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1.メディアの会社で考えたこと

2. メディアは魔法の絨毯のようだ

3.メディアはプロジェクトを動かすドライバーにもなる

4.ささやかでもメディアと現実をつなぐ場の発見

5. メディアに流通/不動産をくっつけたことによるダイナミズム

6.リノベーションの一般化・社会化

7.公共住宅をいかに自由にするか

8.TOOL BOX 住み手に委ねるための空間とシステム

9.エリアコンバージョン 点から面へ/都市計画の方法論

10.イベント(非日常)が次第に日常に還元されていく

11.「新しい郊外」の発見

12.3.11で考えはじめたこと



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工務店もそうです。本当に苦労します。気心が知れたところはいいんです。小さなリノベーションだったらいいんですけれども、大きい建物のリノベーションだったら、入札になったりするので、気心の知れたところは絶対無理です。その場合僕がやるのは、古い建物に行って、現場監督さんや設備の人など、工事のメインの人たちに座ってもらって、その空き物件で講義をやるんです。ビフォー・アフターとか見せながら、「これでいいんです。このコンクリートの地肌、これは僕らにとってはすてきです」と講義をする。「ああ、そんなもんかね」と言ってもらう。あと、図面の書き方を工夫しています。図面に写真がたくさん載っているんです。たくさん載っている写真に直接、赤で、ここから上残す、ここから上壊すと、図面と同時に、ビフォーの撮った写真に指示していくというのを編み出しました。それが一番正確な見積もりがとれる、それがノウハウです。
最後は、その図面を渡しながら、現場でガムテープとマジックを持って壁に指示をしていく。ここを見切って、上壊す、下壊す、ここでお願いします、この壁は全部残しますというのをガムテープでベタベタ現場に張っていく。結局、監督さんが理解していても絶対末端まで理解できないから、その場に指示をポストイットで張っていく、それが一番確実だということを編み出しました。そういう試行錯誤で何とかやっています。
山梨 またまたおもしろい話で、これは、僕と馬場さんが同じ号の『JA』にも載っています。『JA』という雑誌がありまして、その中に馬場さんの設計手法として写真がたくさん載っていて赤ペンで書いてあります。これも興味を持った人は是非見ていただければと思います。
ほかにはどうですか。
澤田(タマホーム株式会社) シェアハウスの話と、団地R不動産のお話を伺いました。シェアハウスは20代や30代の方が住まわれて、非常に最近増えているような気がします。団地自身は、京都の物件以外にも郊外の昔の不動産、高齢の方が非常に多く住んでいらっしゃるようです。ああいったもので、お年をとられた方のシェアハウスが、今東京R不動産さんがやっていらっしゃるものとうまくマッチングするような印象を持っています。そういうプロジェクトのイメージで、もし何かお持ちのものがあれば、ご意見をいただければと思います。
馬場 高齢者のほうにはまだちゃんとアクセスできていないのが正直なところです。東京R不動産も何とか不動産もウエブメディアなので、主な読者が30代、40代、50代で、60代、70代になると、アクティブな人もたくさんいらっしゃいますが、ウエブというメディアに対しては親和性が今のところまだ低い。若い人たちが成長して上に上がっていくので、そんなことはなくなると思いますが、僕らとしては、その世代に的確に情報を流すための方法をまだ持っていない、弱いというふうに感じています。逆に、得意分野というところで、団地などは高齢の方と若い世代をどう多世代化して融合するかというところにまず力点を置くことから始めようと思っています。もちろん興味がないわけでは全然ないし、親たちの世代をどうしようかということを考えることもありますし、高齢者を対象にしたシェアハウスを考えてみようかと言って考えたことはあるんですが、どうしてもソフトウエアをイメージできない感じなんです。今の若い世代はウエブやSNSとか使っているので、コミュニケーションの仕方がシェアになれている感じがある。団塊世代及びその上になると、シェアや、誰かと何かを共有するとかいうのが苦手な感じが多いので、マネジメント管理の仕方がなかなか想像できない。ソフトウエアが想像できないがゆえにハードウエアも想像し切れないという状況にあるのが正直なところです。そこは僕らにとって今からの課題です。
山梨 年齢層が広がった話になったので、おもしろいかなと思います。老人のシェアハウスも少しリサーチをして、2週間ぐらい一緒に泊まってみると、新しいものが見えるかもしれない。どうでしょうか。
水野 今、僕は36歳という年齢で。先ほど人口の推移を見せていただきましたが、2055年には人口の3分の1は減ってしまう中で、働き方を模索しながらいろんなトライアルをしています。オフィスという平日の昼間8時間ぐらい皆さんがいる空間を何か新しく変えていくときに、ライフスタイルや物語、共感を生み出すのは、B to Cの関係で可能性を僕は感じている一方で、総務や財務が窓口になる企業が経済合理的な判断の中で仕掛けていくときにヒントになるような話を聞かせていただければと思って質問しました。
馬場  それは企業のあり方ということですかね。それとも空間に準拠してとか。
水野  両方だと思っています。例えば魅力的なオフィスをつくろう、それを内装などそういったもので補完していくときに、最初の窓口の総務とか財務が判断されると思いますが、そのときにどううまく仕掛けていけるかということです。
馬場  確かにすごく難しい問題で、7~8年前に、ポスト・オフイス、次の時代のオフィス空間のアイデア集という本をつくったことがあります。その後オフィス空間のデザインや相談が幾つかあって、そういうのをやっていました。ただ、景気が悪くなったら、パタッとオフィスの設計の相談がなくなった。僕は新しいオフィスのあり方はどんどんアクセラレートするか、普遍化するかと思ったんですが、やはりまだまだ最初にカットされるんだなと、特にリーマン以降実感しました。そういう意味では日本の社会はまだ未熟なのかもしれないと思っています。
ちょっと抽象的になるし、的確なソリューションではないかもしれないんですが、マネジメントとデザインの両方を提案できないとだめなのかもしれないなという気がします。どこもそうなんです。オフィスが変わるときは大体トップダウンで、ボトムアップで一気に変えていくというのはよっぽどの体力とよっぽどの説得力、よっぽどの説得者が必要かなという実感はあります。B to Bでいきなりドンといくと困難性が高く、B to CのCが中小企業のトップぐらいのところが一番変わりやすい、変えやすい。そのトップが強い意思を持って、こう変えたいと思えばそれは比較的変わっていきます。逆に、大きい企業にいきなり大変革というのはなかなか難しいのではないかなと思います。
空間とマネジメントの両方が変わらなければいけないと僕は思っています。その両方がセットになっていない限り、ちゃんとした変化をつくり出すことができないのではないか。設計する側はこういうデザインにするから、マネジメント手法はこうであるということも含めて、それによって経費がこれだけ削減できるとか、コミュニケーションはこう潤滑化されるとか、総務的な目から見てのメリットもちゃんとうたう。デザインというのはそこまで引き受けて提案して初めて説得力を持ち得るのではないか。ただ、それを大企業に持ち出すと空間性だけでは説けないので、僕らがまず相手にしやすいのは中小企業、小さな企業もしくは大企業のある部署、そこで実験的にやってもらうとか、領域を決めるとか、そういうところの積み重ねでないといけない。スタイルとスペースとツール、その三者をセットにする。マネジメントとスペースとそれをちゃんと循環させるツール、その三者をセットにして構築して提案していかなければいけないかなと思ってはいます。思ってはいるが、そんなにそれがうまくガチッとはまることは、そうそうまだたどり着けていないところが現実です。先程の勝どきのオフィスとかはうまくいったと思いますが。
山梨  今のお話はオフィスばっかりつくっている日建設計で、特に大企業を相手につくっている我々として非常にビビッドなところです。今のご質問の話と馬場さんの戦略を聞いていくと、メディアを通じて、住むことのリテラシー、住むことにビビッドに意識をかき立ててることをして、それでリニューアルをした。我々も同じようにメディアを先行して、働くことの喜び、ワークプレースの重要さをやれば、馬場モデルに従って日建R不動産をつくって、やればできるのかなと思って可能性を聞いていました。
まさに質問者の水野さんが言ったように、総務から始まってしまうので、総務の方にまずクリエイティブになっていただければ物事は変わるかもしれないということで、非常にドキドキしながら聞いていました。

 

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