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1.メディアの会社で考えたこと

2. メディアは魔法の絨毯のようだ

3.メディアはプロジェクトを動かすドライバーにもなる

4.ささやかでもメディアと現実をつなぐ場の発見

5. メディアに流通/不動産をくっつけたことによるダイナミズム

6.リノベーションの一般化・社会化

7.公共住宅をいかに自由にするか

8.TOOL BOX 住み手に委ねるための空間とシステム

9.エリアコンバージョン 点から面へ/都市計画の方法論

10.イベント(非日常)が次第に日常に還元されていく

11.「新しい郊外」の発見

12.3.11で考えはじめたこと



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フリーディスカッション

山梨 馬場さん、どうもありがとうございます。
これは初回ということで、僕にも相当プレッシャーがかかっていた。初回にふさわしい人が呼べるか、たくさんの聴衆の方が引き込まれるような話をしてくれるか。馬場さんに頼んで今日はよかったなと思っています。皆さんに今までと全然違うものを感じていただけたのではないかと思います。特に日建設計という枠組みからすると物をつくることがすごく大きな使命で、その中でつくらないでつくるみたいなこと、メディアというやわらかいはずのものがあって、それが物に一回ついて、もう一回メディアに再投影する。最初は小さなビジネスで始めたものが実は非常に大きい可能性があって、700万戸の住宅を変えるかもしれないという話はすごくインパクトがあったと思います。
僕もその中でたくさん質問したいことがありますが、せっかくこのNSRIフォーラム自体が今イノベーションを図っていますので、旧来のフォーラムのいい伝統をうまく残さなければいけない。馬場さんという白いペンキで塗った後の残る部分の埋められる部分はどこかというと、多分質問コーナーだと思います。残る時間をできるだけ質問に充てたいと思うんです。日本人でよくないのは質問しないんですね。皆さん、日本人をかなぐり捨てていただいて、是非質問をたくさんして、それに対して皆さんでやりとりできればと思いますが、どうでしょう。
福岡(独立行政法人労働者健康福祉機構医療) たまたま今日は会場に一番乗りさせていただいて、質問も1番目に、1つだけします。ちょっとうがった見方かもしれませんが、いろいろプロジェクトのご紹介がありました。説明の中では、成功に導いた、それでつながったという感じですが、性格がひねくれているので知りたいのは、失敗しそうなんだけど、どう盛り返したか。それともあきらめた物件があるのか。目的が変わっちゃったけど、何となくおもしろくなった。この中で何かありましたら、是非ご紹介をいただきたい。
馬場 ありがとうございます。そのとおりで、こうやってレクチャーで発表するのはほぼ成功事例なんです。古い建物の再生の場合は、これはもう無理だというのがたくさんあります。僕は、例えば、この建物何とかなりませんかというのをいろいろ検証して「済みません。これは無理で建て直したほうがいいと思います」という結論に達することは物すごく多いですね。何か相談されて、これは確かに変えることができるというのは3割ぐらいではないかなという気がしています。
デザインやそれにかかる施工費など、事業収支をうっすら計算してみると、そのプロジェクトが何とかなるか、どんな知恵を使ってもなかなか難しいかというのはわかるので、「これは無理です」と言うのも仕事の責任だと思っています。これはやり切れないと思うのは先に言うというのが多いです。建ててしまって失敗というのはほとんどないと思います。武器なのは、東京R不動産をやっているので、例えば、それが幾らで貸せるかというのが大体わかります。そこにマーケットがあるかというのも大体わかります。建築をやっていると事業費も大体わかる。トータルの事業収支をいつの間にか組めるようになっていて、そういう意味ではデザインして終わりというわけではないので、リスクヘッジはできていると思います。
逆に苦しいのは、あなたがつくったやつは東京R不動産に掲載してお客さんがつきますよねという目でクライアントが見る。そこは大変なんです。お客さんがつかなかったらどうするのか、引き渡した後も緊張が続くというのはつらいところですが、合法性を見ながら仕事をしている感じです。
山梨 今のお話、非常におもしろいですね。とかく我々建築家は物をつくることが目的になったり、リニューアルしている人はリニューアルすることが目的になっちゃうんですけれども、恐らく馬場さんの場合はハッピーに暮らすという目的があって、そのための最善解の1つがリニューアルだから、失敗するわけがないというすごくわかりやすいご説明で、これもまた目からうろこの発想なのではないかと思います。
引き続き質問いただきたいと思います。できたら感想などを最初に一言沿えていただいて、もしよろしければ、自分は何者であるかを名乗っていただければと思います。強制はしません。
今村(KTストアマネジメント㈱) トヨタのディーラーの店舗開発などをやっている不動産部門でございます。今日のお話、非常におもしろく伺いました。
2つ質問させていただきます。我々リノベーションをやっているときに法律の壁に突き当たるんです。その辺をどうされているのかということが1つ。もう1つは、馬場さんの気持ちがわかって施工するチームをどうやって育成していくかをお伺いしたいんです。
馬場 まさに苦労しているポイント2つズバッとこられた感じです。法律の壁は本当に大変で、力の6割から8割はそれに使っているのではないかという気がします。特に用途変更、例えばオフィスから住宅に変えるなどの用途変更をした瞬間にクリアしなければいけない法律の条項はガバッと増えます。それは丁寧にやるしかないとしか言いようがないです。今日はお示ししなかったんですけれども、用途変更をクリアするための13のフローというのがある。ここで検済あるかないか確認してとかフローを全部書くと13あった。それを見て、この建物は用途変更可能かとか、事前にあきらめたほうがいいとか、ここがボトルネックなんだけれども、ここを突破できれば何とかなるとかというところを検証しながら進めています。
同時に、法律も変わらなければだめだと思います。新築がほとんどベースになっているので、リノベーションには法律的な無駄が多過ぎる。もうちょっと合理的な回答を出すための方法論を国交省と建築家、業界挙げて話し合いながらやるべきだと思います。国交省も総論はオーケーなんですが、各論になるとなかなか厳しい。それはある意味チャレンジしていくしかないと思います。特区制度があるので、リノベーション特区みたいなものをつくって、そこは全部施主と相談しながら決めていくような特区エリアをつくって実験していく。社会実験を、そういう制度を使いながらやっていく時期に来ているのではないかなと思っていますし、そういう動きも実際にあります。僕は現在は苦労しながらやっているけれども、社会として解決すべき問題が法令であると思っています。

 

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