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1.メディアの会社で考えたこと

2. メディアは魔法の絨毯のようだ

3.メディアはプロジェクトを動かすドライバーにもなる

4.ささやかでもメディアと現実をつなぐ場の発見

5. メディアに流通/不動産をくっつけたことによるダイナミズム

6.リノベーションの一般化・社会化

7.公共住宅をいかに自由にするか

8.TOOL BOX 住み手に委ねるための空間とシステム

9.エリアコンバージョン 点から面へ/都市計画の方法論

10.イベント(非日常)が次第に日常に還元されていく

11.「新しい郊外」の発見

12.3.11で考えはじめたこと



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(図32)
 タイルの味とかそういうところはすごく大切にしながら、古い町の中に真っ白い塊を1階にズバッと挿入したようなデザインにしてみました。今1階はヨガスタジオ、地下が家具屋さん、上が住居やオフィスです。東日本橋という日本橋の裏あたりなんですが、問屋街のど真ん中にこういうビルが登場して、この町の変化の第一歩になったような気がします。あえて1階だけ過剰に明るくして、暗い町にパッと白いインパクトを与えるようなことをしています。
(図32)
最上階です。選択と集中と言っていますが、人間っておもしろいですね。特に日本人は手に触れたりするところは物すごく清潔でいたがるけれども、天井などは思いっきりスケルトンのあんな感じでも別に気にならない。お金をかけるところはかけて、かけないところはすごくかけない。選択と集中を進めるデザインがリノベーションには合っているということを学んでいきます。
(図33)
鉄板を折り曲げただけのシンプルな本棚や、水道管を洋服かけに使ったり、既にある素材をちょっとずらしながら全部使う。遊ぶようにしながら、デザインしたリノベーションのプロジェクトです。
(図34)
あえてラフにして、ここから先は自分でやっていいよという空間にしています。住み手の介入の余地が残っているような空間をこの頃から意識していたような気がします。
(図35)
次は門前仲町。これは三井不動産さんの仕事です。結構不便なところにあって、「ここがあいています。何とかならないですか」「いや、これはきついですね」。見た瞬間、きつ過ぎると思ったんですが、「まあまあ、そうは言わずに」と言われて、屋上に連れていかれたら、何とこんな風景が広がっていました。
(図36)
すばらしい風景はあの壁の向こう側にあったんです。
(図37)
今日はプロの方もたくさんいらっしゃいますが、あの風景が南側であちら側を全部窓にすると、グレアが起こってしまう。オフィスの設計の基本で、南側大開口はだめというのを忠実に守って、あの風景を壁でつぶしていました。それはシカゴで見たコンバージョンだ。これをレジデンスに用途変更するという提案をして、受け入れてもらいます。計算して、あけられる窓をバーンとあけて、どこの風景だというような風景が見えてきます。最上階にコンコンと上っていくと、屋上はこんなふうにしてみました。オフィスじゃなくて、住居にした途端に、室外機置き場が余ったんです。
(図38)
ウッドデッキを張って、バスタブを置いてある。もちろんお湯も出ますが、屋上は東京において最高の庭だということを証明してみたかった。「これは法的に大丈夫ですか」と言われて、さんざん調べたんですが、大丈夫なんです。すごく高い家賃で貸せています。1円も生んでなかった屋上がちょっとした発想によって、最も価値のある空間に変わっていくというアイデアです。それから、うちの事務所は屋上使いを得意とするようになりました。
(図39)
こういうふうに窓を大きくした。
(図40)
1階に附置義務駐車場があって、どうしてもつけなければいけない。でも、ここにシャッターがついてしまうと、物すごく悲しいファサードになるというので、透明にして、2階とメゾネットでつなげて、ガレージをバーンと広目にとることでガレージハウスにします。見せびらかしたいから、絶対にいい車がとまるだろうと言って、せつないファサードにならないような工夫。負の要素を全部プラスに、カチッカチッとスイッチを押すように変えていくというのをこのプロジェクトでは実験してみました。
(図41)
これは勝どきの倉庫街です。ある日、東京R不動産の若いスタッフが「馬場さん、カッコいいのを見つけたんです」と言って探してきてくれたものです。運河沿いです。「カッコいいよね。でも、これ何に使うんだ」みたいな話をしていました。

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