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1.メディアの会社で考えたこと

2. メディアは魔法の絨毯のようだ

3.メディアはプロジェクトを動かすドライバーにもなる

4.ささやかでもメディアと現実をつなぐ場の発見

5. メディアに流通/不動産をくっつけたことによるダイナミズム

6.リノベーションの一般化・社会化

7.公共住宅をいかに自由にするか

8.TOOL BOX 住み手に委ねるための空間とシステム

9.エリアコンバージョン 点から面へ/都市計画の方法論

10.イベント(非日常)が次第に日常に還元されていく

11.「新しい郊外」の発見

12.3.11で考えはじめたこと



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(図76)
リリースしたところ、競争率3倍というすごく人気の物件になってくれた。特に若い世代が入って、高齢化していた団地で世代の交流が始まる第一歩になったような気がします。
これのおもしろかったのは、団地1棟リノベーションでなくて、あいたところから、虫食い状にリノベーションしていくということです。既存住民たちを追い出さなくていい、住みながらリノベーションというところが大きかったような気がします。URにとっては現実的であった。追い出さなくていい、そこのコストと費用も要らない。これができて、ある一定の支持を得られたので今後URの再生はどんどん火がついていってくれるのではないか。公共住宅であるからこそ、実験がしやすかったような気がします。家賃づけも一緒に考えたんです。幾ら投資して何年で回収するか。デザインと同時にマネジメントの方法、ソフトのところも同じテーブルに乗って考えたというのはすごく画期的だったのではないかなと思います。こういうふうに公共の住宅について力を入れた。あと、団地という概念をリブランドしようと思って、ロゴをしっかり考えてみました。
次はソフトウエアだなと思っています。これをきっかけに団地R不動産というのを去年つくった。日本中のすばらしい団地ばかりを集めたR不動産をつくったら、またそれはすごい人気で、日経新聞さんに本をつくろうと言っていただいて、『団地に住もう』という本が先々月出ています。それはそれで結構売れてくれています。いわゆる団地に住んでいるすばらしき人々を集めた本です。団地をどう使えばいいかというアイデアをたくさんつくった本です。その『団地に住もう』という本自体が団地に住むことをアクセラレートする。同時に、多分団地を変えていくプロジェクトをつくるきっかけになっていくのではないかなと思っています。メディア、本は、新しいプロジェクトをドライブするための道具だと思っています。
今は、URだけでなくて、東京都の公社さんや京都の公社さん、団地をもてあましている企業さんから、重病患者のような団地をたくさん連れてこられていますが、逆に新しい提案がしやすいです。

 

TOOL BOX 住み手に委ねるための空間とシステム

(図77)
 そこで今僕らが取り組み出したのは、東京R不動産tool boxという新しいウエブサイトです。何かというと、建築建材の通販です。今まで水道の蛇口や、取っ手は、全部B to Bでした。お客さんは、一部のDIYショップを除いては工務店経由でないと仕入れできない。その値段がブラックボックスになっていたわけです。「これはカッコいいんだけど、どうやってつければいいの」。これ、買ってと工務店に言っても、面倒くさいから「いや、これはうちには入らないんですよ」みたいな、建築業界にはブラックボックスがある。うちはリノベーションをずっとやってきたんですが、本格的なリノベーションは600~800万円はどう考えても要る。ほとんどの人は100万、200万で自分の空間を変えたいと思っている。そういう相談が東京R不動産にはたくさんある。だとするならば、普通の人が自分の空間を自分の力で変えられる、そういうシステムとサポートの何かをつくらなければいけないという問題意識があって、去年踏み込みました。そのブラックボックスに挑戦しよう。
Toolbox、このサイトでは建材や工事費などが全部、あからさまに掲載されています。その部材と工事内容を組み合わせていくことによって、エンドの消費者がおよその工事総額を想定する事が可能になります。自分の空間を自分で構想、デザインし、そしてその価格をざくっと押さえることができる。それをサポートするシステムをつくりたかったんです。
iPhoneのアプリケーションのように、ダーッと建材のアプリケーションが並んでいます。つまみもあれば、ドアノブもあれば、壁材もあれば、塗装材もあれば、床材もある。ただ、セレクトショップなので、これはちょっといいよねというのばかりがバーッとそろっている。R不動産とそこのコンセプトは一緒です。
(図78)
1つすごく変わっているのがソフトウエアもアプリケーションに入っている。例えば、天井上げ軍団という人たちが入っています。どういうことかというと、RCの天井を壊したい、スケルトンにしたい。イエローページを開いてどこの工務店に頼もうかなと思ったとしても、どこも信用できる業者に見えてこない、どこに発注していいかわからないという人が多いということがわかった。金額で見積もりの見方が普通の人はわからない。天井上げ軍団は天井だけ解体しにやってきてくれる軍団です。何平米幾らと値段が決まっています。超明朗会計にして、天井上げ軍団がある日やってきて、天井を壊して去っていくというアプリケーションなんです。
(図79)
ハードもそうです。中には塗装職人も載っています。塗装をしてくれるすてきなイケメンが載っていて、この人が来てくれます、何平米幾らです、場合によっては、塗り方を教えてあげます。自分の空間を自分でつくるためのアプリケーションです。ある意味、自分で自分の首を締めているような感じでもあります。デザイナーがデザインする部分を放棄して住み手に委ねようとしているわけです。洗練された空間センスをみんな持っているので、僕らはそういう時代に突入していると思います。それでも用途変更や複雑なリノベーションは相変わらず僕らがやらざるを得ないので、市場は小さくならないだろう。逆にリノベーションが身近になるから、空間を再生するリテラシーがバーッと上がっていくだろうという思いでこのシステムをつくっております。
こういうことをやっていたら、TSUTAYA(CCC)さんが興味を持ってくれて、その社長が「何か、おまえたちおもしろいことをやっているな」と声をかけてくれました。今度、ハウスビジョンという展覧会がお台場で3月2日からあるんですが、そこのブースを一緒に出さないかと言ってくれた。何でTSUTYAが住空間に、と思うのですが、その社長とは「TSUTYAは今ビデオとか、そっちが主だけど、もともとカルチャーコンビニエンスクラブなので、文化全般について、要は、家全般について、俺はいろいろやりたいんだ。おまえたちのやっていることは俺の考えていることにまあまあ近い」と言うので、「ありがとうございます」と言いながら、今一緒にプロジェクトに取り組んでいます。

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