は大体目星がつきます。どういった仕様にすればこのランクの認証が取れる、という勘所は押さえられるので、そこは経験を活かした助言が可能です。
安達: ボリュームだけでの企画段階で環境性能を求められる際、外観をこだわりたいのか否かで、建築計画のアプローチが変わります。例えば、外皮をガラスカーテンウォールとするならば、相当な費用がかかる前提で取り組む必要があります。一方、窓を小さくすることができるケースは環境負荷を小さくすることができます。
ガラスでも庇や外壁ルーバー等を設置することにより環境性能を高めるなど、これまでのケーススタディや社内で蓄積した実績の知見からアドバイスできることはあります。クライアントの要望に応じた対策や提案が可能です。クライアントと共に、デザインや環境性能を含めて検討するワークショップを実施することもあります。

柄澤: デザインも含めて環境性能を考えるために、計画の初期段階において、都市計画と環境分野との話し合いができると有意義ですね。
企業ブランディングとして環境に取り組む企業もある一方、一般的なランクでも良いと考える企業もあります。費用対効果としてどこまで取り組むべきか、実態としてはどうなのでしょう。
本堂: 費用対効果の観点からはバランスできないと思います。ただし、従来は費用が足りないという指摘が多かったのですが、気象災害が頻発し、豪雨災害により甚大な被害が発生している昨今の状況を踏まえ、温暖化や環境に対する企業の危機感は募ってきています。費用よりも、危機感の方が優先されるのが近年の傾向といえます。
今、環境問題に取り組まねば、取り返しのつかないことになるという意識と、環境に取り組む企業が金融機関等からも評価され差別化されるトレンドがあり、環境重視の取組みが加速しています。
柄澤: 日本全体として、社会課題解決に向けて環境への取組みが強化されているのですね。国際的な指標を俯瞰した場合、日本にはどのような強みがあるのでしょうか。
本堂: いずれの指標でも日本企業は上位に来ています。指標の検討をきっかけにして環境への取組みを強化するケースもありますね。
安達: RE100(使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ)、GRESBなどの支援において、膨大なデータを集めて計算する必要があります。海外では、データをきっちり集める部分において、ハードルが高い可能性があります。
日本では多くの企業がフォーマットに合わせてデータを整備しています。保有ビルのデータカバー率も重視されています。たくさんビルを持っていてもデータが集まらなければ評価が下がる面もあり、ランク評価にはきっちりデータを揃えられる几帳面な国民性も影響しているのではないかと思います。
本堂: 日本企業のGRESB評価の平均を見ると、グリーンビル認証、データレビュー、エネルギー面のパフォーマンス指標が低い傾向があり、今後のニーズの伸びが見込まれそうです。
企業ブランディングとして環境に取り組む企業もある一方、一般的なランクでも良いと考える企業もあります。費用対効果としてどこまで取り組むべきか、実態としてはどうなのでしょう。
本堂: 費用対効果の観点からはバランスできないと思います。ただし、従来は費用が足りないという指摘が多かったのですが、気象災害が頻発し、豪雨災害により甚大な被害が発生している昨今の状況を踏まえ、温暖化や環境に対する企業の危機感は募ってきています。費用よりも、危機感の方が優先されるのが近年の傾向といえます。
今、環境問題に取り組まねば、取り返しのつかないことになるという意識と、環境に取り組む企業が金融機関等からも評価され差別化されるトレンドがあり、環境重視の取組みが加速しています。
柄澤: 日本全体として、社会課題解決に向けて環境への取組みが強化されているのですね。国際的な指標を俯瞰した場合、日本にはどのような強みがあるのでしょうか。
本堂: いずれの指標でも日本企業は上位に来ています。指標の検討をきっかけにして環境への取組みを強化するケースもありますね。
安達: RE100(使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブ)、GRESBなどの支援において、膨大なデータを集めて計算する必要があります。海外では、データをきっちり集める部分において、ハードルが高い可能性があります。
日本では多くの企業がフォーマットに合わせてデータを整備しています。保有ビルのデータカバー率も重視されています。たくさんビルを持っていてもデータが集まらなければ評価が下がる面もあり、ランク評価にはきっちりデータを揃えられる几帳面な国民性も影響しているのではないかと思います。
本堂: 日本企業のGRESB評価の平均を見ると、グリーンビル認証、データレビュー、エネルギー面のパフォーマンス指標が低い傾向があり、今後のニーズの伸びが見込まれそうです。
柄澤: 制度によって義務化されている認証取得と、自主的な認証取得があると思います。企業の自主的な認証取得ニーズが高まっていますか。
本堂: 近年の動向としては、企業価値向上のために取り組む企業が増えてきています。企業価値をどこでPRするか色々な方法がある中で、環境認証制度やGRESBの活用が増えています。それらをやらなければ差別化されて本業にも影響があるとされています。企業の持続的成長のため、企業の顧客から選ばれ続けるためにも重要視されているのです。
本堂: 近年の動向としては、企業価値向上のために取り組む企業が増えてきています。企業価値をどこでPRするか色々な方法がある中で、環境認証制度やGRESBの活用が増えています。それらをやらなければ差別化されて本業にも影響があるとされています。企業の持続的成長のため、企業の顧客から選ばれ続けるためにも重要視されているのです。



柄澤: 環境性能の客観的評価は、建築の規模に左右されるのでしょうか。
安達: 小規模な建築でも対策は可能です。戸建て住宅や集合住宅について、どの対策を実施すれば、どの程度エネルギー消費が下がるのかを検討しています。小規模な建築から大規模なものまで、ZEB Oriented(ZEBに向けたファーストステップとして定義されたもの)にした場合、どの程度コストがかかるか、コストをかけずにどこまでできるか、といったケーススタディを実施しています。大枠でそれらの傾向をつかんでいます。
本堂: NSRIの強みは、クライアントに対して、カーボンニュートラル、GRESB等をはじめ、総合的にコンサルティングサービスを提供できることです。
安達: GRESBや国内の環境認証制度など様々な指標があります。NSRIでは一通りすべて手掛けており、多様な指標に対応できす。地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、カーボンニュートラル化に取り組んでまいります。
安達: 小規模な建築でも対策は可能です。戸建て住宅や集合住宅について、どの対策を実施すれば、どの程度エネルギー消費が下がるのかを検討しています。小規模な建築から大規模なものまで、ZEB Oriented(ZEBに向けたファーストステップとして定義されたもの)にした場合、どの程度コストがかかるか、コストをかけずにどこまでできるか、といったケーススタディを実施しています。大枠でそれらの傾向をつかんでいます。
本堂: NSRIの強みは、クライアントに対して、カーボンニュートラル、GRESB等をはじめ、総合的にコンサルティングサービスを提供できることです。
安達: GRESBや国内の環境認証制度など様々な指標があります。NSRIでは一通りすべて手掛けており、多様な指標に対応できす。地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、カーボンニュートラル化に取り組んでまいります。
