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1.メディアの会社で考えたこと

2. メディアは魔法の絨毯のようだ

3.メディアはプロジェクトを動かすドライバーにもなる

4.ささやかでもメディアと現実をつなぐ場の発見

5. メディアに流通/不動産をくっつけたことによるダイナミズム

6.リノベーションの一般化・社会化

7.公共住宅をいかに自由にするか

8.TOOL BOX 住み手に委ねるための空間とシステム

9.エリアコンバージョン 点から面へ/都市計画の方法論

10.イベント(非日常)が次第に日常に還元されていく

11.「新しい郊外」の発見

12.3.11で考えはじめたこと



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(図50)
吹き抜けのところはイベントスペースになったりギャラリーになったり。そういう空間にしています。ボルダリングの会社を入れようかと思っていろいろやっていたんですが、結局イベントスペースになりました。オープニングのときにレディー・ガガがシークレットライブをやって一気に盛り上がっていました。
(図51)
これは、印刷工さんたちのお風呂場でした。現場をウロウロしていたら、ちょうど解体していた途中でした。「ちょっと待ってください。ここでとめてください」と言ってそのままとめてもらいました。タイルの跡の辺がたまらないですね。絶対新築ではできないから、この空間には絶対バリューがある。今ここは撮影スタジオとしてすごく人気の空間になっています。リノベーションは現場主義です。オフィスがこの辺に入っていたり、スタジオが入っていたり。1階はカフェです。
(図52)
1階のロビーのエントランスの空間が僕はもったいないなといつも思っていました。広いけれども、1円も稼いでない。「今、下に来たんですけど」と携帯で電話をかけて待たなければいけない。だったら、そのままカフェにして貸してしまえ。「今、下に着きました」「じゃ、そこのカフェでコーヒーでも飲んでいて、おりていくから」。このカフェ自体がコミュニケーションのハブにもなるという意味で余った空間をもう一回使い直す。その上の多様なオフィスの人たちのコミュニケーションのハブになっている。
(図53)
屋上は最もいい庭なので、ウッドデッキを張りました。フジテレビとレインボーブリッジが見えます。ここに花火が上がります。日本で花火が一番きれいに見える屋上だと思います。結婚式の二次会などに使われていて、下のカフェからケータリングというふうに、今まで使われてなかった空間をいかに使い倒すかということを考えています。
(図54)
このときにプレゼンしたのが、ビルディング・アズ・メディアというコンセプトでした。産経新聞社さんでしたので、最後の役員のプレゼンテーションのときに、「これを不動産投資だと思わないでください。20世紀の新聞というメディアをつくっていたところは今確かにSNSとかインターネットに押されているかもしれませんが、この空間自体を21世紀型の新しいメディアと捉えてください。結局何故みんな連絡をとり合うかといったら、会うためです。フェース・ツー・フェースのコミュニケーションの場が最も強いメディアだということはおわかりですよね。だから、このビルに対する投資は不動産投資ではなくて、メディア企業本来の投資です」。だから、初めにビルディング・アズ・メディアだと書いてプレゼンした。役員の人たちはみんな線を引きながら読んでくれました。もともと全員新聞記者なんです。言葉に響いてくれて、プランの前に、もうやるぞ的な顔になってくれたのがすごく気持ちのいいプレゼンテーションでした。
これも、古い建物の物語をいかに継承して新しい時代に手渡していくかということ。見てきたことがここで素直に出会えたんだなと。東京では話題の場になってくれています。
(図55)
しゃれで、テキストでファサードをいっぱいにしています。

 

 

 

 

 

 

(図56)
これはシェアハウスのはしりです。今シェアハウスって、すごくはやってきていますが、これは何年前ですか。企業の独身寮があっても、今は独身寮に住みたい独身はほとんどいない。これを何とかならないか。白いペンキは魔法なのでまず塗って、みんなでご飯を食べていた食堂だったところをラウンジに変えています。全部中古の家具をかき集めました。住んでいる人みんなのリビングルームに変えたわけです。ご飯を出さなくなったから、厨房が要らなくなり、厨房をビリヤード場に変えてみました。コミュニケーションのきっかけをつくる何かアイコンが欲しいなと思って、いろいろ調べると、台がすごく安くて7万円で中古で売っていたので、プールバーになっています。そこに63人住んでいますが、ちょっとしたコミュニケーションの場になっています。
(図57)
共同浴場にはみんな入りませんので、シャワーブースに全部リノベーションしています。巨大なお風呂がなくなったので、ボイラー室が要らなくなった。ここをジムにしよう。中古のトレーニング機械を買ってきて、ジムつきのシェアハウスになっています。ちょっと疲れた感じの和室を無印さんとコラボレーションしてきれいにしています。おっかなびっくりだったんです。下宿みたいなライフスタイルが今の時代に通用するのか。ただ、共用部にいろんな工夫をして、そこに住むことの必然性、そこに住むことの楽しさを1つ1つ積み上げていくことで、この物件は、まあまあ家賃が高いけれども人気の物件になってきました。やっていくうちに、このシェアハウスというのはある種のコミュニティを醸成する機能があるということがわかってきた。この物件を皮切りに、今、東京ではシェアハウスというのはスタンダードになっています。この時代の新しいライフスタイルの一端みたいなもののはしりだったんだなと今思います。

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