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1.メディアの会社で考えたこと

2. メディアは魔法の絨毯のようだ

3.メディアはプロジェクトを動かすドライバーにもなる

4.ささやかでもメディアと現実をつなぐ場の発見

5. メディアに流通/不動産をくっつけたことによるダイナミズム

6.リノベーションの一般化・社会化

7.公共住宅をいかに自由にするか

8.TOOL BOX 住み手に委ねるための空間とシステム

9.エリアコンバージョン 点から面へ/都市計画の方法論

10.イベント(非日常)が次第に日常に還元されていく

11.「新しい郊外」の発見

12.3.11で考えはじめたこと



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(図98) 
『都市をリノベーション』という去年書いた本にその辺は書いているので、是非読んでいただきたいと思います。
(図99)
この時代のキーはこれかなと思っています。「既にある都市を使う」。当たり前です。「デザインすべき場所を探す」、これは東京R不動産がやっていることです。そして「建築の領域を再定義する」、自分を励ます言葉としてやっています。

 

「新しい郊外」の発見

(図100)
新しい郊外の発見。僕はこういうふうに東京の中心部に活動の拠点を置いていろいろやっていきますが、年もあって、このまま都心でずっと働き続けるのかと思った瞬間があります。僕は九州の佐賀の田舎町出身なので、最初はうれしかったんだけど、疲れがたまるなと。そこで、新しい郊外を発見に行きます。
(図101)
きっかけはこの小さな一軒家を設計したときです。茨城県守谷市、つくばエクスプレスが通ったことによって開けた町です。そこにこんな小さな木造住宅を設計します。これのおもしろいのは、庭が全部畑なんです。それが与件でした。まだ東京に勤めていて、あと5~6年で定年退職で農家をやりたい。田舎にこもって農家はちょっと無理だし、美術館にも、映画館にも行きたい。そもそもまだ会社も残っている。なので、庭で農家がやれる家をつくってほしいという依頼がありました。「茨城か」と思っていましたが、守谷は秋葉原から電車に乗ると40分なんです。「あれ、すぐだ」と思ったところに物すごく豊かな自然がありました。
(図102)
僕は父方が農家なので、農家の間取りをよく知っていました。畑で農作業をして、土間があって、そこで大根を洗ってキッチンに持っていってみたいなプランをそのまま郊外の家に導入しました。大きいリビングから自分の育てた野菜たちを眺めながら生活できて、洗い物をしたら、そのままドボーンとお風呂に入れるみたいな気持ちのいいプランにしました。
(図102)
そのときに、仕方なく郊外に住むのではなくて、目的を持って楽しく郊外に住むというのがあるんだと感じました。だから、寝に帰るベッドタウンとしての郊外ではなく、目的を持って住む新しい郊外という概念があることに気がついていくわけです。それがひっかかってたまらない。
(図103)
 何軒か設計します。そうこうしているうちに、都会なんかに住んでいる場合ではないと思い始めます。ある日ふと言葉がおりてきて、東京R不動産ではなくて、リラックス不動産だ。Real Tokyo Estateが東京R不動産のドメインだったんですが、Real Tokyo Escapeというふざけたウエブサイトをつくり始めた。星がきれいとか、魚、肉がうまい、携帯が通じない、それがアイコンになっています。そういうのを始めて新しい郊外ライフを楽しもう。これは沖縄とか軽井沢の物件にも入れていました。
(図104)
そんなメディアをつくっていると、自己暗示にかかるというか、自分がメディアに引っ張られるという現象が起こって、房総プロジェクトが始まります。
(図105)
房総半島の外房、上総一宮あたり、遠くに見えるんですが、実は特急で1時間、車でも1時間20分ぐらいで行く東京郊外。時間距離でいうと八王子ぐらいではないかというところに魅力的な場所を発見します。
(図106)
田舎のザバンとした海とほとんど似ていて、心を震わされる。房総エリアを盛り上げようと、企画書をつくりました。サーフィンのメッカです。これは僕がつくった企画書の一部をそのまま抜粋しています。畑があって、既に移住している人がいますよ、こんな家どうですかと言っているうちにどんどん自己暗示にかかっていって、結局僕は房総R不動産というのをつくってしまい、房総の海辺に土地を買って自分の家を建ててしまうことにたどり着いてしまいます。土地の値段がすごく安いんです。海まで歩いて3分。事務所まで電車で1時間。もちろんここだけでは無理で東京にも家がありますので、ダブルハウス生活です。別荘と本家という感じなんだけれども、両方とも家、両方とも別荘です。パラレルに多拠点居住の実験を自分自身を素材にしてやってみようということを始めるわけです。都会では家なんて絶対建てられないんですが、ここだと土地の値段がすごく安くて建てられます。

 

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