
持続可能な社会の実現には、環境に配慮した農業のあり方が不可欠です。私たちは、農家が直面する現状や課題、そして環境にやさしい農法について学ぶため、新潟県燕市で米農家を営む松縄さんのご協力のもと、「サス米作り」と題したプロジェクトを立ち上げました。 この取り組みでは、地球温暖化の原因の一つである温室効果ガス、特にメタンガスの発生を抑制する工程を導入し、サステナブルな米作りに挑戦しています。実際の田んぼでの作業を通じて、環境負荷を軽減する農法の可能性を探るとともに、持続可能な農業の未来について考える機会となっています。
米農家さんの現状と課題を知る
1.米作りの持続可能性について
最近話題になっている米価格の高騰を踏まえつつ、米農家さんは一定の作付面積以上でないと黒字化が難しいこと、機械の購入・維持管理にも多額の費用が発生する現状についてお話いただきました。現在周辺の田畑では、国等の補助金を活用し、農地の区画整理により用水路や道路などの整備を行う「ほ場整備」が進められており、今後「ほ場整備」により田んぼが大区画化されることで農作業の効率化が実現する点について意見交換しました。「ほ場整備」によって農作業自体の効率化が成される一方で、例えばもともと離れた場所に分散して複数の田んぼを持っていた農家さんは大区画化によってさらに離れた位置に割り振られてしまうこともあるそうです。
2.米作りと温室効果ガスの排出抑制

米づくりにおける水田からのメタン発生の仕組み、「溝切り」と「中干し」によるメタン排出抑制の効果についてお話を伺いました。IPCC第6次報告書によると、メタンの100年GWPは約27、つまりメタンはCO2の27倍の温室効果を持っており、メタン排出量の削減は重要な課題となっています。また、日本においては、全メタン排出量のうち43.8%※1が稲作によって生じていることが報告されています。
※1 出典:日本国温室効果ガスインベントリ報告書(2025年)
水田では、土壌に含まれる有機物や、肥料として与えられた有機物を分解して生じる二酸化炭素・酢酸などから、メタン生成菌の働きによりメタンが生成されます。メタン生成菌は酸素のない環境でだけ活発になる嫌気性菌であるため、田んぼから水を抜くこと(落水)で土壌に酸素が行き渡り、メタン生成菌の働きを抑制することができます。田んぼを落水する工程のことを「中干し」と呼び、この「中干し」期間を7日間程度延長すると、コメ収量への影響を抑えつつ、メタンの発生を平均で30%程度削減※2されることが報告されています。また、収穫されるお米に対しても根本付近の過剰な枝分かれを防ぐことで穂に十分な栄養が届き、栄養不足による収量や品質の低下の防止に繋がります。
※2 出典:農業・食品産業技術総合研究機構 研究成果情報
日本では温室効果ガスの排出削減・吸収量を国が認証し、取引を可能とする「J-クレジット」制度が存在します。「J-クレジット制度」の施策の一つとして中干し期間をその水田の直近2か年以上の実施日数の平均より7日間以上延⾧することで、水田の所在地域・排水性・施用有機物量(稲わら・堆肥)に応じた排出削減量(CO2相当)を 「クレジット」として認定することができます。これによって、農家さんは排出削減量に応じた収益を得ることができますが、クレジット取得のために厳密な生産管理記録や写真などの証跡の管理が必要になるそうです。
※1 出典:日本国温室効果ガスインベントリ報告書(2025年)
水田では、土壌に含まれる有機物や、肥料として与えられた有機物を分解して生じる二酸化炭素・酢酸などから、メタン生成菌の働きによりメタンが生成されます。メタン生成菌は酸素のない環境でだけ活発になる嫌気性菌であるため、田んぼから水を抜くこと(落水)で土壌に酸素が行き渡り、メタン生成菌の働きを抑制することができます。田んぼを落水する工程のことを「中干し」と呼び、この「中干し」期間を7日間程度延長すると、コメ収量への影響を抑えつつ、メタンの発生を平均で30%程度削減※2されることが報告されています。また、収穫されるお米に対しても根本付近の過剰な枝分かれを防ぐことで穂に十分な栄養が届き、栄養不足による収量や品質の低下の防止に繋がります。
※2 出典:農業・食品産業技術総合研究機構 研究成果情報
日本では温室効果ガスの排出削減・吸収量を国が認証し、取引を可能とする「J-クレジット」制度が存在します。「J-クレジット制度」の施策の一つとして中干し期間をその水田の直近2か年以上の実施日数の平均より7日間以上延⾧することで、水田の所在地域・排水性・施用有機物量(稲わら・堆肥)に応じた排出削減量(CO2相当)を 「クレジット」として認定することができます。これによって、農家さんは排出削減量に応じた収益を得ることができますが、クレジット取得のために厳密な生産管理記録や写真などの証跡の管理が必要になるそうです。
「サス米作り」に挑戦

田植え
5月に「田植え」作業を実施。各自約50mの距離を、機械を使わず手で苗を直接植えていきました。全員で励ましあいながらなんとか約1反(約1,000㎡)の田んぼに「田植え」を完了しました。

溝切り
6月には「溝切り」を実施。後日行う「中干し」行程の排水がスムーズになるよう、田んぼの排水溝につなげるように溝を切っていく作業です。メタン排出を抑制するためには、この「溝切り」工程が欠かせません。
今回はエンジン付きで、座席に乗ったまま溝切りができる乗用式の溝切り機を使用しました。最初はまっすぐ溝を切ることに苦戦しましたが、楽しみながら作業を行い、終盤にはまっすぐな溝を作ることができました。
今回はエンジン付きで、座席に乗ったまま溝切りができる乗用式の溝切り機を使用しました。最初はまっすぐ溝を切ることに苦戦しましたが、楽しみながら作業を行い、終盤にはまっすぐな溝を作ることができました。
サス米作りを終えて
慣れない作業で農作業の大変さを知った後は、新潟県のおいしい地元料理とお酒を堪能しながらその日に取り組んだ作業の感想を語り合いました。また、座学や作業に加えて、食事を交わしながら農家さんのお話を伺うことで農業に対する関心や理解がより深まりました。この後、9月下旬に無事「サス米」の収穫をしていただきました。執筆時はまだ実際に収穫されたお米を見てはいませんが、今後収穫されたお米を間近で見て、実際に食べる瞬間を所員一同、楽しみにしています。
最後に、本活動の推進にあたり、多大なるご協力を賜りました米農家の松縄さんに深く感謝申し上げます。
最後に、本活動の推進にあたり、多大なるご協力を賜りました米農家の松縄さんに深く感謝申し上げます。




