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1.メディアの会社で考えたこと

2. メディアは魔法の絨毯のようだ

3.メディアはプロジェクトを動かすドライバーにもなる

4.ささやかでもメディアと現実をつなぐ場の発見

5. メディアに流通/不動産をくっつけたことによるダイナミズム

6.リノベーションの一般化・社会化

7.公共住宅をいかに自由にするか

8.TOOL BOX 住み手に委ねるための空間とシステム

9.エリアコンバージョン 点から面へ/都市計画の方法論

10.イベント(非日常)が次第に日常に還元されていく

11.「新しい郊外」の発見

12.3.11で考えはじめたこと



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メディアはプロジェクトを動かすドライバーにもなる

(図10)
それを続けるうちに、もう1つ気がつくことがあります。メディアがプロジェクトを動かすドライバーになるんだということです。もっと言うと、本は、雑誌は、企画書になる、企画書よりも強い企画書になることに気がつきます。
(図11)
「東京計画2000」という特集をします。おわかりの方が多いと思いますが、丹下研究室が1960年にやった「東京計画1960」へのオマージュ。それから40年たった今、僕らは一体どんな東京を描くんだろうかという特集です。このときに誰にメインのインタビューに行こうか。当然、都知事です。石原知事に取材しようと思ってラブレターを書くんです。「あなたに政治のことを聞きたいわけではない。あなたはもともと小説家で、今でもそうだ。あなたは知事という職にありながら、東京都、都民をあなたの巨大な物語の中にひきずり込もうとしていませんか」みたいな挑発文を書いて出したら、これはおもしろいと、取材を受けると言ってくれたんです。
そのとき僕は取材をしようと思ってなかったんです。こういう企画はどうですかとプレゼンしようと思っていました。そのときに、雑誌というツールはこういうふうにも使えるんだなと気がつきます。
(図12)
 その中には、残地再生計画というのがありました。道路を拡幅して余った土地をどう利用するかとか、高架下の余った空間をどう使用するか、そういうことをたくさん考えていました。1960年の東京計画とは大違い。東京湾を埋めて輝く高層ビルを建てるのではなくて、僕らは、東京に余った土地をいかに使い倒すかということをこのときに考えていた。十何年前です。
(図12)
今更ながらおもしろいなと思うのは、紙に定着するのはなかなか意味があるなということです。今まさに僕はこういう仕事をしています。そのときに立てた妄想がそれに導いてくれているのではないかなと思います。
当の石原知事へのインタビューは、インタビュー当日に三原山が爆発して、それが流れたというちょっと残念な結果になります。ただ、僕は本というのは有効な企画書になるということにこのときに気がつきます。今でも僕は新しいプロジェクトを仕掛けたいとき、やりたいときは、まず本を書いて、火のないところに煙を立てて、それからそれをプロジェクトを動かすためのドライバーにするという方法を使っています。
レム・コールハースもブックカルチャーという単語で言っています。あの人ももとは新聞記者なので、メディアというものの特性を確実に知っているなと思って、ロールモデルにさせてもらっています。そういうことを考えながら仕事をしています。
(図13)
2003年、リノベーションの仕事を手がけるきっかけをつかみます。それはある外資系の銀行に勤める友達から、「バルクで古い家をたくさん買っちゃったんだけど、売れないし、貸せない。何かデザインとかして何とかならない?」という軽薄な相談を受けたのがきっかけです。最初はインテリアの相談かと思っていましたが、「ちょっと待てよ」。外資系銀行、不良債権化したビル、バリュ-アップとか経済の単語がたくさん出てきて、それをデザインの力で何とかしてくれないかという相談だということに気がつきます。「あれ、これはただのインテリアではなくて、構造的な相談をされているのではないか」と思って、そのときに、仲間たちと、Rプロジェクト、Rはリサイクルとかリノベーションの頭文字ですが、それを立ち上げます。
(図14)
最初に何をしたかというと、取材に行きます。本は企画書、プロジェクトを動かすドライバーなので、まず、本をつくるんです。アメリカに行って、都市の再生のいろんな風景を見てきます。
(図15)
これは西海岸の商店街です。廃墟になっていました。窓をパッとのぞくと真っ白い空間が登場して、このコントラストがいいですね。若いやつらがギャラリーにしている。捨て去られた商店街なので自由度が多い。彼らはそこをギャラリー化して、住みついている。どんどん中身が入れかわっていっている風景が目に浮かびます。

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