
日建設計総合研究所(NSRI)は2026年度から新ビジネスドメイン「モビリティまちづくり」を立ち上げました。これまでのモビリティチームが取り組んできた政策提言や実証実験を継承発展させながら、自治体の交通戦略、施設計画や運営スキームづくりなど、実装フェーズのモビリティまちづくりを目指しています。ドメインリーダーの筧 文彦 上席研究員に話を聞きました。
人が街に出ることで地域の魅力が高まる
水澤: 新ドメインはどのような目標をもってスタートしたのでしょうか?
筧: 私たちが目指すのは、モビリティを活用して地域の魅力や価値を高め、住民の生活の質を向上させるまちづくりです。具体的には、自動運転技術やシェアモビリティによって自動車交通量の増加を抑えつつ移動の利便性を高め、車が占有していた面積を減らし人が歩きやすい街を実現したいと考えています。
一方で気になっているのが、コロナ禍の影響やライフスタイルの変化により日本人の外出率が近年いちじるしく低下していることです。人が外に出ないことで偶発的な出会いや賑わいが失われ、地域の魅力が低下していきます。「いかに街に出る人を増やすか」この課題を、交通とまちづくりの2つにまたがる視点で、政策提言から実装までサポートしていきます。
筧: 私たちが目指すのは、モビリティを活用して地域の魅力や価値を高め、住民の生活の質を向上させるまちづくりです。具体的には、自動運転技術やシェアモビリティによって自動車交通量の増加を抑えつつ移動の利便性を高め、車が占有していた面積を減らし人が歩きやすい街を実現したいと考えています。
一方で気になっているのが、コロナ禍の影響やライフスタイルの変化により日本人の外出率が近年いちじるしく低下していることです。人が外に出ないことで偶発的な出会いや賑わいが失われ、地域の魅力が低下していきます。「いかに街に出る人を増やすか」この課題を、交通とまちづくりの2つにまたがる視点で、政策提言から実装までサポートしていきます。

水澤: これまでのNSRIのモビリティ分野での実績を教えてください。
筧: 最近では自動運転の導入に関する国土交通省のガイドライン作成支援を行いました。従来、自動運転普及のための技術的なガイドラインや、まちづくりのガイドラインはたくさんある一方で、望ましい都市を実現するために自動運転をどう活用していくかという統合的な視点が抜け落ちていました。国土交通省の『都市空間における自動運転技術活用のポイント集』では、自動運転をうまく活用しながら歩行者が歩きやすい街をどうつくるか、基本的な考え方を示しました。
水澤: 自動運転の普及そのものが目的ではなく、それによって街を歩行者にとってより良く変えていくという視点ですね。
筧: 最近では自動運転の導入に関する国土交通省のガイドライン作成支援を行いました。従来、自動運転普及のための技術的なガイドラインや、まちづくりのガイドラインはたくさんある一方で、望ましい都市を実現するために自動運転をどう活用していくかという統合的な視点が抜け落ちていました。国土交通省の『都市空間における自動運転技術活用のポイント集』では、自動運転をうまく活用しながら歩行者が歩きやすい街をどうつくるか、基本的な考え方を示しました。
水澤: 自動運転の普及そのものが目的ではなく、それによって街を歩行者にとってより良く変えていくという視点ですね。

筧: そうです。もうひとつ国土交通省による「モビリティハブ」についての方策検討やリーフレット案作成にも携わりました。「モビリティハブ」とは公共交通とシェアモビリティとの結節点であり、ベンチなどの賑わい施設を備え、滞在や交流の機能も有する空間です。こうした拠点を街に点在させることで、誰もが使える移動のネットワークがつながり、外出のきっかけや偶発的なコミュニケーションの場になっていきます。
現場寄りの取り組みでは、都内の某駅周辺の交通系まちづくり支援、都心や地方でのモビリティハブの実証実験を行ってきました。
現場寄りの取り組みでは、都内の某駅周辺の交通系まちづくり支援、都心や地方でのモビリティハブの実証実験を行ってきました。
質的評価軸による利用者目線のまちづくり
水澤: モビリティ分野におけるNSRIの強みは何ですか?
筧: 日建グループの一員として、まちづくりの視点を持ってこの分野にアプローチしていることです。渋滞緩和やバスルートの変更といった交通手段の施策だけにとどまらず、街に賑わいをもたらすビジョンや民間の開発事業者との関係構築など、交通・まちづくり・プラスアルファの領域までカバーできるのが大きな強みです。加えて、研究所として所員それぞれが自主研究を行い、新たな交通まちづくり計画手法を提案して最新の成果を自治体の計画等に還元できる点も特徴です。

水澤: 現在、筧さんが進めている自主研究について教えてください。
筧: 歩行者空間の研究をしています。近年、歩行者空間はただ人が通るだけではなく、適度に溜まれる場所をつくって賑わいを創出するニーズが生まれています。しかし、現行の施設計画における歩行者空間は、混雑を最小限にすることが目標とされており、一定面積に滞留できるのは何人以下という数値が評価指標になっています。
筧: 歩行者空間の研究をしています。近年、歩行者空間はただ人が通るだけではなく、適度に溜まれる場所をつくって賑わいを創出するニーズが生まれています。しかし、現行の施設計画における歩行者空間は、混雑を最小限にすることが目標とされており、一定面積に滞留できるのは何人以下という数値が評価指標になっています。
水澤: セキュリティや防災上の観点では正解かもしれませんが、賑わいは生まれにくいですね。
筧: そうですね。従来の歩行者空間の整備は、人を安全に早く移動させることが大きな目的でした。安全性はもちろん最優先ですが、これからのまちづくりには定量的な評価だけでなく、利用者にとっての移動のしやすさや居心地の良さなど質的な評価指標も必要です。自主研究では実際に都市部の歩行者空間に出かけ、5つの質的評価項目を調査しました。質的空間として高評価だった場所について、当該空間の特徴を示す客観的パラメータとの相関関係を分析すると、沿道に多数の店舗を抱えているなど、必ずしも国の定める水準だけでは評価しきれません。賑わいや暮らしやすさを考えた時、現行の水準だけで計画することが本当にベストかどうか、そうした提案にも取り組んでいきたいです。


水澤: 既存の指標や考え方を変えて、まちづくりや空間の価値観をアップデートする。こうした成果が、モビリティを活用したまちづくりに反映されているんですね。
筧: モビリティハブの実証実験のKPIは滞留人数を重視しています。今後、住民の外出が増えることで健康増進に貢献したり、地域福祉のコストを縮小したりといった多面的な効果を可視化していければと考えています。
筧: モビリティハブの実証実験のKPIは滞留人数を重視しています。今後、住民の外出が増えることで健康増進に貢献したり、地域福祉のコストを縮小したりといった多面的な効果を可視化していければと考えています。
実装に向けてNSRIが官民連携のハブに
水澤: モビリティとまちづくりを一体で進めるために、NSRIは各ステークホルダーとどのように関係性を構築していますか。
筧: NSRIは名古屋大学と共同で「モビリティとまちの未来研究会(以下、モビまち研)」という、行政・デベロッパー・交通事業者を主なメンバーとした情報交換プラットフォームを運営しています。近年は駐車場事業者もモビリティハブに関心を持ち、参加していただいています。普段、行政と民間事業者、あるいは民間事業者同士が同じテーブルで対話する機会が少ないなか、私たちがパイプ役になることで互いの課題を結びつけ、歩み寄れる議論を進めています。
たとえば競合する施設のモビリティハブ同士をつなげると、人流を奪われることを危惧する事業者もあるかもしれません。ですがエリア全体での人の回遊性はむしろ高まります。我々は都市と人流データの詳細な分析と可視化に強みをもっていますので、こうした技術を活用して不安を解消し、合意形成を図っていきたいと思います。また、自動運転やモビリティハブの実装を実現するためには、実際のランニングコストを官民がどう負担していくかといった現実的な課題があります。両者にとってのメリットを整理した上で持続的な運営の仕組みづくりを支援するのがNSRIの大きな責務だと考えています。
水澤: 最後に、モビリティまちづくりの展望についてお聞かせください。
筧: ビジョンを描いて実証実験するところまで来たので、あとは実装です。日建設計とも協力しながら、ビジョン策定から実装まで、上流から下流までを一貫して支援していきたいです。あそこに行けば実際にモビリティが活用されて人が歩きやすい街があるよというところまで持っていきたいですね。
筧: NSRIは名古屋大学と共同で「モビリティとまちの未来研究会(以下、モビまち研)」という、行政・デベロッパー・交通事業者を主なメンバーとした情報交換プラットフォームを運営しています。近年は駐車場事業者もモビリティハブに関心を持ち、参加していただいています。普段、行政と民間事業者、あるいは民間事業者同士が同じテーブルで対話する機会が少ないなか、私たちがパイプ役になることで互いの課題を結びつけ、歩み寄れる議論を進めています。
たとえば競合する施設のモビリティハブ同士をつなげると、人流を奪われることを危惧する事業者もあるかもしれません。ですがエリア全体での人の回遊性はむしろ高まります。我々は都市と人流データの詳細な分析と可視化に強みをもっていますので、こうした技術を活用して不安を解消し、合意形成を図っていきたいと思います。また、自動運転やモビリティハブの実装を実現するためには、実際のランニングコストを官民がどう負担していくかといった現実的な課題があります。両者にとってのメリットを整理した上で持続的な運営の仕組みづくりを支援するのがNSRIの大きな責務だと考えています。
水澤: 最後に、モビリティまちづくりの展望についてお聞かせください。
筧: ビジョンを描いて実証実験するところまで来たので、あとは実装です。日建設計とも協力しながら、ビジョン策定から実装まで、上流から下流までを一貫して支援していきたいです。あそこに行けば実際にモビリティが活用されて人が歩きやすい街があるよというところまで持っていきたいですね。




