
日建設計総合研究所(NSRI)では、社会課題解決のために自主的・戦略的に研究を行うことが出来る仕組み『自主研究』に取り組んでいます。その自主研究の中からピックアップしてご紹介する第25弾です。興味がある、協働したい、という方からのご連絡をお待ちしております。
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水辺空間は地域の憩い・交流や観光資源として大きな可能性を秘めています。水辺空間の活用や整備に関する地域の関心を高めるためには、どのようなことが必要でしょうか。本記事では、水辺空間を活用するにあたって重要視されることがらについて既往研究の整理を行い、今後の研究の観点をまとめました。
水辺空間は地域の憩い・交流や観光資源として大きな可能性を秘めています。水辺空間の活用や整備に関する地域の関心を高めるためには、どのようなことが必要でしょうか。本記事では、水辺空間を活用するにあたって重要視されることがらについて既往研究の整理を行い、今後の研究の観点をまとめました。
本研究の背景
近年、公共事業の中で「土木施設」的な捉え方をされることが多かった河川や調整池について、まちづくりにとって重要な「空間」として水辺空間を捉え直し、官民双方でより広く活用していこうとする考え方が広がっています。

一方で、身近な河川が埋められたり、水難事故の防止のために河川で遊ばなくなったりと、近隣河川における具体的な水辺の利用経験や水辺整備への参画経験を持つ人は減少していると考えられます。(Sakamoto et al., 2018)(福嶋&内田, 2018)
本研究の目的
「水辺空間活用の良い経験」が水辺の利用頻度や水辺整備への参画意思を高めることが、複数の既往研究において指摘されています。(大塚ら, 2014)(長谷川ら, 2017)また、永井ら(2009)は、河川空間の利活用が周辺地域のまちづくりに波及していくために、以下の内容が重要だと指摘しています。
①河川・人・まちのつながりを重視する
②将来の姿(目標)を明確にする
③情報を共有する
④地域資源(既存ストックや人材)を有効活用する
⑤地域のアイデアを実現する
上記重要項目①~⑤のうち、筆者はこれまで、上記の「③情報を共有する」に着目して、国土交通省が推進する「ミズベリング」プロジェクトの事例研究を行ってきました。
(埼玉県さまにヒアリングのご協力を頂いた研究内容の一部)
しかし、ヒアリングの中で官民双方から聞かれた課題として、下記のようなものがありました。
1)「水辺空間活用の取組を実施したくても、どのような場所で開催すれば人が来てくれるのか分からない」
2)「水辺空間活用の取組を実施しても、実際に水辺空間が良い形で使われているのか分からない」
実は上記の2つの課題は鶏と卵の関係になっており、
1)手探りで行われるイベントが多く、またイベントに関わらない個人による利用(自由使用)もあるため、水辺空間活用における来場者数等の管理が行われない
↓
2)水辺空間活用について実績の測定が不足しており、理想の活用状況と実際の活用状況のギャップについて要因分析ができない
↓
3)理想に近づけるために、具体的にどのように開催すれば人が来てくれるのか見当が付けられない
↓
1)イベントを手探りで開催せざるを得ない
という状況から抜け出しにくくなっています。
そこで本研究では、「水辺空間の活用や整備に関する地域の関心を高める」ことを目的として以下2点に着目します。
①『水辺空間活用の良い経験』とは何か?
②良い経験を享受する水辺空間利用者が増える仕掛けは何か?
これらの問いを明らかにするため、「水辺空間活用の取組の実績データ」を収集・分析して、活用実態の可視化を行い、今後の水辺空間活用の推進に資する情報提供を目指します。
①河川・人・まちのつながりを重視する
②将来の姿(目標)を明確にする
③情報を共有する
④地域資源(既存ストックや人材)を有効活用する
⑤地域のアイデアを実現する
上記重要項目①~⑤のうち、筆者はこれまで、上記の「③情報を共有する」に着目して、国土交通省が推進する「ミズベリング」プロジェクトの事例研究を行ってきました。
(埼玉県さまにヒアリングのご協力を頂いた研究内容の一部)
しかし、ヒアリングの中で官民双方から聞かれた課題として、下記のようなものがありました。
1)「水辺空間活用の取組を実施したくても、どのような場所で開催すれば人が来てくれるのか分からない」
2)「水辺空間活用の取組を実施しても、実際に水辺空間が良い形で使われているのか分からない」
実は上記の2つの課題は鶏と卵の関係になっており、
1)手探りで行われるイベントが多く、またイベントに関わらない個人による利用(自由使用)もあるため、水辺空間活用における来場者数等の管理が行われない
↓
2)水辺空間活用について実績の測定が不足しており、理想の活用状況と実際の活用状況のギャップについて要因分析ができない
↓
3)理想に近づけるために、具体的にどのように開催すれば人が来てくれるのか見当が付けられない
↓
1)イベントを手探りで開催せざるを得ない
という状況から抜け出しにくくなっています。
そこで本研究では、「水辺空間の活用や整備に関する地域の関心を高める」ことを目的として以下2点に着目します。
①『水辺空間活用の良い経験』とは何か?
②良い経験を享受する水辺空間利用者が増える仕掛けは何か?
これらの問いを明らかにするため、「水辺空間活用の取組の実績データ」を収集・分析して、活用実態の可視化を行い、今後の水辺空間活用の推進に資する情報提供を目指します。
今回ご紹介する水辺空間活用に関するデータ
水辺空間活用の推進に資する情報としては、様々な種類がありますが、今回はその中から「河川空間利用実態調査」についてご紹介します。
河川空間利用実態調査とは?
1990年度から実施の「河川水辺の国勢調査」の一部として、 5年に1度(2010年度より前は3年に1度)行われています。全国一級水系(109水系)の国直轄区間を対象に、統一された調査日・調査フォーマットで河川空間の利用者数・利用形態・利用場所が調査されています。報告書からは「地方別利用者数」「季節別利用者数」「利用形態」「利用場所」を入手可能です。さらに非公表の調査報告書を用いた既往研究では、「利用者数」「イベント実施回数」「利用状況写真(任意提出)」を用いて、利用形態の細分化と、利用形態に影響を及ぼす要因の分析が行われています。(中村ら, 2022)(鶴田&中村, 2021)
今後の研究に向けて
水辺空間活用の取組の実績データについて、「河川空間利用実態調査」と、人流データや独自調査データを組み合わせた収集・分析を進め、水辺空間活用の推進に資する提言を行っていきます。
文献
- Sakamoto, T., Shirakawa, N., & others. (2018). Nationwide investigation of citizen-based river groups in Japan: their potential for sustainable river management. International Journal of River Basin Management, 16(2), 203–217.
- 福嶋 恭正・内田 敬(2018):市街地内中小河川における多自然化・親水整備の事後評価-利用実態に基づく分析,土木学会論文集D3(土木計画学),Vol.74, No.5, pp. I_117–I_128.
- 大塚 佳臣・荒巻 俊也(2014):アソシエーション分析を用いた水辺経験と都市河川の意識との関連評価,土木学会論文集G(環境), 70(7), III_365–III_372.
- 長谷川 泰洋・橋本 啓史・竹中 克行(2017):都市河川における文化的サービス享受の意思決定要因,ランドスケープ研究(オンライン論文集), 10, 176–181.
- 永井 儀男・児玉 好史・佐合 純造・羽原 伸・井上 英彦(2009):身近な河川空間の利活用に関する先進事例について,リバーフロント研究所 研究所報告, 第20号, pp.132–143.
- 国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課(2021):令和元年度 河川水辺の国勢調査結果〔河川版〕(河川空間利用実態調査編),https://www.nilim.go.jp/lab/fbg/ksnkankyo/mizukokuweb/kuukan/H31_kukanriyou_kasen.pdf.
- 中村 祐太郎ほか(2022):水辺空間利用の目標設定手法に関する研究,国立研究開発法人土木研究所,令和3年度成果報告書.
- 鶴田 浩之・中村 祐太郎(2021):河川水辺の国勢調査データを用いた河川の文化的サービスの特性把握,河川技術論文集,第27巻.



