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1.メディアの会社で考えたこと

2. メディアは魔法の絨毯のようだ

3.メディアはプロジェクトを動かすドライバーにもなる

4.ささやかでもメディアと現実をつなぐ場の発見

5. メディアに流通/不動産をくっつけたことによるダイナミズム

6.リノベーションの一般化・社会化

7.公共住宅をいかに自由にするか

8.TOOL BOX 住み手に委ねるための空間とシステム

9.エリアコンバージョン 点から面へ/都市計画の方法論

10.イベント(非日常)が次第に日常に還元されていく

11.「新しい郊外」の発見

12.3.11で考えはじめたこと



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 (図116)
 真ん中にちょっとした集会場があります。全部木造です。つづら折りの斜面の道にポツンポツンと、ある一定の距離で家々が建ち、もちろん太陽光発電で、オフグリッドとは言いませんが、かなりの割合でエネルギーを自給することができ、何かあったときもそんなに困らない。そもそもエリアとしてそんなにエネルギーを使わない。そういう家がつながっている。もしかしたら遠くには風車なんかが立っているかもしれない。こういう遠くのイメージをしながら未来の日本の風景をイメージしています。
(図117)
 『未来の住宅』という本を書きました。エネルギーを使わずにカーボンニュートラルで、住み心地がよくて、ちゃんとデザインもいい家って何なんだろうという本で
す。
 そうしているうちに環境省の予算がとれて、大学の敷地の中にエコハウスのモデルケースを1軒つくることができた。これは予算もふんだんにあったので、F1カー並みの性能を持った高断熱、高機密で、太陽光で、エネルギーをほとんど使わないどころか、余ります。ペレットボイラーで暖房する東北地方のある素朴な木造です。
(図118)
こんなインテリアですが、地元県産材がしっかり使ってあるような家です。これをつくっていると、うちもそうしようかなという人がたくさん出てきて、今学生たちと、山形でこういう素朴な木造住宅、でも超高性能でほとんどエネルギーを使わないという住宅の設計を3~4軒始めているところです。その続く先は、先ほど見せた「新しいふるさと」のような新しい日本の価値観を示す風景を描かなければいけない。3.11があろうがなかろうが、僕らはそういう社会に向けてのデザインを始めなければいけなかったはずなんですが、3.11がやってきたことによって、曖昧にしてきたことがいきなり目の前にズバッとやってきた感覚で、デザインであろうが、建築家であろうが、その辺から逃げずには先に進めないと思っています。
(図119)
 これは人口ピラミッドです。70年、80年、90年、95年、2000年。今の人口ピラミッドはこうです。そして35年後の2050年は何とこんな人口ピラミッドになっています。ピラミッドではないですね。完全に逆、あの細いところで上のほうを支えなければいけない。僕はもしかしたら支えられる側になっているかもしれない。そういう時代の中で一体どんな建築をつくられなければいけないんだとか、どんな働き方をしていなければいけないんだとか、そういうことを、特に3.11をきっかけに考えざるを得なくなっています。
  今朝の日経新聞を見ると、貿易赤字が1兆円を超えていました。ほとんどの国に対しては黒字なのに、エネルギーで全部使い果たしているという状況です。日本のエネルギー自給率はたった4%、世界先進国で最低です。96%は海外に依存しています。食料自給率は39%。1970年は80%ありました。極めて不安定な状況の中に僕らはあるんだなと思います。
その中でデザインを考えたり、建築を考えたりする人間は一体どんなソリューションが提供できるか。リノベーションもあるかもしれない、エコロジーのこともあるかもしれない。そういうことをぼんやり考えていましたが、それを切実に考えて、そして広義のデザインをやっていかなければいけないと思っているところです。
(図120)
 去年、『だから、僕らはこの働き方を選んだ』(ダイヤモンド社)という本を書きました。このレクチャーの始まる前に、山梨さんと「今からの時代の仕事、働き方ってどうなるんだろう」と雑談しました。
人口が減っていったりと、僕らの時代ってどうなるんだろうみたいなことで終わろうと思っていましたが、最後にちょっと思いついて加えました。
(図121)
 これは東京R不動産の働き方について書いた本です。東京R不動産を一緒にやっているやつらです。30代が一番多いです。あとOpen Aという設計事務所があったり、東京R不動産があったり、複数の企業のアライアンスによって、東京R不動産は成り立っています。東京R不動産というのは企業の名前ではなくてメディアの名前で、それを複数の企業が持ち合っているという形になっています。
(図122)
 東京R不動産というメディアを中心にして、Open Aという設計事務所だったり、スピークという仲介業を持った会社だったり、Antenaという編集の会社だったり、大阪R不動産だったらArt & Craftという企業とアライアンスを組んだりと、企業同士のネットワーク、メディアがまさに媒体のハブになって、複数の企業がつながって仕事をしている状況になっています。東京R不動産のメンツは、副業ウエルカムです。自分がやるなら新しい会社をバンバンつくれよと。プレゼンして、おもしろくてこれはいけるとなったら東京R不動産グループで出資する。大企業にいた人もいれば、そうではなかった人もたくさんいます。この東京R不動産というメディアをプラットホームにしながら、新しい働き方、新しい生き方みたいなものを探して総合的にハッピーになればいいのではないか。ある意味、組織の実験、マネジメントの実験みたいなものをしています。Open Aもこの中にある1つです。
 僕はほかの企業とプロジェクトごとにチームアップする。団地R不動産はこのチーム、房総R不動産はこのチームと、いかに流動的なチームアップができるかということの挑戦をしています。放っておけばどんどん遠心力が働いてバラバラになるところですが、メディアというやわらかいものを共有することによって辛うじてしっかりつながれる。R不動産グループとして何か成果を出すようにお互いに頑張ろう。プロ野球チームみたいなものです。契約はみんなバラバラだけど、チームとしては優勝を目指すみたいな、そういう組織がつくれないか。ある意味これは、こうやって人口が減っていく時代の防御でもあるし、自由を獲得しながら楽しい仕事をするための方法論でもあると思っています。
 僕は大学から広告業界に行ったり、雑誌の編集をしたり、設計をしたり、不動産のウエブサイトをついに運営することになった。僕は建築を基礎学問だと思っていて、そこを軸足にしながら、そこからOpen Architectureでいろんな世界と解をつなぎながら、新しい仕事であるとか、新しい価値観をつくっていければいいなと思って、仕事をし続けています。今後もそれをきっと続けていくんだろうなと思います。
 時間になりました。ありがとうございました。(拍手)

 

 

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