
スマートビルディングとは?
デジタル技術の急速な発展に伴い、クラウド・IoT・AIといった要素技術を活用し、より高度な省エネルギー化や快適性・利便性の向上を実現する「スマートビル」が普及しています。スマートビルの定義には団体ごとに要求水準の差があり、世界的にも統一された定義は存在しません。日本では、情報処理推進機構(IPA)が2023年4月に「スマートビル総合ガイドライン」を策定し、スマートビルを以下のように定義しています。

出典:スマートビルガイドライン補足説明資料、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)、デジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)、スマートビルプロジェクト、https://www.ipa.go.jp/digital/architecture/Individual-link/ps6vr7000001x8o0-att/smartbuilding_guideline_appendix.pdf
この定義から、スマートビルには、単に建物の制御を自動化するだけでは不十分であり、ビル外部のアプリケーションやモビリティ、他のデータ基盤などとも連携し、サービスを提供していることが求められます。また、センサーを用いて膨大なデータを収集・蓄積し、デジタルツインなどの技術を活用した制御が可能であることも重要な要素です。さらに、複数のビル間で連携し、より広域にサービスを展開できることも必要とされており、これらすべてを実現するために、今後は社会全体の価値向上に向け、「繋がりの拡張」が求められています。
スマートビルディングの発展
2000年代にBACnetやLonWorksといったオープンプロトコルが普及したことで、BACS※1の普及と標準化が進展しました。さらに2010年代半ば以降、パブリッククラウド※2の一般化に伴い、設備制御システムへのクラウド導入も本格化していきました。また、IoT技術の進歩により、建物内の多様な状態情報をデータとして収集・活用する基盤が整い、エネルギー管理、空調制御、照明制御、セキュリティ、利用者サービスなど多岐にわたる分野で応用が進んでいます。
※1:建物自動制御システム(Building Automation and Control System)
※2:インターネットを通じてクラウドコンピューティング環境を一般に提供するサービス
※1:建物自動制御システム(Building Automation and Control System)
※2:インターネットを通じてクラウドコンピューティング環境を一般に提供するサービス
欧州におけるスマートビル指標
スマートビルの普及に伴い、建物のスマート化を測る評価指標の開発が進められています。欧州では建物のスマート化対応度を評価する公的指標として、SRI(Smart Readiness Indicator)制度が導入されています。SRI制度は、EUが枠組みを構築し、2021年から運用可能となりました。現在では一部のEU加盟国がテスト段階で運用を開始している状況です。また、欧州委員会は、2027年6月までに「空調・換気システムの有効定格出力が290kWを超える非住宅建物」へSRI制度を適用することを義務付ける委任法を採択する計画となっています。
SRIは「居住者のニーズへの対応(健康、快適、幸福など)」、「エネルギー効率の最適化」、「エネルギーグリッドとの相互作用対応」の3つの観点で評価されます。また、9つのサービスドメイン(①暖房、②冷房、③給湯、④換気、⑤照明、⑥外皮、⑦電気、⑧EV充電、⑨監視・制御)ごとに3つの観点を分解した7つのインパクト基準(①省エネ性、②グリッド柔軟性・蓄電、③快適性、④利便性、⑤健康・ウェルビーイング、⑥保守・故障予測、⑦利用者への情報提供)で評価される構造となっています。
合計54項目の評価対象技術があり、それぞれの技術は機能レベルごとにスコアが設定されています。まず、これらのスコアから各サービスドメインのスコアが評価されます。次に、サービスドメインのスコアと重みづけ係数から、インパクト基準のスコアが評価されます。最後に、インパクト基準のスコアと重みづけ係数から、SRIスコアが評価される仕組みとなっています。
SRIは「居住者のニーズへの対応(健康、快適、幸福など)」、「エネルギー効率の最適化」、「エネルギーグリッドとの相互作用対応」の3つの観点で評価されます。また、9つのサービスドメイン(①暖房、②冷房、③給湯、④換気、⑤照明、⑥外皮、⑦電気、⑧EV充電、⑨監視・制御)ごとに3つの観点を分解した7つのインパクト基準(①省エネ性、②グリッド柔軟性・蓄電、③快適性、④利便性、⑤健康・ウェルビーイング、⑥保守・故障予測、⑦利用者への情報提供)で評価される構造となっています。
合計54項目の評価対象技術があり、それぞれの技術は機能レベルごとにスコアが設定されています。まず、これらのスコアから各サービスドメインのスコアが評価されます。次に、サービスドメインのスコアと重みづけ係数から、インパクト基準のスコアが評価されます。最後に、インパクト基準のスコアと重みづけ係数から、SRIスコアが評価される仕組みとなっています。

出典:Final report on the technical support to the development of a smart readiness indicator for buildings、European Union、https://op.europa.eu/en/publication-detail/-/publication/f9e6d89d-fbb1-11ea-b44f-01aa75ed71a1/language-en?WT.mc_id=Searchresult&WT.ria_c=37085&WT.ria_f=3608&WT.ria_ev=search

出典:Smart Readiness Indicator(SRI) Training package for building owners、European Commission、https://circabc.europa.eu/ui/group/54384127-eb1d-445e-9b6e-ef5ef14fe429/library/71725940-9ae2-4e81-920f-0de24fae7e4d/details?open=true
ドイツのスマートビルディング事例
建物のスマート化を測る公的指標のほかに、民間指標も普及しています。WiredScore社のSmartScoreは2021年に運用が開始された、アプリ・IoT・体験価値・技術基盤といったスマートビル機能を評価をする制度です。今回は、その中でも世界で初めてSmartScore:100%を達成したドイツの事例を紹介します。


出典:Hammerbrooklyn, Digital Pavilion、Art Invest Real Estate、 https://hammerbrooklyn.hamburg/quartier/digital-pavillon/

出典:Hammerbrooklyn, Digital Pavilion、Art Invest Real Estate、https://hammerbrooklyn.hamburg/quartier/digital-pavillon/
HAMMERBROOKLYN.DIGITAL PAVILIONは、2015年ミラノ万博の米国パビリオンを解体・輸送し、ハンブルクで再構築したアップサイクル建築であり、既存建物の再構築や再生材の利用を通してエンボディードカーボン※3の削減をしているサーキュラーエコノミー※4の代表的な事例です。
※3:資材調達・輸送・建設、メンテナンス・改修、解体・廃棄時に排出されるCO2
※4:資源を循環させ、廃棄物を出さない経済システム
※3:資材調達・輸送・建設、メンテナンス・改修、解体・廃棄時に排出されるCO2
※4:資源を循環させ、廃棄物を出さない経済システム

出典:Making-of-Film | Hammerbrooklyn.DigitalCampus(Humburg)、Art-Invest Real Estate、https://www.youtube.com/watch?v=CsQxUo_8TzA
建物内には、約3,000個のマルチセンサーが設置されており、データが収集・保存されています。また、ユーザーはビル用アプリを通じてデスク予約、室内環境の制御、入退室管理など建物のさまざまな機能を操作することが可能となっています。以下に、提供される機能を示します。

日本における政策・制度動向
日本においても建物価値の更なる向上に向け、スマートビルの普及や認証制度等が一層進むと考えられます。現時点では、日本独自の建物のスマート化を評価する公的指標は存在しませんが、「スマートビル総合ガイドライン」において、普及促進に向けたスマートビル認証・表彰制度の創設を目指す方針が明記されています。このような社会動向を踏まえると、IoTやAIなどの先端技術を活用した新しいサービスの提供や、建物のスマート化に資する取組みを社会全体で推進していくと考えています。
おわりに
日建設計総合研究所では、センサーやAI技術を活用し、お客様の所有建物における快適性とエネルギー効率の向上を支援しています。また、建物の環境価値向上のために、環境認証制度の取得支援も行っております。今後は、これらの知見を活かして、スマートビルの普及促進に向け、認証・表彰制度の創設等への貢献もできればと考えています。まずは、建物のスマート化や見える化、運用改善、環境認証に関するご相談からでも気軽にお問い合わせください。
参考文献
- 独立行政法人情報処理推進機構(2023年)「スマートビル総合ガイドライン」https://www.ipa.go.jp/digital/architecture/Individual-link/ps6vr70000016bsc-att/smartbuilding_comprehensive_guideline.pdf
- European Commission(2023)「Final report on the technical support to the development of a smart readiness indicator for buildings」https://op.europa.eu/en/publication-detail/-/publication/f9e6d89d-fbb1-11ea-b44f-01aa75ed71a1/language-en?WT.mc_id=Searchresult&WT.ria_c=37085&WT.ria_f=3608&WT.ria_ev=search



