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1.メディアの会社で考えたこと

2. メディアは魔法の絨毯のようだ

3.メディアはプロジェクトを動かすドライバーにもなる

4.ささやかでもメディアと現実をつなぐ場の発見

5. メディアに流通/不動産をくっつけたことによるダイナミズム

6.リノベーションの一般化・社会化

7.公共住宅をいかに自由にするか

8.TOOL BOX 住み手に委ねるための空間とシステム

9.エリアコンバージョン 点から面へ/都市計画の方法論

10.イベント(非日常)が次第に日常に還元されていく

11.「新しい郊外」の発見

12.3.11で考えはじめたこと



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(図65)
89平米のものをリノベーションします。これはど真ん中にキッチンがあって、そこの周りに広廊下がある。普通ディベロッパーの感覚からいうと最悪のプランなんですが、ここはあえて廊下を物すごく広くとって広廊下、廊下なのか空間なのかわからない空間をとって、そこが家の中心になっているプランです。お母さんはキッチンに立ちながら家中の気配を全部感じることができるというプランはどうなんだろうか。これもやはり家族の増減に対応できるように建具の引き戸で家の空間をバンバン変えていけるようにする。二条城のように引き戸というのは日本古来の物すごくいいシステムです。それを最大限に利用したプランをつくってみよう。スケルトンにして、ここにお母さんが立つわけです。
(図66)
こういう間取りがありがたがられますね。お母さんが空間の中心になっている。端っこにあったキッチンがどんどん真ん中にやって、これ以上ないというぐらいの中心性を持つ場所になっている。家族が最終的にやる行為は一緒に食べることなんだ。これも下地が入っていて、子どもがふえたら壁がポーンと立てられて部屋をふやしたり減らしたりできる間取りになっています。
(図67)
広廊下です。あそこでプラレールをガーッと広げて遊んでくれているらしいので、廊下ではなくて空間だったんだなと思います。
(図68)
こんなふうにリノベーションをして、いわゆるnLDKから解放された間取りを開発しようという試みをいろいろやっています。それを特殊な建築家の解答ではなくて、nLDKという概念に変わる新しい間取りの一般解がつくれないか。それって何なんだろうということをこの作業を通してやっていたような気がします。

 

公共住宅をいかに自由にするか

(図69)
去年、公共住宅をいかに自由にするか、団地に取り組みました。築50年、最初に取り組んだのは京都の観月橋団地、伏見です。京都駅から電車で20分弱の団地です。まあまあ交通の便はいいんですが、やはり高齢化して、4~5階はすごくあいている状態でした。ただ、この緑です。5階建ての低層。僕自身はこういうところで遊んでいたので、すごくノスタルジックな空間でした。URだけでも77万戸と言われています。3人ずつ住んだとすると240万人ぐらい、名古屋市ぐらいの人口が、URの団地だけで収容できる。ところが、正式にはとても公表できないでしょうが、2~3割はあいているんではないでしょうか。それをいかに再生するか。民間企業の知恵とノウハウをコラボレーションしようということで、URさんに声をかけていただいて、団地の再生に去年は精を出しました。
(図70)
団地は、取り組んでみると、結構いいプランなんですね。ボロボロになっていますが、窓の位置が大きい。南北に開口があります。真ん中に階段がある。団地のプランを知っている方はすぐわかると思います。ただ、築50年で、かなり疲れている。この時代の団地はまず冷蔵庫置き場がないんです。洗濯機置き場がない。脱衣室がない。現代の生活に必要なあらゆる設備の空間が用意されていない。そのまま放置されていたので、それを全面的にリノベーションします。
(図71)
これがこうなっています。同じ風景です。先程のMUJIと同じようにキッチンを180度ガラッと回転して、アイランドキッチンにしてみたり、現代の生活に合うようにする。

 

 

 

 

(図72)
配管ルートがすごく大変なんですが、丁寧に丁寧に読み解きながら、左側の田の字型プランと言われる団地の古典的なプランを、その田の字型のプランをうまく生かしながら、今の生活に合わせています。団地はこの図面でいうと上と下、両方あいていて風がフワッーと通り抜ける。それが今の北側に全部廊下がある日本のマンションと比べて全然気持ちいいです。この時代は面積や容積率に余裕があったので、空間がゆったりつくられている。そういう意味では団地という空間は物すごくポテンシャルがあった。そのよさを使い切れていなかった。そのよさを再発見する。この時代の設計者は物すごく考えていて、障子をあけたら風が通るし、寝るときは締める。居間はちゃぶ台で、その後寝るとか、いろいろ考えてある。その風が通るよさだけは利用して、真ん中のふすまのところはあくようにする。
(図73)
これが閉じた状態で、こうやるとあく。日本のふすまと同じです。その思想だけは継承しながら、新しく読み変えていきました。
(図74)
玄関扉は団地のまま、懐かしい雰囲気で残っていますが、そのギャップを楽しむようなプランにしてみたりしました。
(図75)
もう1つ土間プランというのをつくってみました。今のプランは時代の先をやったんですが、これは団地から時代を逆に戻して、玄関と居間の間に土間をつくってみました。ここに自転車を置いたり、植物を育てたり、生活のバッファの空間をつくってみました。

 

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